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自然と運動能力が高くなる


 俺が治めているシキは田舎であり少々特殊な場所だ。

 特に封印されしモンスターが眠っていたり、天変地異が起きるわけではなく、住んでいる住民が、だ。

 大半は元々この地に居た方々でお年寄りが多いが、俺が過去にやらかしてここに送られたように、過去になにかをやらかしてここに送られた者が少なくはない。例えば今俺達が向かおうとしている場所とかである。


「ヴァイオレットさん、シキには神父とシスターが各一人います。今日は神父様は居ませんが」

「ほう」


 場所は教会。グリーンさんの畑から近く、目立つ建物であったのでヴァイオレットさんの目に止まったためここから案内することになった。

 田舎ではあるが、シキでも国教の教会は存在している。俺の館と同等くらいは立派であるが、これはかつてシキでは多くの信仰を集めていた名残だそうだ。が、現在居住しているのは二人のみ。理由は過疎化などもあるが、この地の価値が変わったからでもある。


「シキは様々な人たちが居ます。多くは元々居た住民なのですが……俺が言うのもなんですが……」

「過去に失敗をした者達が居る、と言いたいのだろう。私に気を使わなくていい」


 失敗。と言うあたりヴァイオレットさんも気を使っているようである。

 そう、シキでは様々な理由で都心から離された者達が多く流れ着く。それは殺人などの重大犯罪者ではなく、“罪を立証すると不都合があるけど、こいつがいるともっと不都合”や“行動されると迷惑”といった感じだ。


「となると、この教会では教義に反したり、寄付金横領した者が居る、といったところか?」

「そうですね……まずは会ってみましょうか。なにかしら過去がある、というのを頭に入れていただければ構いませんので」

「ふむ? クロ殿がそう言うのならば……って何故クロ殿は身構えている」


 身構える理由はすぐ分かるかと思います。

 グレイにヴァイオレットさんを扉から遠ざけさせ、被害が及ばないように守るよう指示をする。

 呼吸を一つ。意を決し、教会の扉を開け、


「この裏切り者のまっくろくろすけが――!!!」

「ふん!」

「クロ殿!?」


 開けた瞬間ドロップキックをかましてきたシスターを華麗に捌き受け流した。

 内部でなにやらカツ、カツと構えるような音が聞こえたからもしやと思ったが、やはり蹴りを入れて来たか。

 なお、受け流したシスターは空中でクルッと縦回転をし、地面に手を付け「とうっ!」と言いつつ腕の力だけで空中に舞い上がり、華麗に着地をした。


「ふっ、神の御使いである私の蹴りを躱すとは……天罰が下るよ、クロ」


 その神の御使いとやらがいきなりドロップキックをかますのは構わないのだろうか。


「おはようございます、シアン様。本日も元気なお姿を見れて嬉しい限りです」

「あ、おはよー、レイちゃん。今日も綺麗だね!」

「ありがとうございます」


 しかし当の本人は全く気にもせずグレイに挨拶をしていた。慣れてはいるが、相変わらずのマイペースである。


「裏切り者、ってなんのことだ、シアン」


 シアン・シアーズ。

 濃い青髪に水色の瞳のシキ唯一の修道女(シスター)

 修道服(前世の修道服と似ている黒のワンピースタイプ)を身に着けてはいるが、頭巾はせず肩まで程度の髪を出しており、ロングスカートにはやや深めのスリットを入れている。

 ヴァイオレットさんより少々低めの身長で、比較的引き締まった体型の運動能力高めの戦闘系シスターである。ちなみに戦闘系シスターはあまり居ない。


「ふっ」


 なんだその「分かってないな、コイツ」みたいな笑いは。その笑いのせいで偶にグレイが同じ笑いをするようになったんだぞ。

 するとシアンはビシッ、と指をこちらにさして教えてやると言いたげに言葉を続けた。


「私と神父様を差し置いて結婚するなんて、裏切り以外の何物でもない!」

「知ったことか。その神父様を一度でも口説いてから言え」

「わぁ、貴女が噂のクロのお嫁さんね!」


 分が悪いから逃げやがった。

 相変わらず神父関連になると弱い。というかそう返されるのは少し考えればわかるだろうに、何故シアンは攻撃から入るのだろうか。俺が受けても大丈夫と分かっているからしている所もあるだろうけど。


「クロには勿体無い位の美人ね! もし結婚式を挙げる時は盛大に祝ってあげるからね!」

「え、あ、ありがとうございます?」

「私の名前はシアン(Cyan)シアーズ(Sears)。この教会でシスターをやっているからこれからもよろしくね!」

「は、はい、よろしくおねがいします。あ、私はヴァイオレットと……」

「じゃあイオちゃん! これからもよろしく!」

「イオちゃん!?」


 あ、ヴァイオレットさんシアンのペースに巻き込まれている。

 おそらく周りに居なかったタイプだろうから、付いて行くだけでやっとかもしれない。


「それじゃ、私はこれからグリーンさんに湿布渡してくるからまた今度ね!」


 そう言うとシアンはなにも持たずにこの場を去っていった。

 シアンのヤツ、もしかして俺にドロップキックをかますために待機していたんじゃないだろうな。ちなみにシアンが居なくなると教会は留守の状態になるのだが、鍵などはかけていない。不用心ではあるが割と見慣れており今の所は特に問題は起きていない。


「ヴァイオレット様、なにか気になるご様子ですが、どうなさいましたか?」


 シアンが嵐のように去っていった後、ヴァイオレットさんは戸惑った表情のままシアンが去っていった方向を見ていた。


「いや、先程のシスター……シアンさんなのだが、あまり見ない服装であったではないか」

「そのようですね。(わたくし)めはあまり他のシスターを見ないので詳しくはないのですが」


 あぁ、多分ヴァイオレットさんが言いたいことはあれだと思う。もしも彼女が教義に反していないのならば、あの服装だと色々と不都合があるはずだ。

 

「確か信者はともかくとして、教義では一部を除いて神父など教会関係者は確か服の下は……いや、私の思い違いだろう。そうでなければあのような服装であの動きは出来まい」

「……? あ、成程。ヴァイオレット様、恐らくご想像通りです」


 あの格好だと起こる不都合。俺も答えは分かっているのだが、俺の口からは答え辛い。

 そう言えばヴァイオレットさんがそうなる可能性もあったんだなー。……よそう、変な方向に想像してしまった。昨日を思い出してしまう。


「教会関係者は下着は禁止ですから、シアン様も着ていないです」

「………………」


 あ、ヴァイオレットさんが信じられないものを見る目でシアンが去った方向を見ている。

 方向性は違うがこういう人がまだ居るのだけれど、大丈夫だろうか。



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「下着じゃないから問題なし」とか言って、別のものを履いていたりして。
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