友実の目覚め
………友実のオペが終わった。
オペ室に運ばれてから、あっという間に終わった感覚だった。執刀医に呼ばれ、切除された二つの卵巣を前に、敦志は無事にオペが終わった事を告げられる。
どこか他人事のような、まるで現実感の無い医師の話を生返事で返しながら、敦志は今までの事を思い返していた。
友実と結婚を決めた際、友実は子供を授かる事を強く希望していた。もう高齢出産とされる年齢に達していたからだ。確かに友実の年齢での出産は、数こそ少ないが不可能では無い。友実の友人も乳飲み子を抱えている人は沢山いる。
だが、初産となるととたんに難しくなる。そこで二人は地元にある有名クリニックに通い、不妊治療を行なっていた。幸い、市からの補助金制度がある為、次回の通院で人工授精を行う予定であった。
それなのに………。
友実の望んでいた妊娠は、不可能になってしまった。二人の子供を見る機会は、永遠に奪われてしまったのだ。
「ん〜………。あったん…ごえんえ…」
麻酔から目覚めた友実は、まだ麻酔が残っているのだろう。呂律の回らない言葉で、手を握っている敦志に対し、ただただ謝り続けていた。