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魔力を持つ魔族、"殺気"を持つ人間

木の剣(ウッドソード)…!?だが、その形は……見たことのない剣の形だ…!」


富士村が出した得物にアダム隊長は好奇心を隠せなかった。寺島は何も問題なさそうに説明した。


「あれは刀……我が国の武士たちが使っていた剣のもどきだ」

「そうか……いや、そうではなくて!手伝わなくてはいいがせめてちゃんとした武器を与えてもいいではないか?」

「不要。二人共、ちゃんとしてる武器を既に持ってる。まあ、大人しく見るがいい。じきにわかる」


寺島に言われて半信半疑なアダム隊長。谷川以外も同じ気持ちであったがやはりことの成り行きを見ることしか出来なかった。

魔族グリッドは苛立っていた。


「テメエ……ナメてんのかぁ?木の棒なんぞ出しやがって、ふざけんな!!」

「ふざけてるかどうか、自分で試すがいい」


富士村は左手に流れた血を木刀に塗った。そうしたら、富士村の中にある力、"殺気"が木刀に入り込んでいった。


「行くぞ」

「!!!」


そう言って、富士村は右足を一歩後ろに置き、全身をその足で押すようなステップを取った。それは力強くて素早いなステップ。召喚士サモンが倒れた時に富士村は取ろうとしていたステップであった。そのステップで一瞬にグリッドとの距離を縮め、間合いに入った瞬間、左足を地面に強く踏んで一撃を撃った。グリッドは驚きながらもそれを自分の剣で受け止めたが、


(重い!!!)


思ったより重かったその一撃を完全に防ぐことが出来ず、衝撃でまた飛ばされた。富士村はグリッドに息させる間を与えるつもりなくまたグリッドの方に向かって追撃をしかけるが、グリッドもただ黙ることなく自分から魔力を出し攻撃しかえした。


「クソが!!」

「フン!」


剣と木刀がぶつかりあった。その波動が周囲に激しい風を起こした。


「アニキ〜!」


ホブはグリッドを援護しようとした。が、


「って!?うわぁ〜!!」

「へぇ、かわせたか。完全にボケてるってワケじゃねぇな」

「オマエ〜!後ろからしかけたとか、ヒキョーだぞぉ〜!!」

「敵に背を向けてたヤツがアホだっつぅの。最初にオレとタイマンで喧嘩を売ったのはテメェだろが。浮気なんかさせねぇぞ」


原田がホブに攻撃をしかけて足止めした。邪魔されたホブが苛立ちを隠せず、全身から最大の魔力を出した。そして再び原田に向かって拳を撃った。


「オマエたちはぁ~、ホントに許さないぃ~!!」

「へ、そうこなくっちゃな。オラ行くぜ!!」


原田もそれに応え、"殺気"のこもった拳を撃った。その二つの拳がぶつかりあったとき、地面が割れた。


遠距離で見ていた寺島は見た感想を呟いた。


「ふむ。やはり問題ないな。成功だ。よくやったぞ、山田」

「いいえ...サモンさんの記憶と、...寺島のサポートがあったから...です」

「おお...おお...原田さんが普通に喧嘩してるっす。やっぱ原田さんはすごいっす!お前がやったのか,タク!?いい仕事じゃあないっすか!!わっはははははは!!!」

「ちょ、猫田先輩、!僕の身体を振らないでください!」


猫田は再び原田の雄々しい姿を見て上機嫌になった。

その他は、楓と小林先生はホットし、幸二は複雑な感情を抑えていた。ヴァージニア教国騎士団の三人、そして真と他の勇者パーティーは状況を追い付けずただ呆然としていた。


「二人にも、魔力を...」

「これはまるで、魔族同士の戦い...」

「だが、二人の姿は人間のまま。それに、今その力は魔力ではなく、"殺気"と言ったが...」

「あれが、噂される桜ヶ丘高校の喧嘩番長と風紀委員長...?」

「流石に勇斗君たちも噂は聞いていますね」

「風華さん...」

「校内の風紀を守り、外でも生徒の面倒を見て、学校のものに害を加える輩を退治し、桜ヶ丘高校の時代遅れの三人のバンカラよ。ちなみに、三人目はこちらの樹君ね」

「...そんな風に言われてるの初めて聞いたが」

「言わなかったからね」

「あ、あははは、そういえばそうでしたね。風紀を守って生徒たちの面倒を見てくれるの助かりますが、教師として喧嘩や危ない真似はやめてほしいのが本音ですけどね」

「強一先輩は道場での練習試合とか見たことありますが、えっと、魔物ではなく、人型との喧嘩してるのは初めて見た」

「ちょ、ちょっと待ってよ!!あれ、どう見ても喧嘩の強さではないでしょ!?木刀で真剣と渡り合いとか、大きさがほぼ二倍の人と互角に殴り合いとかありえないと思うけど!!?っていうか"殺気"ってなに!!??」


勇者パーティーの香奈が納得できないように異論の言葉を発した。寺島がそれを答えることにした。


「ふむ。"殺気"とはまあこちらの魔力と同じものと思ってもいいと思うぞ。単に呼び方の違いだけだ」

「でも、それはつまり、先輩たちは元の世界にも魔力を持っていたってこと?そんな話、聞いたことない」

「まあ、技術が発展していた世の中では使いみちがほとんどないからな。それに、質はこの世界のとちょっと違う。"殺気"とういう名の通り、生死の間で生きて、戦っていた者が無意識でもこの力に目覚めた者も少なからずいて、だからその名前になっている。あるいは武を極める者。仁は前者で強一は後者ってところか。俺は家の事情で知識を得て修業で習得したけどな」

「何よ……それ……」

「まあ、つまり元の世界でも物好きしかこの力のことを知らないし、習得しようともしないということ。現代の社会にははっきり言って役に立たないからね。ただ、偶にはいるのよ。彼らのようなこの力を持って救える、守れると信じているバカものが。あ、これは桜木校長先生からもらった言葉だからね」

「オイ」

「まあまあ。ほら、戦いに集中して。もうすぐ終わるそうよ」


フォローの言葉を入れてると思いきやディスの言葉を混ぜた谷川。そんな彼女を寺島は半目で見ていたが、あっさり流されて戦いの視察に戻るように指導された。ヴァージニア教国の騎士たちは未知の存在に驚き、真たち勇者パーティーは知らない元の世界の事実に戸惑っていた。が、その時はもう目の前の起きていること、富士村と原田の戦いを見て受け入れるしかなかった。だが、その時に幸二からまた異論が出てきた。


「元の世界では、この力を使いこなすのに簡単のことではないはず。それこそ何十年の修業を重ねてから使える力。なのに、先輩たちは今自分のもののように使いこなしている。これについてはどう説明するつもりですか?」

「………確かに今の俺たちはズルしている」

「ズル?」

「ふむ。それは……」

「寺島先輩。帰ってから校長先生に相談しますので、その話は後に僕から説明させてもらえませんか?」

「……分かった。山下兄も、それまで待つことでいいか?」

「……分かりました」


召喚士サモンの記憶を持つ者として、それが自分の役目だと思っていた山田。寺島はその心中を察し幸二にも頼んだ。それを了承した幸二。そこで話が終わり、今度こそ富士村と原田の戦いの視察に集中することにした。


寺島たちが話している間にも富士村と原田の魔族兄弟との戦いは続いていた。最初と違って、富士村と原田は相手を圧倒していた。

富士村は嵐のように次々とグリッドに攻撃して最早グリッドは防御する一方だけであった。


「……っ!はぁ…はぁ…クソが!」

「………」


原田はホブの一撃に対して二、三撃を返した。それが繰り返して、ホブの方がダメージが大きいと見えた。それに、ホブの攻撃を原田はまともにくらったわけではなく最小限の動きでかわしていた。


「うぅ〜、痛いよぉ〜」

「……もう観念しな。おめぇの兄貴にゃ落とし前をしてもらうが、おめぇはまだうちのモンに何もしてねぇから見逃してもいいぜ」

「…!うるさい」

「あぁ?」

「人間の言うことなんて聞くもんかぁ!アニキは言っていたぁ!オイラたちは自分で自分の身を守らなければならない!人間は神の言うことだけ聞いて、オイラたち集落に住んでる人たちの意思を聞きもしない!だからオイラたちは戦闘系じゃなくても戦った!強くなった!アニキは弱いオイラを強くしてくれた!!アニキは間違っていない!!だからオイラは絶対にオマエには負けるもんかぁ〜!!!」


ホブは叫んだ。自分の意思を。そして、魔力を全開で原田に全力なパンチをかけた。原田は何もせずその拳をまんまと受けた。その衝撃に飛ばされても、その足はきっちり地面についたままであった。


「へ、へへへ……やっぱいいなぁおめぇ。兄貴分を、その魂を守るため絶対負けない意思。全身全霊をかけたその"殺気"、とてもいい。さっきの言葉は失礼した!忘れてくれ。おめぇは立派な強者だ。だからオレも、全身全霊をかけて、おめぇをぶちのめしてやらぁぁ!!」


原田はフルパワーを出してホブに全力のパンチを仕返した。その火力は今までホブが受けたパンチの数十倍あった。が、ホブそれを耐え、膝を折れることなく、意地で足を地面につけさせた。


「うッ、くッ…!うわあああああああああ!!!」

「オラアアアアアアアアアアアア!!!」


原田とホブは再び拳を、いや、全身全霊をぶつかりあった。

彼らの様子はグリッドと富士村のところから見られていた。


「ホブ、オマエ………」

「あっちの方が覚悟が決めていたようだな」

「……っ!」

「お前はどうする?さっきから剣に迷いが出ていたようだが」

「迷い、か………ケッ、そりゃそうだ。オレは力を得るのに人間を捨てるしか方法がなかったと信じていた。そしてそうした。魔族になった。魔物同然に思われようとも、オレは構わなかった。なのに、今目の前に同じく、いや、オレより強ぇ人間が現れやがった。疑問もなるのさ、オレが捨てたモンは一体何だったってな。なぁ、教えてくれよ。オマエらは一体何なんだ?」

「なるほど。いいだろ」


富士村はそう言って、木刀を地面に刺さった。話す時に攻撃をしかけない意思の表れであった。グリッドも同じく、剣を下ろした。


「俺たちはこの世界の者ではない。地球と言う星の人間だ」

「別の世界の人、だと……」

「ああ。そして俺たちの世界では人間は皆痛みを感じる」

「なんだと…!?」

「と言っても、皆が強いわけではなかった。痛みから逃げるために、自分の身を守るために、俺の世界の人間はよく争っていた」

「人間同士の争い………」

「だから、痛みがないこの世界はまるで天国のようだ。気分が高ぶるのも仕方がないかもしれん」

「………」

「だが、やっぱり俺は、俺らはどこかで違和感を感じていた。痛みがなく、争いもないこの世界はいいと思っていたが、違う。そして、その世界に生きている人間は別物だと感じてしまった。ま、数日に共に生活していれば、ただの文化違いだと思うことになってきた。そして、今お前ら魔族と出会った。正直に言おう。俺らにとって、お前らは人間と何も変わらない。いや、俺らの世界の常識といえばお前らの方が人間らしい」

「………!!こんな、緑色なのに何言いやがんだ…?」

「ただの肌色の違いだろ。今の俺たちの世界は安定して争いは減ったが、起きるところには起きている。そして、その世の中に肌色差別は争いの種の一つだ。だから俺は気にしない」

「いや、マジで意味分かんねぇっつうの……だが、分かったことが一つある」


グリッドは再び剣を上げて構えた。


「この戦いに人間も魔族も関係ねぇ。だが、オレはホブの兄貴分だ。アイツの思いを応えなければならねぇ。それが筋だからな。だから、改めよう。東集落の剣士グリッド、手前に勝負を申し込む!!」

「いい目になったな。今は風紀委員長の名は場違いか。富士剣術道場が当主、富士村強一、その勝負、受けて立つ!!」

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