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14.成功


「……サラ様、着きました」



馬車に揺られて、ライナス王国の大結界から抜け出した。

するとプライン以外の二人の見た目が変わっていく。


ツノが生え、爪が長くなったり、耳の形が変化する。

やはり何らかの方法で人間の姿になっていただけのようだ。


(魔族……本で見た通りの姿だわ)



「ふぅ…何とか間に合ったな」


「あぁ、大結界の外に出られた…!」



プライン以外の魔族は嬉しそうにしている。

黙って魔族達の姿を見ていると、喜ぶのを止めて気不味そうにしている。



「………いきなり縛られて怖かったろうな」


「それもそうだろうよ。召喚されてから、直ぐに拉致られるなんてな…」


「可哀想な事しちまったな」


「……」


「……」


「っ、兎に角…聖女を一人連れてこれた!作戦は大成功だ!」


「プライン…お前本当に良くやったな!」


「全部お前のお陰だ!プライン…ありがとう」



複雑そうな表情を浮かべていたプラインは、頭をぐしゃぐしゃにされながら、嬉しそうに涙を浮かべている。

変化しない所を見ると、プラインだけは人間だったようだ。


(……何故、魔族の仲間に?)



「……サラ様、お体は大丈夫ですか?」


「………」


「ごめんなさい……本当に」



プラインがここまで下手に出るのも何か理由があるのだろうか?

その理由が引っ掛かる所だが、プラインも魔族の見た目も、どうでもいい事だった。


(使えるか、使えないか………それだけだ)


そんな事を考えていると、どこからか燕尾服を来た男性が現れる。



「…っ、無事だったんですね!!」


「リュカ様…!プラインが上手くやってくれましたっ!!」


「プライン…!!良くやりましたね!魔王様もきっと喜ばれる事でしょう!」


「……はい」


「そちらが今回召喚された聖女ですか?」


「…あの、リュカ様。今回の聖女様は力が無いみたいで‥」


「………何?力がない聖女だと」


「…はい」



リュカと呼ばれた男は、暫く何かを考え込んだ後、此方を観察するように見ていた。


プラインと同じ金色の瞳。

頭には立派なツノが生えており、どちらかというと先程の二人より、見た目は人間に近いような気がした。


(……魔族、ね)


魔族の事で知っている事といえば強い魔法を使う事、人間に害を成すという事くらいだ。


人間であるプラインに普通に接している様子を見ていると、とても害を与えるだけの存在とは思えないが…。


じっと、リュカを見つめ返していた。


魔族にとって聖女の存在に、どんな利用価値があるのだろうか。

すぐに殺す事はないだろうが、用心しなければならない。


魔王が何故、聖女を欲しがるのは分からない。

今回は聖女の力が少ない為、出来ることは限られている。

だからこそ慎重に動かなければならない。


(選択を間違えてはならない)



「なかなか肝の据わった聖女ですね…」


「召喚されたばかりで何も知らないのです」


「………ふむ」


「自分が聖女だという事すら告げられたばかりですから…」


「それよりリュカ様…異世界人は強い魔力を持っているんでしょう?」


「それにいくら使い方を知らないからといって、聖女に力を使われたら俺達はタダじゃすまねぇですよ」


「そうだな……そこの女。怪我をしたくなかったら、よく考えてから動くんだな」


「……」


「とりあえず、三人とも本当に良くやってくれました。魔王様がお待ちかねです!急ぎましょう…」



足元に大きな魔法陣が現れる。

そして魔法陣が黒く光るのと同時に、リュカが言い放つ。



「魔王城に飛びますよ……舌を噛まないように」



グッ…と重力に引っ張られるような感覚に目を閉じた。

体に電気が走るような感覚。

ピリピリと痛みを感じるのは魔族の魔法だからだろうか。


(私の力が抑えられていなかったら…こんな風にはならなかったでしょうね)


女神に奪われた聖女の力は、あの魔法陣がある部屋に行かなければ元に戻らない。


けれど魔族の側にいるならば、大きな聖女としての力は不要なのかもしれない。


(馬鹿な女神………精々自分の行いを悔いてなさい)


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