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プロローグ・最後の日。
「………即説呪曰羯帝羯帝波羅羯帝 波羅僧羯帝菩提僧莎訶般若心経」
火葬が終わり、小さな小さな骨壺に納められた最愛の子に、敦志と友実は般若心経を唱える。
九州の施設から迎え入れたあの日。自分達よりも早く亡くなる事も承知していた筈だが、やるせない気持ちと悲しみにふたりは涙を流す。
15歳。余りに短い人生だった。
それでも、あの施設の子供達の中には、もっと早く寿命を迎える子も居れば、不慮の事故で亡くなる子、病気が原因で亡くなる子も多くいるのだ。
たった15年だったが、大往生と言えるだろう。
「あの子は幸せだったかな?また逢えるかな?」と、友実。
「幸せだったに決まってるだろ?3人が次に生まれ変わるなら、今度はちゃんと友実のお腹に入って来いって伝えたから、また逢えるさ!」と、敦志は笑う。
血の繋がりは無かったが、其れでも心は繋がっていた。3人で過ごした15年は、山あり谷ありではあったが、あの子にとっては幸せな時間だったと思いたい。
自宅の仏間に簡単に作った祭壇にそっと骨壺を置く。
その骨壺の横では、3人が映る写真が飾られていた………。