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【受賞しました!】何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する  作者: やきいもほくほく
1章 嚆矢

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22.誘惑



ヨムドイトの腕の中から抜け出して、赤い絨毯に足を下ろす。

スカートを直してから足を進めようとした時だった。



ーーーパシッ



ヨムドイトが腕を掴んで引き止める。

足が強制的にピタリと止まり、顔を歪めて後ろを振り返る。



「……なに」


「サラ」


「まだ何か用…?」



ヨムドイトは真剣な顔で此方を見ている。

掴まれている腕に力がこもる。

金色の瞳に射抜かれると、これ以上何も言えなくなる。


(なにかしら…?まさか契約を?いや、それは無いはずだわ)


ヨムドイトが言葉を発するのを、じっと待っていた。

肌に感じる圧力…ゴクリと唾を飲み込んだ。



「………惚れた、結婚してくれ」



あまりにも空気を読まないヨムドイトの発言に、思わず動きを止めて目を見開いた。



「……」


「……」


「……」


「…………は?」



ヨムドイトの言葉を理解するまで暫く時間を要した。

しかし段々と苛立ちが募ってくる。

ヨムドイトを振り払おうとするが、それでも腕を掴んで離さない。

掴んでいる手を思いきり引っ叩いた。



「……おい、我は本気だぞ」


「今の話からどうしてそうなるのよ…?意味が分からない」


「そのままの意味だ」


「そんな馬鹿げた話を私が信じるとでも?」


「別にお前が信じる必要などない。我は欲しいものを手に入れる…絶対だ」


「……もっとマシな嘘をついたら?」


「何を言っているんだ?魔族は嘘を好かぬ。人と違ってな」



(一体、何を考えてるの…)


ここまで順調過ぎる程に順調だった。

目的を達成する為にはどんな理不尽なことにも耐え、我慢も必要だとは思っていた。

けれど、この発言は想像の範疇を超えていた。


ヨムドイトから強く熱い視線を感じる。


神というのは、どうしてこう気紛れに人の心を振り回すのだろう。


今、ヨムドイトの戯言に構っている場合ではないのだ。

今から緻密な計画を立てなければならないのに。



「……そんなもの、私の願いを叶えてから言ってくれる?」


「ほう…それはお前の願いを叶えれば我の願いも叶うということか?」


「………」


「それならば、早く願いを叶えねばな」



当然のように言い放つヨムドイトに深い溜息を吐いた。

自分がヨムドイトを選んだことが間違いでない事を今すぐ証明して欲しいくらいだ。


自由奔放すぎるヨムドイトに振り回される事は避けなければないが、機嫌を損ねる事も得策とは言えない。



「……本気?」


「あぁ、勿論だ」



冷めた目でヨムドイトを見ていた。


疑う事をやめてはいけない。

常に自分の足元が掬われないように。

そうでなければ不安に飲み込まれてしまう。



「……全て壊して生きてたら考えてあげるわ」


「死ぬ気か?」


「全てが終わったら死んでもいいわ…!最ッ高の気分で逝けるでしょうね!!」



燃え尽きるまで走り続けるだろう。

例え己の身と心を焼こうとも、絶対に諦めたりしない。

復讐の意を餌にして、炎は高く高く燃え上がる。


燃え尽きた後のことなど、どうでもいいのだ。



「お前を散らすのは惜しいな」


「死んだら女神を堕としてやるの。貴方にとっても最高でしょう?」


「あぁ…それが本当に実現出来るのなら、な」


「……ふん」


「お前一人では、あの女を堕とす事など出来ぬだろうな」


「余計なお世話よ」


「無駄に散る事は無い。全て我に委ねろ、サラ」


「……」


「我のものになれ…!」



まるで甘い罠……それか惑わす悪魔の囁きだ。


ヨムドイトが何を考えているのか知らないが、その言葉に頷くとでも思っているのだろうか。


魔王らしく惑わして、闇の宝玉だけ取り出させて都合良く使いたいだけなのか。

それとも他の利用価値があるのだろうか。


(面倒な男だわ…)


必要以上にヨムドイトと馴れ合うつもりなど毛頭ない。


そんな気持ちとは裏腹にヨムドイトは神経を逆撫でするような事をする。


ヨムドイトが本気がどうか、本当に好意があるのか。

そんな事は心の底からどうでもいい。


自分の意志を貫き通す為に、再びこの糞みたいな世界に舞い戻ってきたのだ。

向かう先が例え破滅であろうとも、道筋まで決める権利などヨムドイトにないのだから。


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