話の後
今回は今までより少し長いです。
読んでいただけると嬉しく存じます。
方針が決まって、協力し合うと約束した桜ヶ丘高校とヴァージニア教国。双方が最初に取った行動は休むということにした。異常な出来事の連続を体験した桜ヶ丘高校と国にとっても大事な人であったサモン・ショーンを失ったヴァージニア教国。両方共精神的に疲れていた。桜ヶ丘高校の者たちは聖宮にそれぞれ部屋を与えられてファストフィリアにいる間はその部屋に住み込みことになった。全員が移動していた中、小さな影が富士村の方に向かっていた。
「きょうちゃん!」
山下紗綾は今まで我慢していた分、全力で富士村に抱きついた。富士村は何も言わずに彼女を受け止めた。地震に遭ったと思いきやいきなり知らない世界に飛ばされた。子供が不安を感じるのは無理はなかった。富士村は紗綾の不安を感じ取って、それが少しでもなくすために富士村は黙って紗綾の頭を優しく撫でていた。
紗綾の後を追った幸二と楓も富士村の前にやって来た。三人の姿を見て、これは不幸中の幸いというものだろうと富士村は思った。そして、彼は思いついた。
「紗綾、悪い…少し離してくれねぇか?」
「…?きょうちゃん…?」
そう言われて、富士村の顔を伺った紗綾。富士村は大丈夫だと伝えるように優しい目で紗綾の目を見た。それが伝わったのか、紗綾は小さく頷いて、離れていた。富士村は振り向いて、とある人物に声をかけた。
「マリアム大司祭。」
「…!はい、何でしょう?」
驚きながらもマリアム大司祭は富士村のお呼びに応じて対応してくれた。彼女の横に騎士のアダムも止まって富士村に注意を向けた。富士村はアダムを構うことなく話し続けた。
「突然ですいません。自分は桜ヶ丘高校、三年C組の富士村強一と申す。風紀委員長をやっている。失礼ながら、お願いがあります。」
「いいえ、私にできることなら力になります。何でも言ってください。」
「恩に着る。こちらに子供も一人巻き込まれたが、両親がいなくて不安を感じています。幸い、彼女の兄と姉はいます。この三人を一緒の部屋にしてくれると助かる。」
「そうですか…子供まで巻き込まれて本当に申し訳ありません。わかりました。三人兄妹が住める部屋を用意します。」
「感謝する。」
富士村はお礼を言って、また山下兄妹に向いた。その時に長女の楓は赤面になっていた。富士村はその理由がわからず、調子が悪いかなとだけ思っていた。それを感じ取った楓は富士村に突っ込んだ。
「先輩!それはつまりあたしも幸兄と一緒の部屋になるんじゃないですか!?」
「?そうだか?」
「そうだが、じゃないよ!」
「何だ?何か問題があるのか?」
「…ああ、もう!なんで先輩はいつもこう…!」
「??」
本当に意味が分からない富士村の様子に楓は頭を抱いた。それを見ていたマリアムはくすくすと笑って、それが山下兄妹と富士村に聞こえた。
「あ、すみません。仲がとても良いと見えて面白いと思ってしまいました。ところで、そこの貴女。」
「え、あたし?!」
「ええ、気持ちはわかりますので、ご安心ください。部屋は一緒と言っても寝室が分けています。」
「そうなんですか!?ありがとうございます、マリアム様!本当に助かります!」
「どういたしまして。えっと…」
「あ、あたしは桜ヶ丘高校一年C組の山下楓です。楓とお呼びください。…ってあれ?今思ったんですが、ここで学年やクラスを言う意味あります?」
原田と富士村に釣られて楓は彼らと同じ自己紹介をしたが、ふと疑問を思った。富士村はそれを答えながら話に入った。
「別に、俺とアイツは癖でそう自己紹介しただけだ。お前たちが真似する必要ない。で、もう問題はないのか?」
「そうなんだけど、先輩はもっと気遣いが必要と思います。あたしと幸兄は年頃の女の子と男の子なんですよ。」
「年頃?それが何か関係があるのか?家族が一緒なのは当然じゃないか?」
「…もういいです。」
「フジムラ様は、なんというか、えっと…純粋?な人ですね。…カエデさんに同情したくなります。」
「いいんですよ、マリアム様。その気持ちだけでとても嬉しいです。」
「?よくわからないが、問題なかったらいい。幸二もそれでいいな?」
女同士の絆が深めたところで、富士村がその理由を分からないまま今まで黙っていた幸二の意見を確かめた。
「ああ。言われなくても俺が楓と紗綾を守る。そして、皆で母さんと父さんのところに帰る。絶対に。」
「ならば良し。」
幸二が強い意思を見せて答えて、富士村は満足していたように応じた。長男と長女の合意を得たということで、富士村は改めてマリアム大司祭にお願いした。
「では、マリアム大司祭。三人のことをよろしく頼む。」
「はい、わかりました。フジムラ様。」
「…様はいらぬ。」
「え?」
「自分の呼び方。様はいらぬ。校長が言った通り、自分もただの学生。様と呼ばれるほどの人ではありません。」
「風紀委員長をやっていると聞きましたが、」
「あくまで学校内の肩書。世間には何も意味がありません。自分にはそういう立場があると自分自身に言い聞かせるために言っただけです。だから気にしなくていい。」
「そうですか。では、えっと…」
急に呼び方を変えろと言われて戸惑ったマリアム大司祭。富士村は何でも呼ばれようが気にしなかったが、真面目なマリアム大司祭は適当な呼び方はしたくなかった。そんな二人の会話が止まった時に、小さな手が富士村の手に触って彼を呼びかけた。
「きょうちゃん。」
「どうした、紗綾?」
「きょうちゃんも一緒がいい。」
「一緒?」
「ん。きょうちゃんもわたしたちと一緒の部屋にしよ。」
「ふぇ!?何言っているの、紗綾ちゃん!?」
紗綾のおねだりに楓は動揺していた。その反対に、富士村は冷静に膝を折りて紗綾の目線に合わせた。
「紗綾は幸二と楓だけで不満なのか?」
「違うの。ただ、きょうちゃんのことは心配している。とても心配しているの。だから、一緒に住んで側にいて。」
「そうか。ありがとうな、紗綾。だが、だめだ。」
「どうして?だってきょうちゃんも…」
「それはちょっと違う。理由を言ってもお前はまだ理解できないだろう。だからあえて何も言わない。俺はお前たちと一緒に住むことが出来ない。それが事実だ。だが、お前が会いたい時に俺のところに来ればいい。もちろん、幸二と楓の許可を得た後な。前もそうだっただろう?こっちも変わらない。だから俺は大丈夫だ。分かってくれるのか、紗綾?」
「…うん」
「悪いな。」
紗綾が納得したと確認し、富士村は立ち上がってマリアム大司祭に向けた。が、マリアム大司祭は上の空の様子であった。それは、紗綾が富士村を呼びかけていた時から始まった。
(フジムラ・キョウイチ…やはりフジムラさん?でも、何でしょう?じっくり来ません。他人のような呼び方ですから?でも確かに今日会ったばかりで……きょうちゃん?キョウイチのキョウでちゃん付け?それでは私はキョウさん…?キョウさんか…えへへ)
「マリアム大司祭?」
「え、あ、はい!何でしょう?」
「いや、紗綾のお願いなんだが、それは気にしなくていい。予定通り、三人の部屋を改めて頼みたいんだが、」
「そうですか。でも、本当にいいですか?四人の部屋もありますが、」
「構わない。自分は一人部屋でいい。」
「そう決めたのなら、わかりました。カエデさんたちは三人部屋を用意します。」
「ありがたい。」
「どういたしまして、キョウさん。」
マリアム大司祭がそう言った後、沈黙が落ちた。富士村は驚き、マリアム大司祭は自分がうっかり出してしまった呼び名をゆくゆく気づいて、顔が赤くなって慌てて始めた。
「えっと、あの、これはその…ごめんなさい!馴れ馴れしかったですね!本当にごめんなさい!」
「いや、いい。少し驚いただけだ。」
「ごめんなさい。ちゃんと名前を呼びますので、」
「別に変える必要はない。」
「え?」
「呼び名。それでご自分が納得してたら、それでいい。自分は構わない。」
「…本当にいいですか?」
「ああ」
「では、キョウさんと呼ばせていただきます。」
今度は満面な笑顔でキョウさんと呼んだマリアム大司祭に対して、富士村はこそばゆいと感じてたまらえずに思ったことを口にした。
「しかし、子供に釣られて呼び名を作ったとは…」
「うう、やはり変ですか?」
「いや、本当にいい人だと思った。俺はそういう人は嫌いじゃない。喚ばれた先があんたで良かったと思う。」
「あ、ありがとうございます…\\\」
「富士村」
二人の会話に新しい声が入った。桜木校長であった。彼女は二人が会話の途中であったこと今気づいた。
「すまない。会話の途中でしたか。」
「大丈夫です。ちょうど今話がついた。」
「そうか。私からも話がある。残ってくれ。」
「押忍」
「原田!寺島!安原!お前たちも残ってくれ。」
桜木校長に呼ばれた原田、寺島、そして用務員の安原博士はそれぞれで反応して、桜木校長の下に向かった。それを確認した桜木校長は次に谷川と一人の女教師に話しかけた。
「谷川、小林先生。他の教師と協力して皆をまとめてちゃんとそれぞれの部屋に入るの見送ってくれ。頼めるかい?」
「は、はい!責任を持って皆がぐっすり休めるように頑張ります!」
「そんな緊張するでない。ま、お前のその頑張り屋さんのところが生徒たちの信頼を勝ったんだからお願いした。自信を持てとは言わないが、落ち着いてできるだけ普段通りに振る舞ってくれ。そうすれば生徒たちの緊張も少し除けるだろう。何、谷川もお前をサポートするから。ほら、深呼吸しな。」
「うぅ、はい。ふぅ…はぁ…」
女教師、小林美波は小柄な体を持って子供に見える。それに頑張り屋で生徒を正面から対応する質がある。そのお蔭で、生徒たちは小林先生に親近感を感じて信頼していた。だから、若い教師であることにかかわらず、桜木校長は小林先生を中心に全員のまとめる役を頼んだ。特に、今回のような異常な出来事には心を落ち着けさせる存在は必要だと思った。
「うん。少し落ち着きました。」
「よし。では、行ってくれ。」
「はい。谷川さん、よろしくお願いします。」
「分かりました。幸二くんも手伝ってくれる?」
「もちろんです。生徒会長。他の生徒会メンバーにも声をかけます。」
「ありがとう。助かるわ。」
谷川が副会長である幸二に頼んだように、富士村も風紀委員である楓に指示を出した。
「楓、他の風紀委員を集めて生徒会と先生方の応援を頼む。」
「了解です。」
「紗綾は幸二と楓について行ってくれ。」
「うん。またね、きょうちゃん。」
生徒会と風紀委員が動き始めると見て、一人の男子生徒が原田に話しかけた。
「仁さん!オレたちは何をするッスか?」
「あぁ?何もしなくていいだろう。」
「えぇ…でも…」
「何その面?ったく、あれだ。他の奴らと紛れて普通に指示を従え。誰がバカをやらかしたらそいつを打ちのめせ。」
「なるほど!見張りッスね!」
「そうそう。さぁ、分かったら行った行った。」
「分かったッス!」
「…ネコのやつ相変わらずだな。まぁ、元気があって何よりだ。」
ネコ、本名は猫田郁雄は原田の適当の指示を受けて他の人たちと移動し始めた。原田は彼をかわいい後輩と思う一方、猫田は自分が原田番長の子分と思い込んだ。だから猫田は生徒会や風紀委員が動き出した時に番長の子分として何かをしなければならないと思った。
桜ヶ丘高校の者たちは教師陣や生徒会の指導の下とヴァージニア教国の者の案内に従って部屋を出ていった。五人を残して。残っている五人を見て、マリアム大司祭は彼らに声をかけた。
「あの、話し合いでしたら上にも部屋がありますが。」
「いいえ、お構いなく。邪魔でなければここにしたいが、どうかね?」
「大丈夫です。では、外に人を待機させるので、終わったら彼が部屋に案内してもらってもいいので。」
「分かった。気遣い感謝します。」
「では、私はこれで。また明日。サクラギ様にハラダさんに他の皆さん。そして、キョウさんも。」
挨拶した後にマリアム大司祭はアダムと共に退室した。そして、桜ヶ丘高校の五人の密談は始まった。
今回でヒロインを決めようと思いましたが、決められませんでしたm(_ _;)m
女子キャラは結構出ましたが、皆さんはヒロインは誰だと思いますか?




