桜ヶ丘高校とヴァージニア教国、出会い
「異世界、ねぇ…若者の間に流行っていると聞いたがまさか自分たちがその異世界に行ってしまったとはねぇ…」
その事実に対して、桜ヶ丘高校校長、桜木彩芽は驚くことなく最早呆れていた。
「それで、私達をここに呼び出した理由は?先程のサモンというご老人は世界を救ってほしいと言ってたが?」
「それは…」
「マリアム様!」
女の人、マリアムが説明しようとしていた時、扉の向こうから鎧を着ていた数人の男が駆けてきた。それを見た桜木校長はため息を吐いた。
「やれやれ、これ以上の厄介事は勘弁してほしいんだがね。」
その呟きを聞いた鎧男の一人がムッとなって桜木校長に向かった。
「失礼ですが、ご婦人、貴女の言葉は聞き流せない。マリアム様に対する態度を改めて頂きたい。さもなくば…」
鎧男が桜木校長に敵意がこもった視線を向けたその瞬間、二人の男子生徒は彼女を守るように彼女の前に立ち、鎧男の視線を受け止めた。一人は竹刀袋を背負った生徒、富士村強一。もう一人は学生帽をかぶった生徒、名は原田仁。二人は桜木校長に敵意を向けた鎧男に睨み返した。一瞬、場が闘争の雰囲気に囲まれ、全員の体に緊張が入った。マリアムはすぐに止めなければと思い、口を開こうとそのときに、
「富士村!原田!」
桜木校長の厳しい声が部屋に響いた。
「下がりな。今はお前たちの出る幕じゃあない。」
「「…ウッス」」
桜木校長は再び前に出てマリアムと鎧男と真正面に向かった。そして、彼女は頭を下げた。
「悪いね。冷静さを保つために軽い態度を取ったが逆にご無礼を働いてしまった。この二人の失礼な対応も私の配慮が足りなかったからです。どうかお許しを。」
「いいえ、それは当たり前です。むしろ、良く冷静さを失いませんでした。ですので、頭を上げてください。アダム、貴方も落ち着きなさい。彼女たちはサモン殿が召喚した世界の救世主なのです。召喚されたばかりでこちらの状況を何も把握していません。私は皆様に説明の途中でした。」
「…!そうですか!?失礼しました。自分が早まったみたいです。」
そう言って、鎧男、アダムは頭を下げてマリアムに指示された後にその場から下がった。
マリアムと桜木、二人は再び対面した。
「私の護衛騎士が失礼しました。私のことになるといつも大袈裟で、自分に害がいないものに対しても攻撃的になる癖があります。私のことを案じてくださるのはありがたいですが、少々困るものです。」
「いいさ。あんたは、貴方はこの国の偉い方なんだろう。そしてその人は貴方を守る役目を負った騎士。そういう者の仕事は主の身体を守るだけではない。身の安全はもちろん、主の精神、名誉、責任、将来までも案じる義理がある。彼はそれを基に動いていた。立派な騎士だよ。だから貴方も、守られる者としてちゃんと責任を持って自分のことを大切にする方がいいと思います。」
「それは、確かにそうですね。私の考えが狭いでしたね。」
「いや、すまない。職業病というがね。どうも説教臭いになってしまう。」
「いいえ、とても勉強になりました。それに、貴女の言葉で言うと、貴女にも立派な騎士が二人いますね。」
そう言って、マリアムは先程桜木校長をアダムの敵意の視線から守るために身体を張った二人の男子生徒、富士村と原田に視線を向けて微笑んだ。そのマリアムの意見に桜木校長は、
「奴らはそんな立派なモンじゃあないよ。他と同じ、ただの半端な一学生なのさ。」
と荒い言葉で返した。しかし、その言葉を口にしたときの桜木校長の視線はマリアムから離れて、いつも困らせているよというジェスチャーを取った。そして、声が大きかった。なぜならそれはマリアムの言葉を否定するためではなく、二人の男子生徒に注意するための言葉であった。
"褒められたからって調子に乗るなよ。"
その言葉の裏にあった意図を二人の生徒は確かに受け取った。が、そう言われるときに二人は明後日の方向に視線を向いた。聞き入れたくないからではなく、いつものことだからだった。それに、二人は自分自身のことを立派な人間だと思ったことがなかったからだ。そして、これからもそう思うことになるのはないだろうとも思った。それでも二人は、それを言ってくれる桜木校長に対してうんざりことなくむしろ感謝していた。
彼らのやりとりを見たマリアムは面白く笑った。
「うふふ、厳しいですね。やはり貴女は教育者なのですね。」
「そういえば、まだ自己紹介していなかったね。話を進めるためにもまずはそれからするのが礼儀というものでしょう。では、話しかけた私から、」
「地球という世界にある日本国の桜ヶ丘高校校長、桜木彩芽。よろしく頼む。」
「私はファストフィリアの唯一人間の国、ヴァージニア教国の大司祭を務めているマリアム・ホーリと申します。こちらこそよろしくお願いします。」
読んで頂いてありがとうございました。
桜木校長のキャラは説教臭いババアです。




