宣告。そして、決断
時折訪れる激痛に耐えているのだろう、友実は苦しそうに呻き声を上げる。
敦志は友実の手をギュッと握り、心の中で友実を励ます。
「久下さんの旦那さんですか?」産婦人科と書かれた名札付きの白衣を着た女性が敦志に話しかける。どうやら友実を担当する主治医のようだ。
「奥さんとは話はされましたか?」
「あ、いえ、痛みが強くて話す事も出来ないようなので、まだ何も…」そんな会話の最中も、また波が来たのか、先程よりも大きく強い声をあげ友実は苦しがる…。
「では、カンファレンスルームで現在の症状と今後の治療方針についてのお話が御座いますので、お母様にお任せしていらして下さい。」
「え?何とかなりませんか…?」敦志は今し方言われた先生の説明に、目眩を覚える。
「先程も申しました通り、奥様の腹痛の原因は、卵巣からの出血です。珍しいケースなのですが、左右同時に出血しているようです。片方であれば薬で抑える事も出来たのですが………。」
「そうですか………。それでは、先生お願いします…。」敦志は渋々承諾した。
次々と書類を渡される。入院に関する承諾書や、手術の承諾書、麻酔に関する注意事項や入院時の治療計画同意書などなど。
敦志は看護師の言われるまま、まるで携帯電話の新規契約のような流れ作業で書類にサインをしていく。
[腹腔鏡下付属器切除術]
そう書かれた手術同意書に書かれた敦志のサインは震えていた………。