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謝罪と愛


 さて、今回教会に行ったのはヴァーミリオン殿下から手紙を読んだからだ。

 シュバルツさんから手紙を受け取り、屋敷に帰り読み。初めの謝罪やマゼンタさんへの心配を読んで微笑ましく思いつつ夕食の時間だったので一度読むのを中断し。

 夕食の後に残りを読んだら、夕食時にヴァイオレットさんに報告を受けた今日俺が居ない間にシアン達と話した内容も含めて色々と不安になり、アンバーさんに出るとだけ伝えて外が雨の中教会に向かった訳だ。


――妻への無断外出、そして深夜帰宅……!


 つまりヴァイオレットさんにとっては、夫が直接なにも告げずに夜に謎の外出をし、中々帰って来ずにいた訳だ。しかも帰って来たのは日付が変わる寸前。

 謎の外出が不安だろうし、勝手な事をした不満や不安な気持ちにさせた文句もあるだろう。それは玄関の扉を開けた瞬間に、バーントさんとアンバーさんも控えていない状態で待ち構えていた姿から想像するに難くはない。

 ならば俺がするべき事と言えば、なにをして来たかを正直に言い、マゼンタさんの事とかちょっとカナリアが家に居るかを確認してたら遅れたとか言い訳をせずに謝罪をする事だ。

 俺の身体が冷える事とか濡れている事とかどうでも良い。愛する妻に勝手な事をし、不安な気持ちにさせた事の方が重要な事なんだ……!


「あの、ヴァイオレット――」

「無事で良かった」

「――さん?」


 そして謝罪をしようと近づこうとすると、俺が近付くよりも早くヴァイオレットさんが俺に安堵の表情で近寄って来た。


「急にアンバーに言伝だけ残して居なくなって、すぐに帰ると言っていたらしいのに、なかなか帰って来ないから不安だったんだ。日付が変わったら探しに行こうかと悩んでいたが、待っていて正解だったよ」


 そして用意していたらしいタオルを俺の頭にかけながら、心の底からホッとした表情と言葉で俺の帰宅を喜んでいた。

 不平不満といった感情、文句を言いたいと言うような怒っている感情は一切無く、喜怒哀楽の喜に染まったこちらの気を使った感情。


「……すみません、ヴァイオレットさん。ご心配をおかけしたみたいで」

「いや、無事ならそれで良いんだ。まずは濡れているようだし、着替えついでにお風呂に入った方が良いだろうか」

「そうですね。大分濡れちゃって……あの、俺は――」

「なにがあったかは後で聞く。だが、まずはクロ殿が風邪をひかれても困るから、お風呂に入ってからにしよう」

「は、はい」


 そう言いながらヴァイオレットさんは俺の手を引いてお風呂へと手を引っ張っていく。

 手も濡れている事は分かっているので引っ張ればヴァイオレットさんも濡れるし、まだ完全には拭ききれていないので廊下とかが濡れるのは分かっているだろうが、それよりも俺の身体が大事だと言わんばかりである。


――……そうだよな。我が愛する妻のヴァイオレットはこういう女性だ。


 怒るより安堵し、叱るよりも心配する。俺の事をいつも気遣ってくれるこの世で一番愛している女性。

 だからこそ彼女を不満にさせた事を、俺は深く反省しないといけない。

 愛する女性を不安にさせた事は、俺にとって――


「よし、ではクロ殿。一緒に入ろうか」


 とって――


「なんですと?」


 今、ヴァイオレットさんはなんと言った?

 聞き間違いでなければ、バーントさんかアンバーさんのどちらかがあらかじめ用意していたお風呂場に入った途端、とても良い笑顔でとても嬉し恥ずかしな事を言ったような?


「はは、クロ殿。もしかして眠くて聞き逃したのだろうか。クロ殿は服を脱ぎ、私は湯着を着た状態で一方的に洗われる立場になるようにと言ったんだ」

「俺の間違いでなければ言った内容変えてますよね?」

「クロ殿の間違いだな」


 言い切ったよ我が愛する妻は。しかも良い笑顔で。


「……ヴァイオレットさん、もしかして怒っていますか?」

「いるぞ」

「いない、じゃないんですね」


 いつもの「いる、いない」の言い合いではなく、真正面から怒っている発言を頂きました。

 先程までは優しさを感じた笑顔が、今はちょっと怖い。


「ふふ、冗談だ。ただクロ殿が私達を心配させたのは本当だからな。少しは困って欲しいと思っていっただけだから怒っていないさ」


 そう言うと先程までのちょっと怖かった笑顔が和らぎ、落ち着く笑顔が戻って来る。

 よ、良かった。今回ばかりは俺が一方的に悪いので、怒らせたら本当に申し訳なさから勝てる要素が無かったからな……!


「じゃあ一緒に入るというのも……」

「そちらは本気だ。さぁクロ殿、服を脱いでくれ」

「……はい」


 はい、という訳で勝てる要素が無い俺は大人しく服を脱ぎます。

 元々服は脱ぐつもりだったし、別に脱ぐのは構わないのだが、こう……ヴァイオレットさんに見られながらというのはどうも照れる。

 今更裸を見られるのは恥ずかしくない、というほどでは無い。恥ずかしいものは恥ずかしいのである。しかも俺だけ脱衣となるとより恥ずかしい。


「いや、私が脱がせよう。手をあげるんだ」

「う。……はい」

「……自分で言っておいて言うのもなんだが、素直に従うんだなクロ殿」

「妻を心配させ、怒らせた夫の立場は低いんです」

「自分で言わないでくれ。冗談だからな? 私が怒っている事と言えば、服が濡れる程の事をしたという、自分の身を大事にしなかった事をした事くらいだ」

「本当ですか?」

「本当だ」

「勝手な事をした事を怒っていませんか?」

「相談をしなかったのは不満に思うが、怒りはしないさ」


 むしろそこを本当に怒っていると思われている事に不満に思う、というような表情をするヴァイオレットさん。拗ねているようで少し可愛い。

 …………。


「それよりも早く濡れた服を脱いでくれ。脱ぎにくいのなら手伝うぞ?」

「い、いえ、大丈夫です。…………」

「どうした、クロ殿?」

「愛していますよ、ヴァイオレットさん」

「っ!?」


 一連の事を改めて考えると、我が愛する妻は本当に良い妻であるのだと思い、つい口に出てしまった。

 言ってしまったと思ったが、俺の本音でも有るので後悔も反省も無い。


「……クロ殿」

「なんでしょう?」

「マゼンタさんと関係を持ったのだろうか」

「後ろめたさから愛していると言った訳じゃ無いですからね!?」

「ふふ、冗談だ。今のは愛する妻の照れ隠しと思ってくれ。急に愛していると言って困らせる、愛している夫よ?」

「う。……はい」


 ……やっぱり、ヴァイオレットさんには勝てないな、俺は。


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