桜ヶ丘高校、再度の決心
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「桜ヶ丘高校一年C組、山田拓人。これから富士村先輩たちに起きた現象、"英霊召喚"について説明させていただきます」
山田は食堂にいる全員に自己紹介して、"英霊召喚"について語った。内容は桜木校長と同じ内容であった。
「………つまり、先輩たちは元の身体の仕組みに戻す代わりに、前の力だけではなく、英雄の力、未来の自分の力を現在の身体に宿させたということか?」
「はい、そうとも言えます。そして、この世界の仕組みを否定した富士村先輩たちは以下の条件に縛られています。
一日に使える魔力、先輩たちの言葉では"殺気"は限られていること、
魔力を使い切ったら消えること、
魔物を倒してもEXPが出ないこと、
魔石を使えないこと、
ファストフィリアの運命に関われないこと、です」
「最後の世界の運命に関われないというのはどういうことだ?」
「神はある程度世界に運命の歯車を用意した。こちらと言えば魔王と勇者。つまり、先輩たちがどんなに強いであろうと、決して魔王を倒すことができません」
「え、じゃあその力は何のために……」
「僕たち、桜ヶ丘高校の者たちを守るためです」
「っ!」
魔王を倒せない。それなら役に立たない力ではないかと考えた生徒の言葉に山田はきっぱりと否定した。
「先輩たちは確かに魔王を倒せない。だが、戦えないわけではない。真たちも見たはず。人間離れの強さを持った魔族たちと先輩たちは同格に戦っていた姿を」
「………たしかに、俺たちは見た」
「僕たちは確かに力を得た。ですが、僕たちはまだ未熟。ここにいる者たちの半分以上は殺し合いどころか、喧嘩を経験したこともないと思う。力があっても急な状況変化の対応の遅れ、判断ミスなど起きるのは当然。今回のトラブルも、先輩たちがいなかったら犠牲が出ても不思議ではなかった。だから、先輩たちが役立たずなんて、守らている僕たちの口から言わないでください」
「…………………」
山田の言葉に生徒全員は黙り込んだ。その時、今までことの流れを見守っていたマリアム大司祭は言葉を発した。
「あの、失礼ですが、キョウさんが本当に魔族と同じ体質になったことは本当ですか?貴方やアダムの言葉を信じていないということではないのですが………」
「その言葉に偽りはない」
マリアム大司祭の疑問を答えたのは富士村本人であった。言葉だけではなく、証明も見せるべく、富士村は自分の親指を噛んだ。その親指から血が出た。
「あれは……血、なんでしょうか……?」
「ああ。この世界でも家畜や魔族に流れている血だ」
「それが、出ている時は……痛み、を感じる時だと、お聞きしておりますが………」
「その通りだ」
「……嫌、ではないのですか……?痛みを感じるの……」
「そうだな。だが、俺たちにとってこれが普通だ」
「…………」
「直接、貴女たちの戦いに手伝うことができなくて申し訳ない。だが、俺たちにも役目はある。それを全うするのにこの手段は最善と判断した」
「それは、仕方ありません。ですが、こんな苦しい感覚を感じなければならないキョウさんたちがなんと悲しいことでしょうと思いまして……」
「………それは、ちょっと違うんだがな……」
「え?今何て………」
「失礼、私からも質問していいんですか?」
次に手を上げたのはアレクシスであった。
「"英霊召喚"について、私はそんな能力を聞いたことありません。孫娘の私が言うのもあれなんですが、歴史上最高ラベルの召喚士である私のお爺様、サモン・ショーンもそんな能力用いておりませんでした……」
「いいえ、このスキルは間違いなくあなたのおじいさん、サモンさんから受け継いだスキルです」
「え?」
「僕の中にサモンさんの記憶が眠っています」
「!?それはどういう……!?」
山田は狼狽えたアレクシスを置いて、とあるテーブルに向かった。真と彼のパーティーが座っていたテーブルであった。
「……どうした、山田?」
「真くん、君に聞きたいんだけど、あの時の言葉に偽りはないか?今でも同じ思いを持っているのか?」
「……………」
「何よアンタ!?勇斗くんに偉そうにーー、」
勇者パーティーの香菜が山田に突っかかろうとしたが、真は彼女を止めた。
「……正直言って、風紀委員長たちの力を見て自分の力など、と思ったが……」
「……………」
「だが、それでも、この世界の人たちを助けたい。助けて、魔王を倒して、皆を帰る場所に無事に帰したい。この気持ちは変わってない。変わらないよ」
「うん。君ならそう言うと思った。君は本物だ。勇者に選ばれた理由がある」
山田は一度区切りして、改めて全員に対して話した。
「僕の中のサモンさんの記憶がこう言っています。この世界は停まっていると。このままでは、この世界に未来が訪れないと」
「お爺様………」
「だから、身勝手な願いだと承知の上で彼は祈った。この世界の未来を壊そうとする魔王を倒せるもの、そんな強いものがこの世界に現れるようにと。神はその祈りを二つの形に叶えた。未熟ながらこの世界のものと共に精進し魔王を倒し、未来を与えるもの、"勇者召喚"。そして、その勇者と人々に力と知恵を貸し、導いてくれる完成した強きもの、"英雄召喚"。
だから、皆にお願いしたい。どうか協力してほしい。富士村先輩たちのことも、対抗せず少しだけでも先輩たちの導きを聞いてほしい。共にこの世界の未来への道を拓いてほしい。そして、一緒に元の世界への帰り道もつかもう。
これがサモン・ショーンの思いであり、そして山田拓人の思いでもあるのです」
誠心誠意の言葉。その場にいる全員がそう思った。アレクシスに至っては山田の後ろに自分の祖父、召喚士サモンの薄らな姿まで見えてしまって泣きそうになった。こんなふうに、山田は自分の中にある召喚士サモンの記憶、思いと向き合い筋を通した。それに感づいたアレクシスは山田に対して多大な感謝の気持ちが芽生えた。
その一方、お願いされていた桜ヶ丘高校の者たちは躊躇っていた。それぞれどう答えるか迷っていた。真の気持ちは聞いた。だから、真に答えてもらえるのができなかった。山田はお願いしてきた。真の時のように皆をリードしようとするではない。だから、自分の答えを出さなければならない。だが、こういう場面に積極的に言い出す人はなかなかいなかった。
山田も彼らの気持ち分からんでもないが、それでも返事を待っていた。そして、一人の男子生徒が手を上げた。猫田であった。
「え〜と、ぶっちゃけると、あんま話をわかんねぇっすけど……」
(((分からかなかったの!!??)))
「でもさ、要するに俺たちは今まで通り訓練して、魔物を倒して、ステータスを上げて、最終的に魔王ってヤツを叩き倒せばいいっすよね?ただし、原田さんたちが不参加で」
「は、はい。簡単に言えばそうですが……」
「そっか。じゃー話は簡単じゃないっすか。改めて必要もねぇっすわ。生真面目だなぁタクは〜」
「え?え?」
「原田さんは俺たちを見捨てないのは当たり前だし、基本不参加だからもっと頑張らなければって話だけっすよね。むしろ萌えて来たっすわ!原田さんの助けがなくても魔王を倒して見せラァ!!お前も、水臭いことばっか言わねぇで覚悟しとくんだぞタク!!」
「は、はい!!!」
猫田につられて大声で返事した山田。いつの間にか願いを申し込んだ側から共に頑張っていく仲間になっていた。
そして、そんな猫田の大きな態度に挑発な言葉を発した人も立ち上がった。真の正面に下さい座っていた幸二であった。
「ふん。単細胞らしい言い方だな」
「あぁん?」
「勇斗、お前が劣等感を感じる必要はない。先輩たちは確かに強い。だが、お前にもその強さに至る性質がある。それに、お前は本当に仲間思いで、皆と自分の幸せを真剣に思う男だ。勝手に一人で強くなるではない。だから、俺たちも力を貸す」
「幸二さん………」
「彼らが認めたように、ズルで得た力だ。お前は正道でその力を得るんだ。そして、見せつけてやれ。これが皆を幸せにするお前の、俺たちの力っとな。魔王を倒すことで」
「…!ああ、そうだな!!」
幸二の言葉に真の自信が立ち直った。彼は立ち上がり、山田に向かって拳を出した。その意味を山田を理解した。
「真くん……」
「魔王を倒そうぜ、山田」
「…!ああ」
山田も自分の拳を出して、二人の拳は軽くぶつけた。そして、他の人たちも猫田と幸二の言葉を聞いて、真と山田の意思表示を見て理解した。確かにやることは変わらない。むしろ、英雄の力を持つ富士村たちがいることでもっと安全が確保できるだろうと。だが、その安全性に甘えず、自分が自分の出来ることをやらなければ。その思いが、桜ヶ丘高校の者たちに芽生えた。
「へっ、さすがはいい子の副会長さまだぁ。言うことが違うなぁ。だが、実力はどうかね〜」
「ふん。少なくとも声が大きだけの不良の頭の手下より使えるものだ」
「こ、幸二さん……?」
「え、猫田先輩もこんなんですか……」
が、そんな皆の思いが一つになったという雰囲気の他所に、猫田と幸二は嫌味を投げ睨み合って、二人の間に火花が出ているように見えた。彼らの側にいる後輩たちが引くまでであった。
谷川は呆れて、「何かどこかで見たことあるやり取りだね」と苦笑しながら言った。言葉の矢先であった富士村と原田は目をそらしたが、それぞれ、幸二と猫田の言葉を聞いて誇らしいと思って口端が少し上げていた。
富士村はさっきまで彼と話していた隣にいるマリアム大司祭に食堂の中心に顔を向けるまま声をかけた。
「桜木先生の教えをもらったのは俺らだけじゃない」
「え…?」
「だから信じてほしい。先生の生徒たちを」
「………ええ、信じてみます。そして、サモン殿と同じ思いを持っている人もいると、我が国の民、いいえ、ファストフィリアの人々のこももっと信じたいと思います」
「ああ。俺も出来る範囲で手伝う。何せ神との契約で縛られている身だからな」
「ううん。それで十分です。私は痛みという感覚を分かりませんが、とても嫌な感覚だと、魔族特別区の方から伺っていました。ですから、無理しないでください。貴方達の安全について、我々も力を尽くします」
「………本当にいいやつだな。約束できないが、心配してくれてありがとうな」
「こちらこそ、です」




