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ソムリエ?(:菫)


View.ヴァイオレット



「ナ、何故装甲ガ……シカモ頭ヤ腕トカハ無事ナノニ、ナンデ……!」

「ロ、ロボさん。大丈夫か?」

「大丈夫デス。スグニルーシュクンガ、服ヲ羽織ラセテクレマシタシ……見マシタカ?」

「…………。少し、見えた。だが安心しろ、綺麗だったぞ!」

「!? エエト……ソコハ見テイナイ、トカ言ッテクレナインデスカ!?」

「見てしまったという事実に嘘はつけない。責任はとる」

「ウ、ゥ……コンナ形デ責任ヲ取ラレタクアリマセン。ルーシュクンモ脱イデクダサイ!」

「何故だ!?」

「ソウスレバイーブンデ、責任問題ハ有リマセン!」

「それはなにかが違うと思うぞロボさん!」


 という痴話喧嘩(?)をした後、一緒な場所に居る事が恥ずかしいのか、ロボはクリームヒルト達の所へ行き、ルーシュ殿下は追い駆けようとした所ローズ殿下に止められ、スカーレット殿下達の所へと大人しく戻っていった。

 ……しかし、綺麗だった、か。不特定多数な相手から言われれば良くない回答であるが、ルーシュ殿下がロボに対してなら良いだろう。ロボは自身の外見にコンプレックスを抱いているから、やはりある程度好意を抱いている相手に綺麗と言われるのは嬉しい事のはずだ。……身体も火傷や呪いの跡があり、見られるのを嫌がっているロボだ。目を逸らさずに褒められるのは嬉しいのだろう。


「うう……ごめんなさい……ごめんなさい……ラッキースケベイな事を……起こして……ごめんなさい……やっぱり帰ります……」

「フューシャ、貴女のせいではありませんよ。そしてラッキースケベイとはなんです」


 そしてこちらは先程の一件を自分のせいだと思って落ち込み帰ろうとするフューシャ殿下に、それを止めるローズ殿下。


「落ち着いてくださいフューシャ殿下。まずは一度下着を着直してからでも遅くは有りません。その格好のまま歩くのは勇気がいりますよ?」

「う……メアリー先輩……それは……そうだけど……」


 そしてさらにこちらは現在錬金魔法で下着を作っているメアリー。

 本当はクリームヒルト達と一緒の場所で控えていたのだが、事情を話してこちらに来て貰っているのである。


「でも私が……居たら……また誰かの衣服が弾け飛ぶ……!」

「大丈夫ですよ。ともかくフューシャ殿下はまずは着替えましょう――はーい、下着作成! ついでにカーテンを錬金! この中で着替えてくださいね、フューシャ殿下!」

「え……え……あの……このヒトが……独りだけは入れる様な……円形の……カーテンだけで着替えを……!?」

「ごめんなさい、素材が無くてこれだけしか作れなかったんです。さぁ着替えましょうフューシャ殿下!」


 メアリーはフューシャ殿下に錬金魔法で作った下着を渡そうとしつつ、同じくカーテンで仕切られた試着室のようなものも作り、中で着替えるように促す。なんだか楽しそうに見えるのは気のせいか。


「フューシャ、見られない様にしつつここで着替えるにはこの中しか有りません。むしろあるだけマシだと思いましょう」

「う……それは……そうだけど……!」


 これは……もしやメアリーもローズ殿下も、フューシャ殿下を別の事に集中させて、帰ろうという気を逸らそうとしているのだろうか。

 このまま帰ればフューシャ殿下は再び自責の念に囚われるだろう。そして将来婚約する際にここで戦いを行う場合に、先に帰ってしまい、また似た事が起きるのではないかという思いを残さないために……


「メアリー様。私の勘違いでなければ、これって“時間内に着替えないとカーテンが落ちますよ!”的なノリの奴じゃ無いかい?」

「え……落ちるの……!?」

「それも考えたんですが、流石にその機能を付けるには私の錬金練度は不足していまして。それに私も実際に見た事無い、昔はこんなのがあったという想像上の代物ですし、変に弄らない事にしました」

「練度が不足していなければ付けたのかい。でもそうか……メアリー様はリアルに番組で見た事無いか……そうか……」


 いや、どっちだ。というかなんだノリとやらは。日本(NIHON)では普通なのか。

 あとエクルが妙に落ち込んでいるのは何故だろう。時間内に着替えられず、フューシャ殿下の着替え中で慌てる姿を見たかった……という事では無いだろう。


「フューシャ殿下、落ちませんからご安心ください。ゆっくり着替えて大丈夫ですよ。戦闘が始まっても風で捲れる事も無いので安心してください」

「う……うん……分かった……」

「ではこちらの下着を――あれ、どうしましたクロさん?」

「クロ殿、フューシャ殿下に渡した下着が気になるのか? ……クロ殿はもっと大きいほうが良いのだろうか」


 男性陣が着替えるとあって、仕切りがあるとは言え近いのは良くないと思って静かに距離を取る中、クロ殿だけが去らずにメアリーが渡したフューシャ殿下の下着を見ていたので私は聞いてみる。

 とはいえ、これは揶揄いの言葉だ。恐らくクロ殿は「そ、そんな事は無いです」と言って恥ずかしそうに目を逸らすだろうと――


「ええ、とても興味があります」

「え」

「……え」


 思ったのだが、本当に興味を持っていた。フューシャ殿下もピタッと動きが止まり、ちょっと恥ずかしそうに驚いている。


「ま、まさか――私よりも大きいのが好きなのか、クロ殿!? 興味を持つのは嬉しいが……私だって頑張ればどうにか……!」

「落ち着いてくださいヴァイオレット。というより嬉しいんですか」

「クロ殿がそちらの方面を話すと明後日の方向に行くからな……何故か安心する」

「そ、そうですか」


 しかし不安もある。私のモノでは駄目であり、別の女性に行くのではないかと――はっ、まさか知ってしまったからこそ他に興味を――!


「この下着のデザイン……良いモノです。大きいとどうしても機能性とのバランスが難しくなるのですが……上手く落とし込んでいる……!」

「あ、そこなんですね」

「? ええ、そうですが」


 ああ、うむ。クロ殿はやはりそういった感じであったな。先程とは違う意味で安心した。


「そもそも錬金魔法って便利すぎますよね……俺が必死に刺繍したモノを一瞬で作るんですから……」

「でも下手をしたらボロッと崩れるんですよ。服だと……なんというか頭で構造を理解して、空中で刺繍と布構成を同時に脳内でイメージする、というのでしょうか。慣れて来てもちょっとした失敗で使いモノにならない布切れになる、なんてよくあります」

「そうなんですね?」


 フューシャ殿下がこれから着る下着をまじまじと見つつ(フューシャ殿下は何処か恥ずかしそうである)、錬金魔法についての解説を受けるクロ殿。……やはり服飾関連を知ろうとするクロ殿の目と表情は良いな。見惚れてしまう。


「それに微調整は出来ませんから、この下着もクロさんが縫ったモノと比べると着心地は今一つだと思いますよ」

「クロさんの作る下着……そんなに良いの……?」

「そういえばスカーレットも良いと言っていた覚えがありますね」

「ええ、クロさんは相手の身体に合ったモノを作りますよ。ブラも大きさや形に応じ、女性の胸ソムリエのように作ります」

「その言い方やめて貰えませんかね」

「そうだよメアリー様。クロくんは相手の身体を隅々まで調べつくし、相手を丸裸にする。つまり胸どころではない。女性物を作る時のクロくんは――女体マスターだよ」

「その言い方も止めて貰えませんかね!?」

「成程……つまりクロさんの作るモノを……身に着けると……クロさんに支えられて……包まれる……?」

「フューシャ殿下、その言い方もやめてください……!」

「そうですよ、皆さん。クロ子爵はただ女性の気持ち良くなるポイントを知っている、という事ですよ」

「カイハクさん、貴女まで……!」


 ……流石に止めたほうが良いな。これはいわゆるセクハラというやつなのだろう。

 揶揄われて慌てるクロ殿も可愛いと言えば可愛いが、私以外の女にクロ殿があのようにされるのは少し……いや、とても気に喰わない。

 醜い嫉妬心ではあるが、ここは我が儘で止めておこう――


「クロ様の服の素晴らしさは妻からも聞いております。とても――良いそうですね」

「っ!? は、はは、そうですか、そう言われるのは嬉しいです」

「はい。まるで違う付け心地だと。……クロ様が作られる下着を、身に着けながら、ね」

「は、ははは、そう、ですか……!」


 と、思ったのだが。無表情で詰め寄るクレールさんが着た瞬間、クロ殿の可愛い顔が違った表情に変わった。

 あれは……あまり見た事のない表情だな。………………なんだかそそられる。


「おーぅい。そっちの観客達ー、そろそろ私とエメラルドの愛とバトルが始まるんだけど、初めて良いー?」

「誰と誰の愛があるというんだお前」

「私とエメラルド!」

「やかましい」


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