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パーティーの意気込み、そしてエンカウント

「フジムラ殿、ハラダ殿、他の皆さんもよろしく頼む」


他のパーティーがそれぞれ出撃した後、アダムは富士村たちの所に来ていた。


「隊長自ら行っていいのか?」

「人手不足でな。本来は二人の団員が付くが私が二人分を働くことになった」

「……勇者は?」

「本人の強い希望があってアレクシスともう一人の優秀な人に任せた」

「そうか。では、こちらこそよろしく頼む」

「ああ。このパーティーのリーダーはフジムラ殿でいいのか?」

「いや、違うぞ」

「では、ハラダ殿か?」

「ハズレ〜。オレらのリーダー様はあっち」


原田は親指で小林先生を指した。


「え!?私!?」

「そりゃあそうだろう。美波姐御」

「だから小林先生!!ちょっと、富士村君も本気なの!?」

「何か問題が?」

「いや、だって、私は…」


反論しそうとする小林先生であったが、言葉を見つからず黙ってしまった。ファストフィリア(この世界)来て、教師の立場がなくなったと思われていた。生徒たちに敗れて指導する資格がないと教師陣が、そしてほとんどの生徒もそう思っていた。小林先生は生徒たちと同格の数少ない教師の一人ではあるが、それでも生徒たちは指導者としてではなくあくまで同格の人間として小林先生を認めていた。だから、小林先生にはパーティーを指導する自信を用いていなかった。

山田はそれを察して何も言葉を出せなかった。猫田は何かなんだかさっぱりの感じであった。アダムは驚きつつも見守っていたが落ち込んだ小林先生を見て富士村に再確認しようとした。が、その前に原田は小林先生に声をかけた。それは、原田の入学のときから、小林先生がいつも毎日彼に注意しても直ってくれなくて、小林先生の教師としての呼び名であった。


「小林センセエー」

「え…?」


かなりの荒っぽい呼び方ではあったが、そう呼んだ後、原田はただ笑いながら小林先生を見つめていた。それは、信頼に込めた視線であった。

そしてもう一人、彼女に信頼を満ちた声で頼み込んだ生徒がいた。富士村であった。


「先生。意気込みを。我々は何をするか、何のためにそれを行うのか、もう一度ご指導をお願いする」

「…!分かったわ。みんな、聞いてください!!私達は今から魔物と言う危険な生物と戦いに参ります。本来、教師として私は、私達はあなた達学生をそのような真似をさせるわけにはいけません。ですが、状況は状況です。そして、現在、あなた達生徒の方が頼りになっています。ですから、もう一度言います。私達の目的は桜ヶ丘高校()()で無事日本に帰ることです!!誰一人、ここに死なせることはしません!!これを頭に、心にしめてください!仲間のことを、自分自身のことを絶対、何があっても、諦めないでください……返事は!?」

「「「「はい!」」」」

「よし」


小林先生の言葉にいい返事した四人の生徒。周りにはまだ残っていたパーティーもいて小林先生の意気込みの言葉を聞いていた。彼女の言葉は、彼女のパーティーメンバーにだけでなく、他のパーティーにも届いていた。

話した後、小林先生は騎士団のアダムに向けて頭を下げた。


「改めて、桜ヶ丘高校の教師、小林美波(こばやしみなみ)です。このパーティーももちろん、どうか、生徒たちが無事で帰れますように、よろしくお願いします」

「……ヴァージニア教国騎士団、一番隊隊長のアダム・ガッド。こちらも助けを求めた身、全力を尽くそう」

「ありがとうございます」


アダム隊長は関心な目で小林先生を見つめていた。自分が無力だと自覚しながら自分の責任から逃げず、この小さな身体に何という強い意思の持ち主であろうと。そして、礼の言葉と一緒に向けられたその微笑みが、とても純粋で輝いていたとアダム隊長には見えた。


「そんじゃ、士気が上がったことだしそろそろ行くか、美波ちゃん」

「だから、ちゃん呼ばわりしない!!さっきはちゃんと先生と呼んでくれたのに!!」

「気のせいじゃね?わっははは」

「もう...でも、ありがとうね」



こう原田は桜木校長以外、教師を先生など呼んだことはなかった。それは、彼にとって恩師というのは桜木校長だけだからだ。他の教師に敬意がないわけではなかったが、そこは原田の不器用な桜木校長への特別感情の表れであった。小林先生はそれを理解していた。だから、驚いて、そして嬉しかったのだ。

こうして、小林先生のパーティーが出撃した。

そんな彼女たちの背中を見送っていたパーティーの中に、勇者パーティーもいた。


「フン、何よ。結局先生頼り?意地なしだね」

「貴女にはそう見えたの、香奈さん?」

「だって、どう見てもそうでしょう?会長は違うとでも言うんですか?」

「いいえ、意地なしかどうかはともかく、彼らが先生に頼っているのは間違いないわ」

「だったら意地なしでいいじゃない。今更先生に頼ってもしかたないのに、あたしたち自分自身で何とかするしかないわよ。ねえ、勇斗君もそう思わない?」

「……勇斗君は先生に頼ってることは悪いことだと思ってる?」

「……先生たちを信じていないではありません。いや、この状況において教師とか生徒とかにこだわる必要がないと思う。俺たちは協力しあってするべきです!」

「そうだよ!さすが勇斗君!」

「そう……そろそろ私達も行きましょうか」


***


「山田君って友達いないの?」

「……この序盤に仲間、ましてやリーダーに裏切られるとは思わなかった」


移動中、小林先生はこれが機会だと思い、山田の交友事情を聞くことにした。小林先生は山田のクラスの担任先生ではあったため、前々から山田のことを気にかけていた。


「違うよ!そういう意味で聞いていません!」

「分かってます。冗談です」

「うぅぅ…そういうのクラスメートでやってよ」

「そうですね……」


山田はいわゆるボッチであった。入学式から二ヶ月、未だに友達と呼ばれる人がいなかった。ファストフィリアに来るまではいつも一人で教室で本を読んだり弁当を食べたりしていた。他人とは必要以上に関わらない。それが山田拓人やまだたくとという人物の心構えであった。山田は簡単に人を信じない。それは、彼が自分自身を信じていないからであった。


「友達をほしくないではない。ただ、分からなかっただけ。自分が自分をを信じていないのに本当に相手が自分を信じてくれるのか。その自信のなさが他人への不信感を生んだ。結局僕は自分自身を含めて誰も信じることができなかった」

「そうか。なら仕方ないね」

「...以外ですね。友達を作れとは言わないのですか?」

「じゃあ、そう言ったら山田君は友達を作れるの?」

「それは...」

「ねえ、山田君は友達とはどんな関係だと思う?」

「どういうことですか?」

「私ね、友達とは一番単純で、だからこそ一番定義にするのは難しい関係だと思うの。ほら、恋人とか家族はみんな共通の認識を持っているでしょう。でも、友達はそうじゃないの。友達とは仲良くしてる人、あるいは本当の友達とは心から信頼し合える人などでそれぞれが違う認識を持っている。例えば、」


小林先生は彼女たちの前に歩いている富士村と原田を指した。


「あの二人は山田君から見て友達同士に見える?」

「……」


山田は黙り込んでしまった。ここ数日、二人と多少の接触があったものの、仲良くしてる二人を見たことがなかった。お互いに嫌味を言い合っていることが多かった。だが、その分、ほぼいつも二人が一緒にいることも多かった。どこから見てもお互いのことを嫌っているのに、それでも二人は今も隣り合わせで歩いていた。ならば、二人は友達なのか?


「よく、わからない、です」

「そうだよね。私も始めてはそうでした。喧嘩するほど仲がいいとはいいますが、さすがに会うたびに嫌味言い合って喧嘩してるのは違うよね。でも、あの二人は、お互いのことを嫌っていてもお互いのことを認めているのよ」

「お互いのことを認めている?」

「ええ。富士村君は原田君を原田君として認めて、そして原田君も富士村君を富士村君として認めている。これは谷川さんと寺島君にも言えることね。それが私から見て学校にも噂される三年生の謎の四人組の絆」

「友達としてではないですか?」

「ううん。言ったでしょう。それぞれの友達の定義が違うって。あの四人があの四人であったから四人の関係が出来ていた」

「すみません、分かりません」

「えっと、つまり、山田君はまだあの四人のような山田君にとっての相手とまだ出会っていないってこと。だから、今は仕方ないよ」

「出会い……」

「うん。こういう相手ね、もしかすると運命の人との出会いより確率が低いかもね」


そりゃそうだと山田は思った。その低さはきっと自然な確率だけではなく、やる気の低さも含まれているからだと。運命の人と出逢えば家族を作りずっと一緒にいられる。だから運命に任せっきりではなく人々は努力した。だが。たかが認めし合う相手、友達と出会うために誰が努力するというのだろう。そんな深いな絆を成り立たなくても、遊び相手はいくらでも出来る。そのはずなのに、なぜか山田の心は騒いでいた。'認めし合う相手'、その言葉が今まで凪いだ海のような山田の心を波風をもたらしていた。


「話は終わったか?」

「富士村先輩、どうしたんですか?」

「そろそろお客さんのお出ましだぜ」


立ち止まっていた富士村と原田は同じ方向に向いていた。その先に、一匹、いや一体、説明につかないナニカが小林パーティーに近づいていた。四足で、一見犬に見えるが野良犬にしても凶悪すぎて、禍々しいと感じた。


「何、あれ?」

「何か、イヤな感じがするヤツッスね」

「もしかして、あれが...」

「ああ。あれが魔物だ」


他の三人が魔物を始めて目にして震えた。山田はテンプレな魔物、ゴブリンや獣類魔物などを期待していたが、あれは間違いなく別物だ。ただの別種族のものではなく、本当に生き物なのかも怪しいナニカ。得体の知らないモノに桜ヶ丘の者は恐怖を感じていた。二人を除いて。


「アダム隊長、あれは何を食って生きてきた?」

「?魔物は食事が必要ない。何も食べなくても、やつらの生命力(HP)が減ることはない」

「んで、子とか生んでんのか?もしくは卵を?」

「いや、我々も原理はわからないが、やつらは何もないところから急に現れているのだ。形も強さもバラバラで、ただ、俺たちの街を、世界を壊してきた憎むべし存在だ」


アダムの言葉にはっきりと憎しみがこもっていた。そのせいか、口調も少し荒っぽくなっていた。それを見透した富士村と原田は合点を得て、迷うことなくその魔物に立ち向かっていた。


「生きる意味も持たず、守るものも持たず、生物など言えぬただ破壊するためのまがい物、か」

「なら、話は簡単だ」


富士村は剣を鞘ごとベルトから外して左手で持っていた。

原田は棍棒を肩に乗せていた。

二人は既に戦闘体制に入っていた。


「「遠慮なしでぶちのめすだけだ!!」」

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