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13.プラインside(2)


魔王は言った。


これ以上は世界のバランスが崩れてしまうから、と。

魔王は闇の宝玉が無くなり、力を失っていった。

故に大結界を破るほどの力は、もう無い。


だから、お前の力が必要なのだと。

お前しか出来ないことなのだと。


苦痛に耐えながらライナス王国に来てくれている仲間や、助けてくれた魔族達の為に動くしかないと覚悟を決めた。


(僕がやるしかないんだ…!)


ライナス王国の聖女がサラに近づいて何かを話している。

柱に身を隠すようにして目を瞑った。


(…どうか、バレませんように)


サラがすぐにライナス王国の聖女と離れてくれたお陰で周囲にバレずに済んだ。


サラを人気の無い場所へと連れ出す。


そして、辺境の教会に行く事を勧めた。

行く場所なんてどこでも良かった。

召喚された聖女を城の外に連れ出せなければ、今までやってきた事は全て無駄になってしまう。


我ながら無理のある作戦だとは分かっていた。

けれど、これが成功しなければ居場所は、きっと無くなってしまう。

人間の国にも、魔族の国にも…。


(一人はもう嫌だ……!)


サラは国王や王太子に自分が辺境の教会に行ってもいいか聞いてくると言った。

そんなサラを必死に引き止めた。


そうでなければ、サラを連れ出そうとした事がバレてしまう。


ぐっ…と拳を握りしめる。


(お願いだから付いてきて…!神様っ)


どうにかしてサラを止める事が出来たのは良かったが、辺境の教会について話していると、いつの間にか魔族や魔王の話になっていた。


無意識に魔族を庇っている事に気付かなかった。



「………プラインは、魔族について随分と詳しいのね」


「……ッ!!?」



ニコリと笑うサラに冷や汗が流れる。

何も知らない筈なのに、何故か追い詰められているような気がしてならなかった。



「分かった…プラインを信じるわ」



この世界に来たばかりで何も知らないサラを騙すのは心が痛んだ。


両親に捨てられた時と同じ事をしているのだ。

『さぁ、お外に行きましょう?』

ずっと隠されて育てられた為、初めての両親とのお出掛けだった。

それが永遠の別れになるだなんて幼い自分に分かるはずもなかった。


もう心の中では色んな感情が渦巻いて、何が正しいのか分からなかった。


自分はどこまで行っても人間で、魔族にはなれない。

もし用済みになれば、また捨てられるかもしれない。

サラを連れて帰れなくても、もしかして……。


完全な魔族にもなりきれず、人間の心も捨てきれない自分が酷く中途半端な存在に思えた。


「ありがとう、ございます…」


足を進める度に、申し訳なさに苛まれる。

今から魔族達や自分を守る為に、サラを貶めるのだから…。


何とかサラを仲間がいる場所まで案内する事が出来た。

泣きそうになりながらも、仲間に合図を出す。


「助けて、プラインっ…!」


袋に詰められて、助けを求めるサラ。

自分を信じてくれると言ったサラを騙した罪悪感に襲われていた。


痛々しいほどに拘束されるサラを見ている事しか出来ない。

そして、サラはご飯も食べないし、飲み物も口にしなかった。


(僕の言う事なんて、信じられる訳がない…)


瞳に光を映さずに何かを考え込んでいるサラと、捨てられた自分が重なった瞬間、怖くて堪らなくなった。


サラの心配をして優しく接するのは、少しでも自分の罪が許されることを願っているのかもしれない。



「っ…何も知らない貴女を、利用した事をお許しください」



そう言葉を発した瞬間、サラは強い憎しみと怒りを此方に向けた。


そして……



「フフッ…!!アハ……っ」


「…っ」


「ーーーーアハハハッ!!」



狂ったように笑い出したのだ。



響く声に唖然としていた。

仲間に言われて震える手で急いでサラの口を塞ぐ。


それでも笑い声は響き続けた。


何を思ってついてきたのかは分からない。


けれどサラの中にある得体の知れない狂気が、恐ろしくて堪らなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ライナス王国の聖女がプラインとサラに近づいて何かを話している。 プラインは柱に身を隠すようにして目を瞑った。 ⇒ライナスの聖女がプラインとサラに近づいて何かを話してるるのに、柱の影にも…
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