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風紀委員長と総番長の復活

「風華、立てるか?」

「ありがとう、樹君。ごめんね。やっぱり私一人じゃ彼らを止めることができない」

「むしろ逆効果だな。お前が背後にいると、二人はどこまでも進みたくなるんだ。その点は俺に任せろ。いつも通りな」

「ええ」

「山田、悪いがお前の力が必要。しっかり捕まってな」

「え、?うわあああああ!」


寺島は谷川をところに駆けつけて彼女を立たせた後、山田をつれて富士村と原田のところに行った。それは、とんでもないスピードで。他の者たちはもはや置き去られる状態であった。

ほぼ一瞬で富士村と原田の後ろについた寺島。三人は再開の喜びをすることなく、ただただ本題に入るだけであった。


「遅れてすまん」

「全くだ。遅れた分、きっちり働いてもらうぜ」

「承知」

「遅れる程の成果はあるんだろうな?」

「無論。お詫びとしてはなんだが、お前たちの忘れ物を持ってきたぞ」


そう言って、寺島は富士村に"風紀委員長"と書いてある腕輪が付いている学ランの上着と竹刀袋、原田に背中の部分に"桜ヶ丘総番長"と書いてある学ランの上着と学生帽を渡した。二人はそれを受け取って、装備を着替えようとしていた。放ったらかしになっていた魔族兄弟、兄のグリッドは寺島たちに話しかけた。


「……何のつもりだ?テメェら」

「これは失礼した。戦いを続けるために準備したいんだが、しばし待ってくれぬか?」

「オマエはこいつらを助けに来たんじゃねぇのか?」

「まさか。タイマンの喧嘩に手を出したら、この二人に失望される。俺はそれが嫌なんだ。二人をあなた達と同じ土俵に立てさせる手伝いをするだけだ」

「同じ土俵、だと?」

「うむ。今度はあなた達を一方的に傷つけるではなく、傷つけし合うと言う本物の喧嘩になる訳だ」

「っ!?オマエ、それマジで言ってんのか?」

「無論」

「……面白え。やってみろよ。その準備とやらが終わるまで待ってやる」

「ご配慮、感謝する」

「……調子狂うな、まったく」


寺島は二枚の御札を出した。


「これが触媒になる。山田、俺の合図で召喚術を発動してくれ」

「でも、どうすれば……」

「大丈夫だ。サモン殿の記憶がきっと力を貸す。無論、俺もだ。その時にお前は流れに身を任せばいい。それが今のお前が出来ることだ」

「……分かりました」

「よし。二人には先に断っておくが、痛いぞ。ものすごく。覚悟はいいか?」


学ランを着こなした富士村と原田。富士村は竹刀袋を前に置いて両手を袋の上に置いていた。原田は左手がズボンのポケットに、右手は学生帽の端を握った。


「「上等だ!!」」

「愚問だったな。では、始めるぞ!」


寺島は御札を一枚ずつ二人の方に投げて、身体に当たると思ったらその御札が二人の体内に入った。


「山田!」

「はい!"召喚"!」


山田が召喚の能力(スキル)を発動した瞬間、二人の下の地面に魔法陣が現れた。寺島はそれに続いて自分の術を、先程投げた御札に書き込んだ術を発動した。


「発!」


富士村と原田の身体が光りだして、山田の召喚の魔法陣と共鳴していた。


(これは!?サモンさんの記憶が!!)


頭が痛くなった山田。その山田に寺島が彼の背中に手をおいて落ち着きさせた。


「対抗する必要ない。呼吸を整えて、頭を無にするか良い。その知識を受け入れるんだ」

「……はい……!」


山田は寺島の言われた通り、深呼吸して自分を落ち着きさせ、目を閉じながら出来るだけ何も考えないようにしていた。すると、彼の中のサモンの記憶が、知識がどんどん入ってきてこの術の真理を理解し始めた。


(そうだ。サモンさんは最初から僕らのような半端で育つ必要がある者を喚ぶするつもりではなかった。単純に力を持つ者を喚びたかったんだ。自分の信念を持って曲げる事なく、どんな困難も立ち向かい乗り越える力を持つ者。理想の力を持つ者を喚ぶんだ!!)

「っ!!!くっ、うっ!!!」

「ぐぬぬぬぬぬ!!!」


寺島の術と山田の能力(スキル)が完全に共鳴していた瞬間、富士村と原田は全身に痛みを感じ始めた。何かが無理やり体内に入ろうとしているような痛み。自分の器を超えるその何かが二人の体内に入り込もうとしていた。いや、逆であった。外から中に入ろうとしているではなく、中から外に出ようとしていたのであった。


「そうだ。未来とは過去と今に繋がっている。己がやっていたこと。己の成り果てた姿。それらは己の中にある理想を実現させるため。無限の可能性()に惑わされるな。己で見つけたたった一つの道、その果てにある理想を掴め!!と言っても、お前たちはもうそれをよく理解しているのであろう。全く、見栄を張らずに痛いなら悲鳴を上げても良いものを」

「誰に、向かって、口を利いてると思ってやがる!!!」

「痛みっ、ってんのは、耐えるモンだろうが!!!」


寺島の煽りに対して強がっている態度を取った富士村と原田。その中に、山田は目を閉じながら今彼らがやっている事は何か、頭の中に整理して集中していた。


(寺島先輩の御札は鍵………道を開くのは先輩たち自身………僕はその中にある力を喚び出す………その名は……)

「行きます!!"英霊召喚"!!!」


山田は最後の仕上げを、召喚士サモンの記憶から得た能力(スキル)名を叫んだ。これが最期の瞬間のように、富士村と原田の身体から出た光は一瞬に強まっていて、そして消えた。それを見て、魔族グリッドが戸惑っていた。


「何が起きた?」

「準備完了だ。では、俺たちは下がらせてもらう」

「な、おいーー!」


寺島は用事が済んだと言わんばかりに疲れ切った山田をつれて谷川たちのところに戻った。そこにはいつの間に合流したアダム隊長とバートンもいた。


「樹君、山田君、おかえり」

「ふむ。生徒たちの状況は?」

「連続の戦いで、ほとんどがHPとMPも消費されたが、犠牲者はゼロ。騎士団と協力して治療能力(スキル)を持っている人が交代で手当してる」

「では、後は強一と仁の戦いの決着を見守るだけだな」

「そうですね。山田君も、大丈夫?」

「……はい……寺島先輩の魔力を魔石の変わりにして使ってたから、MPは消費されていない………ただ、精神的な疲れが出ただけです」

「そうか。お疲れさま」


谷川、寺島、山田は軽い言葉を交わしたが、他のものは何が何だか分からなかった。ただ、アダム隊長は山田が出した言葉から信じられない言葉が出ていて、それを指摘した。


「待て、魔力だと…!?なぜ、貴方が…!?」

「ふむ。それはまた後で説明しよう。今は彼らの戦いを見たくてね」

「それについてなんですが、本当に助けなくてもいいんですか?」

「そ、そうですよ!魔物も消えたし、この人数なら魔族が二人でも…!!」

「ならぬ」

「何で…!?」

「先程その魔族の人たちのやらにも言ったが、今まで彼らはタイマン、一対一で戦っていた。今更俺たちが応戦したら、二人は納得できないだろ。もし、どうしても二人を助けたいというのなら……」


寺島は言葉を区切って、ゆっくり、自分の中から力を出した。それは禍々しいオーラのようで、魔力と似ていた。


「まずは俺を倒すんだな」

「「「「!!!???」」」」

「これは、!?本当に魔力を使っている!?いや、何かが違う、だが、似ている!?」


その場にいる全員、寺島が放ったオーラに対して震えた。それは、魔族兄弟と対面していた感覚であった。あるいは、それ以上にもっと強くと感じた。そして、魔族兄弟の時より、もっと近くに。数人は気絶しそうな人もいた。そこに、唯一、平然としていた谷川は寺島を止めた。


「樹君、やりすぎよ」

「……ふむ。すまぬ。何せ、まだなれていなくてね。加減が難しい」

「樹君を見て思ったが、やっぱり元の力を取り戻しただけではなさそうね」

「それも、追って説明する。そろそろ再開するらしいしな」


谷川に言われて力を収まった寺島は腕を組んで谷川と共に富士村と原田を見守ることにした。寺島の力の圧力から解放された他の者たちはもはや彼の言うことを聞くしかなかった。これで、その場いる全員、富士村と原田の戦いを観察することにした。


一方、富士村と原田には動きがなかった。いや、何かを確かめるように、富士村は自分の左手の掌を見て開いたり閉めたりの繰り返し、原田は自分の首を鳴らしていた。魔族兄弟、兄のグリッドの方は我慢の限界のように話しかけた。


「あのデカイ野郎は本気で手を出さないつもりか?いいだろう。こっちも魔物を出さん!準備完了つぅったからにゃ始めてもいいんだよなぁ!?」


グリッドの質問に対し、富士村も原田も反応していなかった。


「だんまりか?だったらこっちから仕掛けるまでだ!!後から泣くんじゃねぇぞ!!行くぞ、ホブ!!!」

「はい、アニキ〜!!」


魔族兄弟は魔力を放出し、グリッドは富士村に、ホブは原田に攻撃を仕掛けた。一瞬に距離を迫った二人にはかわす間も与えられていなかった。グリッドは力任せの上段から切り下ろし、ホブは力任せの右ストレートを撃った。

それに対して二人は、富士村は左手で、さし指と中指の間にグリッドの剣を止めた。原田は足を大きく開き、腰を曲げ、両手を膝に置き、ホブの右ストレートを額で受け止めた。


「何!?」

「えぇ〜!?」


魔族兄弟、そして寺島と谷川を除く観察していた者たち全員信じられないものを見ていたのように口を開いた。が、正面から見ていた魔族兄弟が最も信じられないのは、富士村は剣を止めた左手に、原田はパンチを受け止めた額に、二人には血が流れていた。痛みを感じられないはずの人間が。


「バカな、………っ!?」

「あ、あれ〜!?これっ、!?」


流された血、そして二人から静かに放出したオーラに気づき、魔族兄弟は動揺した。そして、富士村はグリッドの剣を掴んだ左手で剣をグリッドごと引き寄せ空いた右手が竹刀袋を持ってグリッドの腹部を突いた。原田はやり返すように、ホブの腹部に右ストレートを入れた。魔族兄弟はその衝撃に飛ばされたが、何とか足を地面についたままであった。それでも、ダメージは確かに受けた。


「あぶ、!いっ、たあああい〜!」

「ガハッ!!くっ、!!何でた…!?今のは確かに魔力……!」

「魔力…?あ〜、そういやこっちではそうゆんだっけな……」

「俺たちはこれを"殺気"と呼ぶ」

「"殺気"、だと……!?何だよ…!一体何者だテメェら!!一般剣士とか抜かすんじゃねぇぞ!!!」


富士村は竹刀袋は木刀を取り出し、竹刀袋を横に投げながら、原田は学生帽を直しながら、名乗った。


「「桜ヶ丘高校、三年C組、」」

「風紀委員長、富士村強一」

「総番長、原田仁」


富士村は右手で木刀を魔族兄弟に向かって指し、原田は右手を拳に自分の左手に当たった。


「うちの生徒に害を加えようとする愚行、」

「今度こそ落とし前をつけてもらうぜ」

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