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魔族兄弟、決着

拳を相手に入れて、その代わりに相手の拳を喰らう。原田とホブの戦いはその繰り返しであった。まさに殴り合い。相手の拳を喰らい、それを意地で耐え、くらった拳を倍返しつもりで相手に自分の拳を入れる。


「オラァ!!!」

「うぐっ!っ!うわああああ!!!」

「グホッ!!ケ、へへへへ」

「はぁ……はぁ……何で、笑うのぉ…?」

「いや、悪ぃ。楽しくなってきてさ」

「楽しい…?オマエ、痛みを感じるよねぇ…?それが楽しいのぉ…?」

「バカ言え。オレはそんな趣味ねぇよ」

「じゃあ……何でさっきからオイラの拳をかわさなかったのぉ…?」

「なんだ、そんなこと気にしてたのか」


そう、原田はホブの決心を見てから、最小限の動きでホブの攻撃をかわすこと一度もしていなかった。かわせなかったではなく、かわさなかったのであった。その理由を聞かれたら、


「わからん」

「へぇ?」

「いや、理由を聞かれてもなぁ、オレもようわからんわ」

「何〜それぇ〜」

「ただな、オレは番長だ。番長とは一番に身体を張る者。おめぇの拳にゃ、おめぇの魂がこもってる。だから受け止める。受け止めて、立って見せる」

「……何でそこまで……?」

「守りてぇモンがあんだよ。おめぇと同じさ。だろ、魔族兄弟の弟分、ホブさんよ」

「……!そっか……オマエの言っていることはわからないけど、わかった。だけど!最後に立つのは!オイラだぁ〜!!!」


そう言って、自分も気づかずに、ホブは笑いながら原田にまた拳を仕向けた。原田も笑みが顔についたまま、自分の拳をホブに仕向けた。二人は笑いながら殴り合っていた。


一方、グリッドと富士村は剣を交わしていた。自分の中の迷いを断ち切れたグリッド、その剣筋が真っ直ぐで力強かった。それでも富士村はグリッドの全ての攻撃を容易く防いでいた。


(剣の技術だけでは勝てねぇ!!ならば、!)

「!!」


グリッドは剣での攻撃の間に、剣の振りの動きと連結に蹴りを入れた。


(もらった!!)


ようやく攻撃を入れられた。そう思ったグリッドだが、その蹴りも富士村は見事に防いだ。


「生憎、うちの国では剣術には足技は付き物のが常識だ。ま、戦国時代の常識だが、うちの道場はその常識を未だに用いている」

「おいおい、マジかよ。どんな修羅場してたんだ、オマエさんの国は」

「だが、お前は自分で考えて出した技だ。センスはあるな」

「そりゃどうも。そんじゃ次行くぜ!!」


自分で考えた技が防がれた。だが、それがどうした。グリッドはそれでも富士村に立ち向かった。それから、色々な攻撃をパターンをグリッドはしかけた。斬撃、突き、パンチ、蹴り。全ての持ち合わせをグリッドは富士村にぶっかけた。そして富士村はそれらを全て防いだ。


「はぁ……はぁ……ここまでとはなぁ……だが、まだまだ!!」


それでもグリッドは心は折れることなく、戦い続けた。グリッドは分かっていた。富士村と実力差があると。それでもグリッドは引かなかった。引くわけにはいけなかった。彼をそこまで押したのは兄貴分としての誇り。弟分のホブの決心を見たグリッドは自分だけが情けない姿ままでいられなかったと思った。


(ホブの野郎!!一丁男前になりやがって!!)「だからオレも!!いつまでも!!!情けねぇ自分を見せんねぇんだよおおお!!!!」


魂の叫び。富士村はそんなグリッドの攻撃を油断することなく全てを受け止めていた。


「……お前、魔族になる前に、もしかして農夫か?」

「はぁ……はぁ……、それがどうした?」

「なるほどな」


そう聞いた富士村は少し口の端が上げていた。


「なぜ剣を?」

「あぁ?」

「魔族になったのは力を得るため。だが、なぜ剣を選んだ?」

「………憧れてたんだよ、ガキの頃から。何だよ…!?何でいきなりこんなこと聞いてんだよ!?」


真面目に答えたグリッドだが、恥ずかしくなって乱暴に聞き返した。


「いや、すまない。そうだな、お前は鍬で作業してた時の感覚はまだ覚えてるか?」

「はぁ?」

「お前に一つ、いいものを見せてやる」


富士村は今まで片手の中段構えを変えて、両手上段構えに入った。その構えと富士村が放った"殺気"、グリッドには富士村の姿が大きく見えた。


(いや!落ち着け!よく見るんだ!その大素振りの構え、身体の真ん中ががら空きじゃねぇか!!アイツのことだ。何かがあるはず。だが、ここで進まなきゃ、漢が腐る!!)

「うをおおおおお!!!」


意を決したグリッドは富士村の空いた胸部を狙い攻撃をしかけた。が、グリッドが富士村の間合いに入った瞬間、富士村は全ての力をかけて、足を地面に強くついて、木刀を下ろしかけた。力強く、早く、無駄な動きがなかった素振りだが、大きな素振りなためグリッドは防御の構えが間に合った。ところが、富士村の斬撃は、グリッドの剣をも切った。


(あ、そっか。この動きは……)


剣を破られ、富士村の攻撃をそのまま受けたグリッドは飛ばされて倒れた。


「あ、アニキ〜!!」


それを見たホブは自分の勝負を忘れ、兄貴分の、グリッドのところに駆けつけた。


「何だよ。もう終わったのか」

「ボロボロだな。また悪いクセが出てしまったかよ。直さねぇとそのうち死ぬぞ」

「うっせぇ」


原田も富士村のところに移動した。


「アニキ〜!」

「騒ぐな、ホブ。オレぁまだ生きてる」

「よ、よかった〜!」


富士村と原田もグリッドの下に近づいた。


「鍬の使い方、か。確かに、今までのオレの剣の素振りがそのまま鍬を土入れたら、前みてぇにうまくなんねぇだろ。それに、身体も壊す」

「お前は上を見すぎて、浮足になってた」

「ああ。足が地面に、大地につくからこそ力が出る。農業する時にゃ無意識にやってたんだがな。へ、文字通り足元がすくわれたな」

「グリッドよ。自分に与えられた運命を否定しても、自分がもらったもの、自分に身に着けたものを否定するな」

「オレは、やっぱり剣士にゃなれなかったのか……?」

「そうではない。俺の国では、武士とは元は農夫だった。当時、賊から畑を守るため、鍬の代わりに自ら槍を、剣を取った者たちだ。お前みたいにな」

「オレは……」

「東集落の剣士、グリッド。いい勝負だった。お前と手合わせ出来たこと嬉しく思うぞ」

「へ、へへへへ。オマエの圧勝だったくせによ……何いってるんだが……、ああ〜くそぉ………オレ、まだまだ強くなりてぇ……」


剣士として認められたことに嬉しさの仮面、負けた自分にこの後がないとわかったグリッドはただただ悔しいと思った。その気持ちを抑えるように、グリッドは寝転がって空を仰いながら自分の目を手で抑えた。

勝負がついたと遠くから見ていた寺島たちは富士村たちのところに来た。その中に、谷川は富士村が投げた竹刀袋を拾って持ってきた。彼らがついたときにはグリッドは気持ちを落ち着けさせ、身体を起こし、地面に座ったまま富士村に頭を下げた。


「フジムラ殿、この勝負はオレの負け。オレに何をしても構わねぇ。だが、お願いだ。弟のホブを見逃してくれねぇか?」

「アニキ!?」

「アンタらの基地を襲った魔物、アンタらの仲間をやっつけたのは全てオレの差金だ。弟は何もしてなかった。だから、頼む」


深々と頭を下げたグリッド。その横にホブは慌てて彼を止めた。


「何言ってんだよアニキ〜!?アニキがいなかったら、オイラは、オイラは〜、」

「甘ったれんな!!」

「っ!!アニキ…?」

「いいかホブ、よく聞け。オマエは強いだ。もう、オレなんかよりな」

「あに、き…」

「よく見ろ。今の状況。オレが倒れたのに、オマエはまだ立てるじゃねぇか。オレよりボロボロなのによ」

「それ、は……オイラが、大きいだけで……」

「違うぞ、ホブ。身体のことだけじゃねぇ。オマエの心も強くなったんだ。なぁ、ホブ。それ、痛いんだろ?」

「……うん。すごく痛い。アイツ、とても強かった」

「だよな。でもオマエはそれを耐えた。泣き言を吐かずに意地を見せた。立ってみせた。ホブ、オマエはまだ負けていねぇ」

「でも……でも……」

「それによ、オレたち二人がいなくなったら、誰が集落を守るんだ?ホブ、オレの言うことを守りてぇなら、ここは意地を見せる時だ。だから、集落のこと、頼んだぞ」

「う、うぅぅぅ〜」

「つぅわけで、お願いだ。弟にご容赦を」


泣くことを全力で我慢するホブの横にグリッドは再び頭を下げた。それに対して、富士村は谷川から竹刀袋を受け木刀を収めながら答えた。


「何か勘違いしてるようだが、俺は別にお前の命を取るつもりはねぇぞ」

「え?」

「お前は確かにうちの生徒に害を加えようとした。だが、実際に誰も犠牲にならなかった。だから、今ので落とし前は付けた」

「……あれだけ、殺る気満々だったのに?」

「そりゃ、全身全霊で勝負、殺しかけたら死ぬ気で返り討ちにしてやるさ」

「だが、残念ながら俺たちにも守らなければならなぇ掟がある」

「掟?」

「いや〜さっきまで散々偉ぶってことを言ってきたけどさぁ……」

「俺らもまだ未熟な学生。桜木先生の教え(学校の校則)を守らなければならねぇ」

「一つ、命を粗末することなかれ。ってな」

「それを破ったらあの人の生徒でいられなくなる。今はまだその覚悟が出来ていねぇんだ。だから代わりに、殺さない、死なない覚悟を決めたんだ」

「殺さない覚悟が込められた殺る気?なんて矛盾な……」

「失望したか?」

「いや、ただ呆れたがな……じゃぁオレはどうなる?」

ファストフィリア(こちら)の人間、アダム隊長に任せる」

「え〜!?それじゃアニキを死なせると同じだよ〜!」

「死なせねぇよ。言ったろ。殺すつもりねぇって。つまり、誰かに殺させたりもしねぇ。オレの言うことはまだ信じられねぇか、ホブ?」


原田は小林先生から治療術を受けながら宣言した。今の体質になっても、能力(スキル)による術もまだ有効であった。原田の言葉を受けたホブは頭を横に振った。


「……ううん。オマエの、ハラダさんの言うことなら、信じるよ〜」

「へへ。あんがとうよ。つぅわけで、アダム隊長。どうかね?」

「……もともと、こちらも出来ることなら、魔族は無闇に殺さない。捕まえられたら、結界都市に魔族特別区があってあそこに連れて行く。あそこなら、魔族は魔力を使えないし、魔物も呼べないからな。ただ、色々と労働仕事をしてもらう」

「囚人みたいなものだな。わかった。その魔族特別区まで俺も同行しよう」

「ホブは見逃してくれるか?」

「……人間や桜ヶ丘高校(この)者たちにもう手を出さないと約束できたら」

「理由なしに手は出さないよ〜。でも……」

「分かってるぞ、ホブ」

「フジムラさん…?」

「お前らは落とし前を付けてくれたんだ。今度はこちら側もケジメをつける。風華、例の生徒たちは?」

「ベースキャンプにいるわ。案内する」


そして、魔族兄弟も同行で、一行はベースキャンプに戻った。

バトル回のつもりですが、バトルシーンが短くなりました。雑な戦いの説明で申し訳ありません。


そして、今更のお願いですが、もしよかったらこの作品に評価をお願いします。感想も遠慮なく何でも書いて下せれば嬉しいです。よろしくお願いします。

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