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紅紫な彼女への所感


 この後どうするかと悩んだが、放置も出来ないし下手に屋敷を開けるとなにをやるか分からないので、結局はマゼンタさんがお風呂を上がるまで待ってから教会へ行く事にした。

 マゼンタさんは結構髪が長いので、洗ったり乾かしたり他にも女性特有のお風呂の長さがあるのでゆっくり準備しようと思ったのだが結構な速さでお風呂から上がったので、素早く準備を済ませてから雨の中を傘をさして五人全員で教会に向かい、昼前には教会に着く事が出来た。


「という訳で、早く来てしまったがあっちの女性がシキの新たなシスター、マゼンタさんだ。よろしくしてやってくれ」

「あの子が、ねぇ」


 教会に着くと礼拝堂には誰も居なかったので、ヴァイオレットさん達に礼拝堂の案内を任せて俺は奥に入り、中に呼びかけた所シアンだけが教会に居た。

 そして礼拝堂に戻って色々と見たりしているマゼンタさん達を、少し遠くからシアンに紹介した。


「まぁ、早く来たのは分かったけど、あの子が余所で問題を起こしたって子? ……不思議な感じはするけど、そんな風には見えないね」


 シアンは立派な礼拝堂にはしゃいでいるマゼンタさんを眺めながらそう評する。

 マゼンタさんの事はシアン達には、「問題を起こしたやんごとなき身分の御方が、特殊な事情を持って教会に預けられてシスターになる」とだけ説明をしてある。

 夢魔法の事を除き詳細は改めて明日か明後日くらいにしようとしていたのだが、こうして先に来られてしまったので、まずは会ってみた方が早いと思いこうしている訳であるが……


「……もしかしなくても、あの子って王族関連じゃない?」

「分かるか」

「いや、だって紫の瞳だし、レットちゃんと何処となく似て――っていうか、王族関連でマゼンタって……」


 シアンは眺めながら俺にそう尋ねて来た。

 ……マゼンタさんの今の状況(若返りとかその辺り)の説明が難しいのでまだ言ってはいなかったし、夢魔法当時よりも若干若いあの姿だと、昔に直接の面識でも無い限りバーントさんとアンバーさんのように疑問に思いつつも名前が同じの似たような子とかランドルフ家の親戚の血筋と思うかもしれないが……シアンには隠すだけ無駄だろうな。


「まぁ、どう言う御方かは直接会って知っていってくれ」


 とはいえ、キチンと話すのはもうちょっと後にするとしよう。

 彼女の性格に関して注意はするが、まずはその辺りは気にせずに交流をして欲しい。


「クロがそう言うなら私もそうするけど……その前に聞きたいんだけど」

「どうした?」

「クロにとってあの子ってどんな感じの子? クロ、あの子の事相当複雑な感情抱いていたでしょ」

「……そう見えたか?」

「シキに新しいシスターが来る、と言った時点から、今までにない感情を抱いていたじゃん」

「……そうか」


 出来る限りそう思われないようにしていたつもりだったのだが、顔に出ていたようだ。反省せねばならないが今はシアンの質問に答えるとしよう。


「で、クロから見てあの子の所感は?」


 ええと、どんな感じの子か。あらゆる面に秀でた才能を有する女性であり、子と言うか俺の前世も含めて同じ年齢くらいの女性ではあるが、この場合はそういう事を聞いているのではないだろう。

 ただ俺にとってどう見えるのか。シアンはそう尋ねているから、俺が彼女を言うとなれば……


「メアリーさんの成れの果て、かな」


 という事だろう。


「ああ、いや、言い方が悪かったな。ええと、メアリーさんがヴァーミリオン殿下達に会う事無く成長したら、似たような感じになったんじゃないか、と思う女性と言うか……」


 マゼンタさんはスカーレット殿下やクリームヒルトの抱えている悩みを肥大化させたまま成長した、とか。常識に囚われない発想をする、とか。色んな感想は出て来るのだが……


『皆を私が魔法で幸福にしたいな、って思ったの!』


 ……あの夢魔法を唱える前の、妖艶さの無い無邪気な心からの笑顔と言葉は、今思うとメアリーさんによく似ていたな、と思う。

 メアリーさんがヴァーミリオン殿下達に会わない……というか、この世界をゲームの世界だという認識を改める事無く成長していったら、メアリーさんもマゼンタさんのようになっていたのだと思ってしまう。


「……いや、すまん、変な事を言ったな」


 とはいえ、質問の答えとしては良くない部類の回答だろう。

 俺は悩みながら言った答えの後にシアンに謝罪をした。


「クロがそう思ったんなら、謝る必要は無いよ。思った事を話すように促したのは私だしね」


 しかしシアンは気にする事無く、俺の方を見ずにマゼンタさんを見ながらそう答えた。

 話し半分で聞いていない訳では無く、聞いた上でその反応。つまりは俺の彼女への所感も重要なのだから、変に気にせず思ったように口にすればそれが俺にとっては正しい事だから気にしなくて良いとその態度が告げており、俺にはその態度がありがたかった。


「ま、後は私が実際に話してどういう子か確認してみるとしますか。目下の問題もあるし、そこをどうするか……」

「問題って?」

「いや、早く着たから色んな準備とか出来てないでしょ。部屋とか食器類はまぁ大丈夫だけど、あの子に合うシスター服とかあるかとか。申請分はまだ来ていないし、私の予備は有るけど、多分あの子には大きいだろうし」

「ああ、それならはいコレ。元々今日渡すつもりだったマゼンタさん用のシスター服だ」

「なんか鞄持ってるなと思ったらそれかい。というかなんでクロが持ってるの」

「なんかシュバルツさんが申請の品として運送の依頼を受けたそうなのだが、“え、服と言えば君だろう?”とか言って俺に……」


 シュバルツさん曰く「どうせ君が調整するんだろう? そういうの抑えきれない性質だろう?」だそうである。シュバルツさんは俺をなんだと思っているのだろう。否定はしきれないし、実際に解れとか確認して縫い直したが。


「まぁ、いいや。ありがとクロ」

「いや、別に構わない。ところで後でシアンに預けはするが……スリット入れるなよ?」

「クロは私の事をなんでもスリット入れるスリット魔と思ってない?」

「それは思っていない事も無い気がしないでもないが、それとは別にシアンに一つ聞きたい事があるんだが」

「思っているんかい。私は勧めるけど許可なく誰かの服は破かないって。で、なに聞きたい事って?」


 俺はシアンに鞄の中身を確かめさせた後、鞄を閉じて再び俺が持ち直す。鞄についてはシアンがマゼンタさんと会って教会の奥に引っ込む時にでも渡すとしよう。

 そして俺はシアンにどうしても聞きたい事がある。マゼンタさんのこれからとかマゼンタさんに対して注意事項も重要だが、それよりも重要なシアンに確かめたい事。それは――


「シアン、俺は結婚して色っぽくなったのだろうか」

「…………」


 という事である。

 ヴァイオレットさんが気にしていたこの要素。人の機微に聡いシアンなら分かるはずだ……!


「……これは私の勝手な予想だけど、人妻や未亡人が色っぽいという話になって、イオちゃんが“結婚するとヒトは色っぽくなる”と思い、クロに対して“私は未婚のクロ殿を知らないから変化を楽しめない!”とか嘆かれたとかそんな感じ?」

「凄いな流石だシアン。大体あってるぞ」

「うん、分かった。とりあえずアンタらバカ夫婦のイチャつきに私を巻き込むな」

「イチャつき……?」

「うわ、無自覚だ」


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