何度かやってる
「えっと……そろそろ時間のようです、行きましょうか」
「……そ、そうだな。行くか」
妙にヴァイオレットさんとの間に気まずい雰囲気が感じながら、首都に行く準備が整ったようなので皆に空間歪曲石の所へ行くように促した。
気まずいとは言ってもキスの件を思い出して恥ずかしいだけであるので、首都に行ってしまえばこの雰囲気は解決するのだが。
「はい、次のハートフィールド様方で登録し直されました七名の……あっ」
空間歪曲石を使うための担当の方が次に使う俺達の名前を呼び、俺達の姿を見てなにかに気付いたかのように一瞬素の声らしき声を出す。
恐らくキス未遂の件を見ていたのだろう。そしてその反応に俺とヴァイオレットさんは少し顔を赤くしながらも、下手に恥ずかしがってもさらに恥ずかしいだけなので担当の方に近付き、身分証明書や申請書を渡す。
「――はい、確かに確認しました。では皆様、範囲内に入ってください」
仕事状態に戻った担当の方がこちらの書類一式を確認し、全員に空間歪曲石の範囲内に入るように促す。
俺達は指示に従い移動すると、移動を確認した担当の方が合図を送り空間歪曲石に魔力が送られ、駆動音が響き光が溢れてくる
「……クロ殿」
すると首都に移動する僅かな間にヴァイオレットさんが俺に声をかけ、
「楽しい首都になると良いな」
と、言い俺の手を握った。
小さな不安から来るモノか。あるいは先程の事の代わりに握って来たのかは分からないけれど、その願いは必ず叶えてみせる。
俺はヴァイオレットさんの手を握り返した。
◆
光が収まると、先程まで感じ取っていた空気とは違う空気を肌に感じながら、首都用の空間歪曲石の転送先である、何度か入った事のある首都にある建物内の魔法陣の上に俺達は立っていた。どうやら特に問題なく着いたようである。
「お疲れ様です、皆様方。首都へようこそ」
グレイは初めての転送になにが起きたか初めは理解できていない表情であったが、先程まで居た担当とは違う職員がおり、周囲の状況が変わった事に気付くと見て分かる程度には嬉しそうな表情になる。
「アプリコット様! これがワープというものなのですね! もう首都に着いたのです
か!?」
「その通りだ弟子よ。我達は影も形も見えなかった地にこの一瞬で着くことが出来たのだ!」
「話だけは聞いていましたが本当にすごいのですね!」
以前からこういった風に子供が嬉しそうにする様子を何度も見て来たのだろう、グレイ達の燥ぐ様子をこちら側の担当の職員は微笑ましい表情で見ていた。バーントさんやアンバーさんだけではなく、ヴァイオレットさんやシアンも微笑ましそうに見ている。
グレイは一通り周囲を見て燥ぐと、なにかに気が付いたような表情でアプリコットに向かって問いというか確認をする。
「首都では確かトレンディーを行くハクい方が三高を満たす男性をハントするため日夜おきゃんへと変貌しているのですよね?」
何処で覚えたそんな言葉。
いやでも俺もよく分からない言葉だらけなので突っ込むに突っ込みきれん。
「うむ、つまり……首都では世論の未来を掛けるヴィーナスの肋骨が己を高める土と血と結ばれるするため日々努力をしているということか」
「ああ成程、そういう意味なのか」
「レイちゃんが私の知らないよく分からない言葉を言うと思ったけど、コットちゃんのお陰で分かったよ」
つまり流行の最先端を行く綺麗な女性が、能力の高い男性を射止めるため積極的に行動しているという事か。というか誰が教えた? ……イエローさん? よし、お土産は買わないでおこう。
「あの、お嬢様。何故皆様はあれで分かるのでしょうか」
「えっ? ……ああ、そうか。お前達にはまだ分からないか」
「え、お嬢様も分かるのですか……!?」
「大体は。お前達も時間を掛ければ理解できるようになる」
『は、はぁ、そうでしょうか……?』
単語の意味は理解できても言葉の意味が分からないと、なにを言っているかは分かっていても混乱するだけだと思うけどね。
「あの、こちら全員分の申請書になります。ご確認お願いします」
「は、はい、確認させていただきます」
俺は燥いで今すぐにでも駆けようとするグレイやそれを止めるヴァイオレットさん達を横目に、一応代表者という事でここに来た者が間違いでない事を示す申請書を、俺達の先程の会話を見て若干狼狽えている担当の職員らしき方に渡す。
「はい、問題ありません。それではよい旅となりますよう、我ら一同心よりお祈り申し上げます」
職員の方は深々と頭を下げ、俺達を見送る
俺は各々に自身の荷物を持つように告げ、俺も身近に置いておいた荷物を持とうとしたがバーントさんにひったくられていたのでヴァイオレットさんの荷物を持とうとし、しかし既にアンバーさんにひったくられており、どうしようかと悩んでいると俺と同じように荷物を持っていないアプリコットに目がいった。
俺みたいに従者が荷物を持ったわけでもないのにどうしたのだろうか。
「アプリコット、お前荷物は?」
「服と杖と帽子と財布さえあれば他に必要なのは我が頭脳だけだぞ、クロさん」
「替えの服は?」
「部屋で脱いで魔法をかけて乾かせばまた使える。極力荷物を減らしたかったのでな」
まじかこの子。




