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異世界転生してもレベル1   作者: 大塚匠史
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俺が異世界転生した話


 「俺、転生したぁぁぁぁ!!!」

 

 「ゴツン」という大きな音、後頭部に大きな衝撃と痛みを感じ目を覚ますと、見慣れない光景が広がっていた。あたりを見回すとそこには一面、草原が広がっていたのだった。青い空に、白い雲、遠くに見えるのは少し雪を被った山々。ここで俺、日向誠(ひゅうがまこと)はあることを確信した。


──俺、完全に転生している。


 しかし、「転生」というところに少し疑問がある。新しく子供として生まれ変わったり、スライムとか、そういう魔物になったりするのが普通だろ?でも、もうしっかり人間の身体があるし、しかもこの身体、俺のじゃない。これを転生と言ってもいいのだろうか。転移したのか?でも、きっと俺一回前世で死んだのだから、転生ってことなのだろう。これから前世のことなんか忘れて、楽しい異世界転生ライフが始まる!!!

 それにしても…まだ一個疑問があるんだよなあ。

 俺は下を見る。


 なぜ全裸。


 誰も周りにいないのだからいいが、これが街中とかだったらと考えたら…恐ろしくてしょうがない…。俺の楽しい転生ライフが…転生だとしても転移だとしても服がない異世界転生ものなんて聞いたことないんだけど!


 「テンプレートどうなってんだよぉぉぉぉ!」


 まあしょうがない。無いものは無いからな。とりあえず人を探そう。

 俺は、人里目指して歩くことにした。

 

 とりあえず歩いてみると、やはり異世界。見たことのない生物や植物がたくさんある。一本ツノの生えたウサギや、羽毛を持ったシカ、火を吐くキツネ。そして極め付けは、異世界の代名詞、青いスライム!!たくさん動物がいる(スライムって動物なのだろうか)!!動物好きな俺はここに来てからずっとはしゃいでいる。ちゃんとテンプレート整っててよかった…。


 『お主今、テンプレートと言ったか?』


 なんだ?とっても気分が良かったのに。女の人の声がする。しかし、あたりを見回しても、誰もいる気配はない。


──気のせいか。 


 と、また足を動かし先を急ぐ。


 『おい!聞こえているのであろう!』

 

 まただ。幻聴か?にしてははっきりとしている。もう一度よくあたりを見回しても、誰もいる気配はない。


──やっぱ気のせいか。


 と、またまた足を動かし始めた時だった。


 『こらあ!そろそろ気付け!お前の脳内に直接話しかけているんだ!上を見ろ上を!』

 「しつこいな!こっちは急いでるんだよ!上を見ればいいんだろ上を!」


 上を見上げるとそこには、鮮やかな長い金髪に綺麗な碧い眼をした若い女性が雲の上から顔をのぞかせている。しかもすごくでかい。わかりやすくいえば頭の上に東京ドーム一個分あるぐらいでかいのである。


 「ようやく気づいたか。この世界へようこそ!」


 彼女は微笑んでそう言う。待てよ、『この世界』って言った?

どうやら関係者らしい。


 「お前何者だ!」

 「フフフ…」


 彼女はにやけている。


 「よくぞ聞いてくれた。私の名は、最高神テンプレート!この世で最も偉い神様だ!」


 ドヤ顔をしている。名前だけ聞くとかっこいいんだけどなあ。一応返事だけしておくか。


 「で、なんのようですか。」

 「お主、私にはお見通しだ!この世界の人間でなかろう!」


 その最高神様とやらは髪の毛をクルクルさせ、誇らしげに腕を組んでいる。んー、どうせさっきから察してたんだろうけどなあ。一応話に返事だけしとこう。


 「はい、そうですが。」

 「ははは!やっぱりな!こんな人間も滅多にこない草原に、急に全裸の男が現れたんだ!私の読みはやはり完璧!」


 そんなん誰でもわかるだろ、変態じゃあるまいし。


 「いや、お主は全裸でここにいる時点で変態だ!」

 「心を読むな勝手に!独り言だ独り言!!」


 そこから俺の事情聴取が始まった。


 「名前は?」    「マコトです。」

 「住んでた国は?」 「日本です。」

 「年齢は?」    「17歳です。」


 最高神は手にスケッチブック的なのを用意して、丁寧に俺の言ったことを書き記している。


 「なんで死んだの?」

 「交通事故で。」

 「どこに行ってたの。」

 「深夜に漫画を買いに行ったんです。」

 「なんの漫画?」

 「『異世界転生したら人生うまく回りました』って言うやつです。」


 それを聞いた最高神様はプスッと吹き出した。


 「こんなタイトルの物語のどこが面白いんだよ!ハハハハ」

 

 なんだこいつ、人の好きなものを思いっきり侮辱しやがって。


 「いいか!『異世界転生したら人生うまく回りました《転マワ》はなあ!時々お色気とかそう言うのがあって結構面白いんだよ!」


 「なるほどな。…性犯罪者予備軍…っと。」


 ──しまった…。やらかした…。最高神の顔は必死に笑いを堪えようと歪んでいる。


 「…プスッ」


 あいつ今笑ったな。くそ、人の過ちを笑いやがって!

 そしてまた最高神様はスケッチブックをピラピラと読み返し、最後のページで「プスッ」と笑った。


 「よし。お主の大概のことはわかった。だが一つ疑問が残るのだが。」

 「なんでしょうか?」

 「なぜ交通事故なのだ。道路に飛び出る要因が今のところないようだが。」


 こればかりは答えにくい。絶対に笑われるからな。口が滑っても『バナナの皮に滑って転んで轢かれた』なんていえない。


 ──いまのフラグだったな。


 念のため上を確認してみる。最高神様の顔はとても歪んでいる。もはや隠そうともしてない。


 「バナ…バにゃにゃ…プスッ…フフフフ…ハハハハ!」

 「っておい!少しは隠そうとしろ!」


 …こうして、俺の楽しい異世界転生ライフが…始まったのだった!?


 



 





 ・最高神テンプレート

 ルシフェール皇国の中で最も崇拝されている神。テンプレート教は、皇国の四つの王国の中でも、シンティーラ、ウェーブル、レビーナロの三つの国では国教となっている。ルシフェール皇国の東側を守る山脈にはテンプレートの名があり、毎年山の頂上には多くの観光客が訪れる。

 (皇国民は彼以外テンプレートの性格を知らない。)

 

 


 

 

 


 

 

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