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「サラ様は、カーティス殿下と随分親しいみたいね」


「はい!とても良くして頂いてます」


「けれどサラ様、暫くカーティス殿下と離れた方がいいわ…」


「……え?」


「カーティス殿下は令嬢達の憧れの的なのよ‥?わたくし、サラ様が心配で……気をつけた方がいいと思うの」


「アンジェリカ様…!ありがとうございます。でも私、大丈夫です!」


「…………そう」


「アンジェリカ様は何も知らない私に、いつも親切にしてくれてありがとうございます」


「いいのよ……わたくしからもカーティス殿下に気をつけるように言っておきますから」


「はい、宜しくお願いします!」



アンジェリカは相談相手として、話を聞いてくれる一番仲のいい友人だと思っていた。

アンジェリカとカーティスのお陰で、ライナス王国に馴染めたような気がしていた。





そんな時、カーティスにいつものように呼び出されて花が咲き誇る中庭に来ていた。

花冠を作っているとカーティスの熱の篭った瞳が向けられる。



「カーティス様…?」


「サラ………もし大結界が無事張り終えたら、僕と結婚してくれないか?」


「…!」


「突然、すまない…でも気持ちが抑えられなくて」


「で、でも私……!異世界人ですし」


「そんなの関係ないよ……!」



カーティスは此方の手を掴んで、優しく引き寄せる。

抱きしめられていると気付いて頬が赤く染まる。



「僕にはサラしか居ないんだ!サラの事しか考えられない……」


「……っ」


「ずっと、僕の側にいてくれ……」


「わ、私で良ければ喜んで…!」


「良かった……あぁ、サラ!愛しているよ」



カーティスの言葉に満面の笑みを浮かべて返事をした。


二人の想いを伝えに行くと、国王は難しい顔をした。


しかしカーティスがどうしてもと頼み込むと、国王は二人が婚約することを了承した。

喜ぶ二人に向かって、国王は婚約していることは大結界を張り終わるまで秘密にすること、と条件を加えた。


カーティスと結界が無事に張り終えたら正式に結婚式を挙げようと約束した。

今からその日が待ち遠しいね、と笑い合った。


喜びながら部屋に帰った。

異世界に来てから辛い事も沢山あったが、こうして好きな人と結ばれる事ができた。


カーティスと結婚するということは、この国の王妃になるという事だ。

ライナス王国の歴史を勉強したり、カーティスの隣にいても恥ずかしくないようにマナーやダンスを学び始めた。


まるで御伽噺のようなハッピーエンドだった。

心は温かくて幸せな気持ちに満ちていた。



ーーー大結界を張るまで一か月となった時



急にカーティスの態度が余所余所しくなった。

話しかけても「今は忙しいから」と言って、此方を避けるようになった。

それでもカーティスが心配になり、どうしたのかと尋ねると「大丈夫だよ」と笑って何処かへ行ってしまう。

カーティスに会おうとしても公務が忙しいと言われれば、何も言えなくなった。


(きっと、大結界を張り終えれば……!)


アンジェリカは以前よりも機嫌が良さそうに笑っていた。

相変わらず優しくて、アンジェリカに色々と貴族のルールを教わりながら期待に胸を膨らませていた。



「……ライナス女神が私をこの国に召喚したんですよね」


「そうね…」


「私、ライナス王国の為に頑張りますねっ!」


「ふふっ、えぇ…………頑張ってね」



明るい未来に包まれていた…はずだった。


しかし心に暗雲が立ち込める。

最近、アンジェリカとカーティスが一緒にいる姿をよく目にするようになった。



「最近、カーティス殿下とはどうなのかしら?」


「………お忙しいみたいで、全然会ってないんです」


「あら、昨晩はわたくしの部屋に……あっ」


「アンジェリカ様、それって…?」


「何でもないわ!サラ、忘れて頂戴」


「………でも」


「大結界を張る日が待ち遠しいわね…!」


「そう、ですよね」



(大結界を張り終えれば、カーティス様だって…)


敢えて小さな棘には気づかないフリをした。

信頼している二人ならば大丈夫……そう言い聞かせるしかなかった。


待っている明るい未来の事だけ考えるようにした。


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