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桜ヶ丘高校、異世界に出現

桜ヶ丘高校にいた者たちは大きな地震にあって死ぬかと思った。しかし、急に地面から光が出て、次の瞬間、崩れ落ちた学校の壁の姿が消えた。代わりに現れたのは見たことのない建物の壁。生徒も教師も呆然としていた。その雰囲気の中に、


「成功...した...」


と老人の乾いた声が聞こえた。全員声の方向に振り向くとローブを着込んだ老人が震えながら立てていた。それもまた不思議な光景で誰も声をかけてできなかったが、一人、状況を把握す必要があると判断した人が老人に方に歩き出た。


「失礼ですが、そこのあんた。私たちに今何が起きてるのか説明してくれないか?」


そう言いだしたのは桜ヶ丘高校の校長、桜木彩芽であった。彼女は強い責任感を持ち、教育者として生徒たちの案全を優先すべく、状況をいち早く把握したいと思っていた。だからなのか、桜木校長は老人のおかしな様子を気付いていなかった。


「MPだけじゃなく...HPもなのか...すまないが、わしに時間がない...」

「MP?HP?一体何を...?」

「まずは謝罪を...巻き込まれてすまぬ...だが、どう―くッ!」

「おい!」


老人が倒れかけて桜木校長が叫んだ同時に二人の男子生徒が走りだした。が、彼らは老人のもとに辿れなかった。一人、学校の帽子をかぶって学ランのボタンを一つもかけていなかった生徒はステップを間違えたように自分の足に引っかかって転んだ。もう一人、背中に竹刀袋を持って、前者と真逆で学ランのボタンをすべてかけていた生徒は重心を足の親指に集中して体を前に押す感じで一気に飛び出そうとしていたが、彼が思ったより飛んだ距離が短かった。

代わりに、と言えるかどうか奇妙だが、老人に最も近くにいた男子生徒が老人の体を受け止めた。彼自身に助けるつもりがなかったが、体が反射的に動いた。


「あの、大丈夫ですか?」

「本当にすまぬ...どうかわしたちの世界を、わしの愛する孫の生きてゆく世界を救ってくれっ!」

「え、」


老人の手が男子生徒の額に触った瞬間、何かが男子生徒に流れ込んでいた。それは二人の当事者以外に誰も気づいていなかった。男子生徒が老人に確認しようと、その時に、


「お爺様!」


奥の扉から突然に表れた十代な少女。老人の姿を見て間もなく彼女は老人のもとに走り出していた。


「お爺様!しっかりして!」

「アレクシス、最後に...お主の顔を見れて...よかった。」

「お爺様!いやだ!最後だなんていわないでください!」


この時点で、桜ヶ丘の者たちは何も言えなかった。状況を聞き出そうとしていた桜木校長すらただ黙って見届けていた。しかし、その後に起きる現像に全員は文字通り言葉を失うことになった。


「アレクシス、そしてマリアム様、この人たちと協力して、どうかわしたちの世界を...」


よりかけた少女の後ろに、女の人がいることを全員遅れて気づいた。


「サモン殿、貴方は...私は...」

「わしが決めたことです。ご自分を責めないでください。そして、異世界の者たちよ、お主たちをこの世界に巻き込んだのはこのわしじゃ。勝手なのは承知の上で頼みたい。どうかこの老人の最後のお願いを聞いてくれないか?」


老人は桜ヶ丘高校の者たち全員の目に見て頼んだ。それを聞いて、歩き出したのは竹刀袋を持っていた男子生徒であった。


「俺たちはあなたのことも、この世界のことも何も知らない。救うというのなら危険な事が待ち伏せているだろう。それを無暗に受け取ることができぬ。」

「貴様は...!!」

「だが、それでも俺はあなたの生き様に敬意を払いたい。自分の命を懸けて世界を、愛する者を守ろうとするその生き様は美しいと思う。俺たちはあなたの最期のお願いを受け取ることはできないが、きっとこの世界の人たちは、あなたを見ていた人たちはあなたのその魂を受け継ぐだろう。」


怒りで言いかかろうとしていた老人の孫娘であろうアレクシスの言葉を、竹刀袋を持っていた男子生徒は誠意の言葉で切った。部屋の中の人達が彼の言葉に呆然をとしている中、彼と同じ思いを持っていると示すように、彼の後ろに立て老人の姿を見届ける三人がいた。一人は桜木校長、一人は学生帽をかぶった男子生徒、そして最後の一人は体が大きくて、坊主頭の男子生徒。

老人はしゃがみこんだ男子生徒に尋ねた。


「お主の名前は...」

「俺は...」


「富士村強一」


「フジムラ殿、わしはサモン・ショーン。」

「サモン・ショーン。あなたのことを忘れない。俺たちをこの世界に巻き込んだ人。愛するもののために、命を懸けた人。体が老いていて弱くて、強い魂を持っている人。」

「それで充分。ありがとう。」


そう言って、老人、サモンは目を閉じた。そして、彼の体は光になって消えていった。それを見た桜ヶ丘の者たちは息を飲んだ。死に際に体が消えていくなんてありえない。それが彼らの常識であった。富士村と彼の後ろにいる三人は驚いても、視線をサモンに外すことなく彼の生き様を最期まで見届けていた。

サモンの体が完全に消えた後、今までアレクシスの後ろにいた女の人はアレクシスに近寄った。


「アレクシス、貴女は部屋に戻りなさい。私はこの方たちと話をします。」


彼女は悲しさでぼうっとしていたアレクシスにやさしい言葉をかけた。アレクシスは言われたままに部屋を出て行った。それを見届けた後、女の人は、サモンはマリアムと呼んだ彼女は、桜ヶ丘高校の者たちに振り向いた。それを見て、桜木校長は最初に口を開いた。


「質問は多くありますが、とりあえずこれだけを教えてくれ。ここはどこだ?」

「ここはヴァージニア教団が治まる国、ヴァージニア教国の聖宮の地下室です。もちろん、貴女がどこと聞いたときにそういう意味ではないでしょう。そうですね。ここは...」


「この世界は私たちはファストフィリアと呼びます。貴女方にとっては異世界と言えましょう。」

一応言っておきますが、主人公は異世界の名前が紹介される前に、自分で自己紹介した富士村強一ふじむらきょういちです。王道の主人公になれるかわかりませんが物語の中心人物にはなりましょう。

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