テンプレートがテンプレだらけな話
──まだ奴による尋問は続いていた。
「あなたの世界にはいくつ国があるの?」
「196。」
「ニホン語以外の言葉で話してみて!」
「はろー。」
「パフフフフ…ハハハハハハ!なんだその言葉!馬鹿みたいー!」
相変わらず何か言うたびにムカつくやろうだ。俺のこと馬鹿にしやがって!絶対にこの世界よりも俺の世界の方が発展してるっていうのに。でも待てよ、なんだかんだ言って街とかは意外と発展してたりするのか?
「そういうお前のこの世界はできてどれくらいなんだ?神だからわかるんだろう?」
「んあー、そこら辺よくわからないだよねー。この世界を創造したのは私の上司の神様だし、人間界では、なんだっけ、『教歴』?2600年とか言ってたっけなあ。」
「に、2600年!?相当経ってるな。ってことは、反重力装置とか、タイムマシンとか、完全な仮想世界とか、そういうやつももう既にできてるってことか!」
…あいつゴミを見るような目でこっちみてやがる。
「ハン…はんじゅう云々とかって何?この世界は、やっと王国がまとまってきたぐらいよ?」
「へ!?」
驚いたな…。まさかそこまでとは。
「あのね、この世界では内乱が絶えないの。」
最高神様はどこからか地図とペンを持ってきて説明し始めた。
「まず、この惑星を半分で割って、2つの国が支配してるわ。二つの国の王様はもともと夫婦でね、さっき言った私の上司の神様が最初に送り込んだ人間のペアの末裔なの。その二人がある日夫婦喧嘩を起こしてね…。二人とも全世界に影響力があったから、民を全員巻き込んで戦いを起こしたわ。だけど両方とも同じぐらいの力だから、何年経っても戦争は終わらなかったわ。ここら辺の時に私がきたの。そしたらみんな飢え死にしそうな体しててね、私が食料を恵んであげたのよ!そしたらみんな喜んで「ああ、テンプレート様ぁ」って!それからそれから──、ねえ、ちょっと聞いてるの!」
この話、長くなるかな。俺は大きなあくびをする。だんだん意識が遠のいてきたあ…そういえば俺、あいつがきてからずっと座ってるな…ふあぁ。
「いいよ、続けて。」
「まったく…それから、どうにか戦争のための資金と資源を整えようとするんだけど、みんな貧しい暮らしをしてたから反乱が起こるのね。国の中に国ができるの。その国の中でも反乱が起きて、どんどん国が入れ替わるのよ。まあ、私のおかげでだんだん平和になりつつあるんだけどね。なんてったって神様よ!この国をこうしてあの国と──。」
中世の中国みたいだな。みんな仲良くすればいいのに。ふあぁ。あくびがとまんない…てか、こいつ所々自分の自慢いれてくるな。
「…えーと、ここから一番近いところにあるのが、ルシフェール皇国よ。この国は今のところ平和だわ。よかったわね、こんな時に転生できて。なかは四つの王国に分かれてるんだけど…あー。」
「どうかしたのか?」
「ここ百年間ぐらい魔物がウヨウヨいるわ。だからさっき青くて丸いものを見かけたのね!なんでかしら…あっ!魔王がいる!なんでよ!ついこの前千年ぐらい戦って負かしたじゃない!またやるのー?めんどくさいなあー。」
こいつもいろいろ大変だなあ。
「あっ!そうだわ!いいこと思いついた!」
最高神様はこっちをキラキラした目で見ている。嫌な予感が…。
「あなたが魔王を倒して国を統一すればいいんじゃ──。」
「断る!!」
「なんでよ!」
「俺はなあ…この世界ではゆっくり暮らすと決めたんだ!大人になって、美人と結婚して、農業でもしながらゆっくり死ぬ!前世みたいな死に方特に魔物と戦って死ぬなんて言語道断だ!」
「だからって私も嫌よ!千年よ!?千年かかってやっと討伐したの!それをまたやるなんて耐えきれないわ!」
「俺も千年生きられねーよ!」
「じゃあ、じゃあ分かったわ!あなたに何か一つだけあなたの身を守る道具をなんでも差し上げるわ!死ななければ引き受けてくれるんでしょ!最強の剣でも盾でも防具でも何でも好きなの持って行けばいいわ!」
「くそ…しょうがないな!」
お!よくゲームとか漫画で見た展開!名前通りテンプレ通りの感じだな…。
テンプレートはダンジョンにあるような宝箱をこれまたどこからか持ってきて、初めに宝石とかでキラキラになった剣を取り出した。
「この剣はこの世界で最強の剣よ!名前は《テンプレート・ソード》!!これに斬られたものは一瞬で死ぬか、生き残っても寿命五千年のうちの半分失うことになるわ!」
だとしても二千五百年…平均寿命どうなってんだこの世界は。なんなら普通の剣でも同じような性能持ってると思うし。あと名前どうにかしろ!
「パス!」
「じゃあこれね!この盾はこの世界で最強の盾よ!名前は…えーと、《テンプレート・シールド》!!この盾はどんなものも防ぐことができるわ!防いだ衝撃で敵は死ぬか生き残っても寿命の半分を失うこととなるわ!」
「パス!」
「じゃあこれはどうかしら!この防具はこの世界で最強で最高で一番かっこいい防具なの!名前は…そうねえ、《テンプレート・ボウグ》!!」
「お前名前今決めてんだろ!パス!」
それな日が暮れるまで続いた。あとは槍とか斧とか桑とかいろいろ出されたが、これと言っていいものはなかった。死闘の末、折れたのはテンプレートの方だった。」
「しょうがないわね!これをあげるわ!」
「っておい!まだ俺はOKしてないぞ!」
「おーけーだかなんだか知らないけど!これよ!」
上から大量に布みたいなのが落ちてくる。
大きいもの、小さいもの…逆三角形に似た形のもの。風がない分それはストンと落ちてきた。
なんだこれ…
俺は落ちてきたものを広げてみる。
こ、これは…
「ほら、あなたが一番欲しかったであろうものよ!感謝しなさい!」
服一式。
俺は不覚ながらも土下座を深く長くした。
「ありがとうございます!!!神よ!!」
「フフフ…崇め奉れ!バニャニャ!」
・第一次皇族夫婦戦争
その頃の民の王、その夫婦によって行われた戦争。世界が二つに分かれるきっかけをつくった。《夫婦喧嘩の原因は当時珍しかった、『温泉』を掘り当てた時にもらえるお金をどう使うかで意見の食い違いが起こったからなのだと言われている。》