桜ヶ丘高校の目的、二つの世界の者たちの話の結論
ファストフィリアに痛みがない。それが良いことか悪いことか奇妙だが、桜木校長ははっきりこう思った。
(甘やかすにも程があるだろう!)
自分の役目、生きてきた理由が生まれたから教えてもらった。特定の人間にではなく全ての人間に。皆が従えれば楽な人生がほぼ約束される。その上に痛みというイヤな感覚がない。
(確かに今までの会話でこのマリアムという女、国のトップなのに何という甘い対応してくれたんだろうと思ったが、この環境に育てられたら納得出来る。今思えば、老人サモンの死に祭に、生命力を尽くした感じがあっても苦しさがなかった。それに、光になって消えていったあの現象も…)
こちらの人間と地球の人間は全く別の生き物かもしれない。そこまで考えが至った桜木校長は、普段の彼女から考えられない発想が彼女の頭に過った。
(どんなに甘くても条件なしでレアな召喚士をくれないだろう。やはり魔王を倒す代わりに、召喚士を一人力尽くさせるまでに私たちを元の世界に返してもらうのが妥当な提案か…、いや待て…!)
その考えの途中にサモンのために涙を流した少女の姿を覚えた。痛みがなくても悲しさがあった。大事な人を失った悲しさ。そう気づいた時に桜木校長は自己嫌悪に陥った。こんなイレギュラーな状況において、彼女の心が確かに弱まった。彼女はその弱みを無意識に吐いた。
「本当に酷いな…私もまだまだってことかね…」
桜木校長の様子を見ていたマリアム大司祭は躊躇うながらある提案を出した。
「貴方達を元の世界に帰す方法ですが、他にもう一つ、方法があります。」
「何?」
「HPとMPを消耗せずに能力を発動する方法があります。それは魔石を使うということです。」
「魔石?」
「はい。魔石とは魔物を倒した後にその魔物が残した遺物です。私達も原理はわかりませんが、その魔石に力が潜めていて人がそれを持ちながら能力を発動すればMPやHPの代わりに魔石の力が使われる。ただし、魔石の力量は魔物の強さによって違います。低レベルの魔物の魔石はステータスの数字でいうとMPが5を使うと同じです。サモン殿は最高レベルの召喚士で、HPとMPは1000以上と聞きました。その彼が、異世界の救世主を召喚するために全てを尽くしました。」
「つまり、誰も犠牲にしないために強い魔物を倒さなければならないのかい?」
「はい。しかし、今までの私達が倒したことある最も強いの魔物の魔石の力量さえMP500と同量でした。」
「…魔石の数で力量を埋めることが出来ないのかい?」
「出来ません。私達も試したことがありますが、2個の魔石を持っても能力を一回発動したら1個だけが消耗されました。」
「結局のところ、魔王を倒せということだね…」
「…脅したみたいになってしまって、本当に申し訳ありません。」
「いいえ、分かってます。念の為、私は他の者の意見を聞きたい。少し待っててください。」
桜木校長は体を振りて、桜ヶ丘高校の者たちに向いた。
「皆、話は聞いていた通りだ。単刀直入にいう。皆はどうしたい?」
桜ヶ丘高校の者たちは黙り込んだ。それぞれ心の中に何がしたいか決まっても、いざ直球で聞かれたらどう答えるか迷っていた。その中に、一人の男子生徒は勇気を出して自分の思うことを口にした。
「俺はこの世界の人たちを助けたい。魔王を倒すのに手伝いたい。力になりたい。だって、マリアム様たちが困っているじゃないですか。俺たちに彼女たちを助ける力があるかもしれないなら、俺は彼女たちを助けるためにその力を使いたい。先程のご老人、サモンさんの最期のお願いは俺が受け取ります。お願いです。校長先生!帰るためにも魔王を倒す必要があるでしょう?だったら目的は一緒じゃないですか!?」
男子生徒、真勇斗は口にしたのは自分の正義感であった。困っている人を助けたい。自分の力を人の役に立ちたい。そんな純粋な思いが他の者、特に生徒たちに勇気を与えた。
「そうだ…そのために呼ばれたんだからな!」
「ああ!だから俺たちに力が生まれたんだ!魔王を倒すために!」
「ええ、そうだよ。さすが真くん!」
「うん。私は戦闘系ではないけど、全力でサポートします。」
桜ヶ丘高校の者たちの大半が真の意見と賛同し始めた。これで答えは決まった。と桜木校長はそう思い、四人の生徒を見た。四人生徒、富士村強一、原田仁、寺島樹、谷川風華、は全て桜木校長の判断に信じると示すように彼女に見返した。それを確かめた桜木校長は振り返り、再びマリアム大司祭に向いた。そして、彼女は頭を下げた。
「マリアム大司祭。私たちは元の世界に帰りたい。だが、そのために誰かを犠牲にしたくない。だから、魔王を倒す。私たちは戦を知らない一般人です。どうか、私たちが戦えるように力を貸してほしい。」
「…!いいえ、それは私達がお願いべきです。もちろん、私達は出来る限りのことをします。ですので、頭を上げてください。」
「ありがとう。」
「こちらこそ。本当にありがとうございます。」
2人は握手を交わした。これで、2つの世界の者たちが本当の意味で縁を結んだ。




