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【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する  作者: やきいもほくほく
2章 侵食

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27.擬態



「……終わったわ」


「ありがとう…!」


「サラ様、ありがとうございますッ」



ビスの傷は綺麗に塞がっていた。

プラインが手を握って、涙ながらに御礼を言っていた。


他の魔族達も同様に、この"瞳"を向ける。

崇拝、感謝、信頼……救いを求めて縋る視線。


ライナス王国の時と同じだ。

以前は誇りに思っていたこの力を使うたびに、懸命に国に尽くそうとしていた頃の愚かな自分を思い出す。


自分の手のひらを見つめた。


(聖女の力は癒しの力、守る力……そんな言葉、もう私は信じない)


結局のところ国が必要としているのは、この力ではない。

異世界人が持つ膨大な魔力と命なのだから。


けれど今は魔族達の信頼を得ることが必要だった。


(以前の知識が役に立って何よりだわ)


女神の力を敵である魔族に使う。

細やかな復讐にもなるだろう。



「ビス、あまり無茶をしてはダメよ」


「少しくらい無茶をしてもサラ様が居るから平気だな」


「……そうね」


「ビス…っ馬鹿な事ばかり言わないで!本当にッ、ほんとに心配したんだよ!?」


「ははっ、悪いなプライン…心配かけちまったな」



プラインが涙を瞳に溜めていると、ビスは大きな手のひらで愛おしそうに頭を撫でていた。

嬉しそうにビスを抱きしめているプラインを見て思っていた。


(……プラインには十分な居場所があるじゃない)


どうして人は、自分の事となると視野が狭くなってしまうのだろう。

客観的に見れば、こんなにも分かりやすい。

けれど、プラインの不安も理解できるような気がした。


過去はどこまでもプラインを引き摺っていくだろう。

今のビスや魔族達との幸せな関係が壊れることが怖いのだ。

手放したくない大切なものがあるから、失うことに怯えている。


心配していた魔族達も安心したように息を吐き出した。

まるで本当の親子のように見える二人を冷めた瞳で見ていた。







「見ろ……リュカ」


「……はい」


「民はサラを慕い、心を許しているではないか」


「確かに…聖女の力は便利ですが」


「あぁ、サラはよく働いている」


「それでも私は反対です…!今回の作戦だって、魔王様を誘き出す罠かもしれないのにッ」


「それは有り得ないな」


「ですが…!」



手のひらを握り締める。


ヨムドイトの優しさにつけ込んだ初代聖女は、あっという間に闇の宝玉を奪っていった。

こちらから見ると聖女は……人間は悪魔に見えた。

裏切りと怒りに震えた魔族達はライナス王国に報復に行ったが、そこには魔族を阻む結界が張られていた。


闇の宝玉が利用されたのだ。


それから魔族達の力は衰え続けた。

このまま宝玉を取り返せなければ、命すらも危ない。

ヨムドイトが消えれば世界のバランスすらも崩れてしまうというのに、あの女神は私利私欲の為に動いている。


どうにかして宝玉を取り返さなければと考えていると、ビスが拾った人間の子供であるプラインを使って召喚された聖女を誘拐する作戦を思いついた。

話に行った時、ビスは反対していたが魔族の国で唯一の人間であるプラインを利用しない手はない。


必死の説得にも、ビスは頷くことはなかった。


そして、ヨムドイトが重い腰を上げて、直々にビスとプラインと話をした。

『お前にしか出来ない』

ヨムドイトに直接そう言われたプラインは静かに頷いたのだった。



失敗すればプラインや潜入した魔族達の命はないだろう。

それに魔族の事など忘れ、普通にライナス王国の人間に紛れて共に暮らすかもしれない。

元々人間であるプラインは、魔族を簡単に裏切ってしまうかもしれない。

それに、あまり要領のよくないプラインが異世界から来た聖女を上手く連れ出せるとは思わなかった。


しかし全てを託すしか道は残されていない。


魔王なくして魔族は生き残れない。

どんな方法だとしても、やらなければならなかった。

けれどまた召喚した聖女により結界を張り直されてしまえば、もう手出しはできない。


(このままでは我々は…!)


それでも作戦を実行したのは、このまま黙って朽ちていく事だけはしたくないと思ったからだ。


そんな心配に反して、聖女を連れて帰ってきた。

正直なところ、この作戦が上手くいくとは思っていなかったのだ。


(まさか、本当に成功するなんて…!)


けれど力を持たない聖女が召喚されるのは初めてだった。

異世界から来たばかりの聖女は妙に落ち着いて見えた。


ヨムドイトの前でも臆する事なく、交渉を持ちかける聖女に驚きを隠せなかった。


それからヨムドイトの命令でサラを受け入れる為に、皆に説明して回った。

喜んだのはプラインくらいだった。


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