義母と和男
腹腔鏡手術の為だろう、友実は一週間ほどで退院出来るようだ。
敦志は毎日仕事帰りに友実の病院へと通い、洗濯物を回収し、その足で義母の家へと通っていた。
自炊の苦手な敦志の為に、義母は毎日晩ご飯を作ってくれていた。
「お義母さん、毎日晩ご飯有難うございます!」大きなタッパーに詰められたおかずを抱え、自宅に戻ろうとした所、
(おー、来たんか〜?)と、リビングからひょっこりと顔を覗かせ、自室に戻る和男が通り過ぎて行く。
和男はいつもリビングか自室にいて、敦志や友実が来る度にひょっこりと顔を覗かせる。
「敦志ちゃん、ちょっと時間ある?貴方に話したい事があるから…」との義母の言葉に、敦志はリビングへと上がり込む。
他愛もない世間話から、いつになく真剣な顔で、義母は話を切り出す。
「友実はもう子供を産めなくなってしまったでしょ?あの子は子供を欲しがってたし………。」
確かに、子供を授かる機会は永遠に奪われてしまった。だが、敦志は友実と二人で、明るく楽しく、お互いが生き易い家庭を築こうと誓いあったからこそ、子供の居る居ないに関わらず頑張って行けると信じていた。 義母は続ける。
「そこで、提案があるんだけと、養子を取ってみてはどう?私の働いていた施設の子なんだけど………。」
義母が働いていた施設。
それは、所謂孤児院だ。身寄りの無い子を育て、新たな家族へと繋ぐ…。だが、その施設に預けられる子供達は、みな特異な病気に蝕まれている…。
[先天性早熟短命症] そう名付けられた病気は、簡単に言うと目覚ましい速さで成長し、僅か10〜15年程で老衰し、死に至ってしまう。
また、様々なアレルギーを持っている事も多く、毎年の予防接種も必要だ。
これは夫婦の問題だ。敦志は友実と話し合うから考えさせてくれと言い残し、自宅へと帰って行った…。