表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三題噺練習  作者: ものぐさ
6/11

純粋な外資系企業

今回は三題噺ではなく「即興小説トレーニング」さんのお題を使いました。

 うちは外資系企業なんですよ、と彼女は言った。


「はい?」


 思わず聞き返すと、彼女は人好きのする笑みを浮かべたまま続けた。


 聞けば、うち、と言うのは文字通り家のことらしい。彼女の家族の構成員――つまり彼女と夫と息子、さらに彼女の両親と二人の弟妹――は誰一人として仕事をしていないのだという。


 彼女は困惑する私をおかしそうに見つめる。いたずらっぽい眼差しだった。


「ごめんなさい、ちょっと変なたとえでしたね。実を言うと、うちって――」


「あーっ!お姉ちゃん、こんなところにいた。今日はみんなでご飯食べに行こうって言ってたじゃない」


  彼女を遮ったのは、子供の声だった。


「あら、そうだっけ。ああそうだ、こちらお友達の__さん。ほら、貴方も挨拶して」

「こんにちは、姉がいつもお世話になっています」


 少女はぺこりと頭を下げた。私はまた仰天して、思わず彼女とその「妹君」を見比べてしまった。彼女は二十代半ばだが、対する妹君はどう見ても小学生くらいだったからだ。しかし訳ありそうな家の事情につっこむのも気が引け、しどろもどろになってええどうも、とかなんとか返す。


 彼女は笑みを崩さないまま続けた。


「混乱させてしまいましたね。私たちは被験体なんですよ。ほら、今って核家族化が進んでいて大家族なんてめったにいないでしょう?だから私たち家族がええと、多様性、なんとかかんとかって理由で、政府からお金をもらって大家族をやってるんです」


 私は開いた口がふさがらなかった。だとすれば、彼女たちは全員が被験者として働いているともいえる。そんなことがあるのだろうか、いや、あるのかもしれない。


「ねえ、お姉ちゃん。そろそろ時間だよ?みんな待ってる」

「あら、そうね。それじゃ__さん、ご一緒出来て楽しかったです。また会いましょうね」

「え、ええ。また……」


 私は呆気に取られて、奇妙な姉妹を見送った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ