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金髪女性の襲来(:灰)


View.グレイ



「ええと、季節と室温における沸騰温度のお茶の淹れ方は……これで合っていましたよね、バーント様」

「どれどれ……うん、合っているよ」

「良かったです! よし、今度淹れる時はこの知識を利用して、喜んで貰えるようにならないと……!」

「ふふ、頑張ってね。私も負けないようにしないと」


 王城という滅多に入れない場所の、とある部屋にて。私とアプリコット様と、バーント様とアンバー様は雑談をしながらクロ様……もとい、父上と母上の戻りを待っていた。

 待機していると、バーント様とアンバー様が憧れているという宮廷執事の方が来られ、紅茶を用意された。

 その淹れ方を私が熱心に見ていると、執事の方が紅茶の淹れ方などを教えてくれた。貴重な機会であると私達は熱心に学び、現在は執事の方が去ったのでバーント様と復習をしているのである。


「むぅ、王族(エヌマ)御用達(エリシュ)だけあって茶葉の質が良く、執事の淹れ方も素晴らしく、美味であるのは確かなのだが……不思議とグレイの淹れる茶の方が良く感じるな」

「えぬ……? 恐らくは良いモノであっても、アプリコットちゃんの舌に合うように淹れられているからでしょうね。ようはグレイ坊ちゃまの淹れる紅茶が好きなのでしょう」

「坊ちゃま……確かにクロさん達に仕えたからそうなるのであろうが、違和感が拭えぬな……」

「おや、私としてはお坊ちゃまを名前で呼ぶ貴女の方も違和感がありますがね。ねぇ、アプリコットお嬢様?」

「その呼び方やめい。先程は普通にちゃん付けであったであろうが」

「失礼、アプリコット奥様」

「ワザとやっておるな!?」


 アプリコット様はアンバー様と楽しく雑談されている。

 会話の内容は聞き取れないが、とても仲が良さそうだ。やはり同性同士なので距離が近いのかもしれない。少し羨ましい。


「しかし、遅いですね父上達は」

「そうだね。とはいえ、今後の事を左右する大事なお話だ。遅くなるのは覚悟したほうが良いかもしれない」

「おお、つまり夜遅くまで皆さんでしけこむ、という事ですね」

「その使い方は違うよ」


 おや、違うのか。男性と女性が部屋の中で色々と話し合う事だと聞いたのだけれども。

 ……え。……成程。夫婦や恋人同士が部屋で仲良くするような事をしけこむと言う……つまり父上と母上のような感じだろうか。

 ならば私の場合はアプリコット様がしけこむ事が出来るように頑張るとしよう。


「ううん、なんか勘違いしているような……えっとね、グレイく――ん?」

「どうされました?」


 バーント様がなにやら私の勘違いについて訂正しようとすると、なにかに反応を示した。

 私もバーント様が気にされた場所――扉の方を見るが……特になにも無い。


「誰かが近付いて来るね」


 その言葉にアプリコット様やアンバー様も反応し、扉を見る。


「先程の執事の方や、騎士団長などではあるまいか?」

「いや、それとは違う足音や体の音だね。城の方々とは違うと思う」


 そういえばバーント様は耳がよく、音に敏感であった。あの森妖精族(エルフ)特有の私達よりも長い耳が音を良く拾うのだろうか。


「では、クロさん達であろうか?」

「クロさんの聞いていたくなる特殊な音とは似ても似つかないさ。興奮しない」

「……そうであるか」


 む、アプリコット様が引いているのは気のせいだろうか。

 しかし興奮しないとはどういう事だろうか。……そういえばバーント様は父上や母上、そして私と話す時は、ブライ様が私を見る時と似た目をするのだが……それに関係しているのだろうか。……それは無いか。あれは年上の御方が年下を見る慈愛の表情だろう。


「では、誰であろうな」

「分からないですね。金髪の女性の音のように思えますが、不思議な混ざり物がある様な……」

「待つのだ。金髪女性と何故分かる」

「音から分かります」

「なんか怖いぞ貴方」

「兄はまぁ、変わっていますからね」

「……アンバーさんも香りで髪色とか分かったりするのでは? 実はアンバーさんも既に分かっていたりするのではないか?」

「はは、香りがしないこの状況で分かる訳ないでしょう」

「つまりそれは香れば分かるのであるな……」


 興奮の意味は置いておくとして、どうやら近付いて来るのは金髪の女性のようだ。

 金髪の女性と言うとカナリア様やロボ様が思い浮かぶが……どちらも首都には居ないだろう。他にも学園で金髪の女性は多く居るが……少なくとも王城には居まい。


「……部屋の前で止まりました」


 どうやら金髪の女性はこの部屋に用事のある方のようだ。

 ともかくバーント様やアンバー様も仕事モードに入っているので、念のため私も仕事状態を作って置く。もしお偉い方が此処に来て、粗相をしてしまったら父上達にも申し訳ない。

 まずはされるだろうノックを待って――


「やぁ、君達。悪いが攫われてくれ」


 しかしノックの音がされる事は無く、扉は開かれ。

 現れた金髪の女性は、開口一番ワザとらしい笑顔と共に現れ。


「この子と一緒にね」

「――カナリア様!?」


 髪が乱れ、気絶したカナリア様と一緒に、現れたのであった。


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