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淡黄と金は同類同族同性質


 望まぬ結婚、晴れて自由の身。

 どちらも訳が分からない訳でも、意味が分からない訳でも無い。

 この状況と前の言葉でおおよその背景とこの場合の対象がなにかは検討が付く。

 しかしそのように表現されるのは、正直言うと癪に障る事が無いかと問われれば有ると答える。

 初めは確かに自由意思のない束縛された結婚だったかもしれないが、今は出会えた事も結婚出来た事もとても喜ばしく思っている。それに俺は今が束縛された身だとも思っていない。


「……第二王子が関与していたから、ですか」


 だが、腹立たしい事この上ないのだが、今は幸福なヴァイオレットさんとの結婚生活も、始まりはあのカーマインが仕組んだ事だ。

 あの嫌がる俺を眺める事を幸福とし、幸福な俺が失意のどん底に沈む顔を見たいからと凶行に走ったカーマイン。

 そんな男が“高慢な公爵令嬢をあてがう事でクロ()が精神的に疲弊する姿を見たい”という事で、婚約破棄されたヴァイオレットさんをこれ幸いと言うように結婚させたのである。結果的には想像と違ったため、幸福の絶頂な時に全てを奪おうとする方向にシフトしたようだが。


「そういう事だ。今の馬鹿弟子……メアリーほどではないだろうが、身分差がありすぎる。いくら問題を起こしたからとはいえ、基本的に公爵令嬢が男爵家に嫁がせんよ」


 さらに腹立たしいが、カーマインという男は王国内での立ち位置としては、割と発言権が大きな立場があった。……アイツはアレだが、能力だけは高かったから多少の無茶も出来た。

 ともかくどういった交渉術を使ったのかは分からないが、バレンタイン家を説得したか脅したかしてヴァイオレットさんを俺の元へと嫁がせた。そうでなければ俺が彼女を妻にするなんてまず無いだろう。


「ま、クロはゲームの世界であったからそういう事もあるだろう、と言うように思っていたようだが」


 ……うん、否定出来ないな、それ。

 正直そう思っていたし。俺って辺境の醜男扱いなのかと悩みもしたものだ。


「あまり責めるなゴルド。……私も男爵家に嫁ぐ事は、その程度の扱いなのだと思っていたくらいだからな。父にしては扱いが妙だと少しは思ったが……」

「お前は婚約破棄で呆然としていたようだからな。天才(わたし)には分からん感情だが、精神的摩耗というやつなのだろう」

「だが疑問に思わなかったからこそ今がある。そう思えばよかったことなんだろな!」

「やかましい」

「俺もそう考えると、あの時の考えは間違ってなかったと思います!」

「やかましい。お前らはあらゆる事を惚気につなげなきゃ死ぬ病にでも罹っているのか」


 なにを言っているのだろうかゴルドさんは。俺達はただ改めて思った事を再確認しているだけだ。当然の事を当たり前にあると思ってなにも言わないのはよくないからな!


「ともかく、国王陛下か女王陛下、どちらかが俺達の婚姻を破棄させようとしているんですか?」


 可能性としてはレッド国王か。

 俺達の間を引き裂こうという考えではなく、息子による無理な婚姻を解消させる、といった善意の可能性。だからゴルドさんも“明日の行動次第“と言ったのだろう。


「あるいは私の実家の方だろうか……カーマインという枷が無くなり、ヴァーミリオン殿下ともわがたまりが解消されて別の利用方法を……」


 あ、そういった可能性もあるのか。バレンタイン家が国王に進言して、ヴァイオレットさんをバレンタイン家に戻すという可能性。そして元は王族が関与しているから、国王陛下の勅命で解消を……という。

 その場合は国王の善意と違って、俺達が現在どれだけ仲が良いかを言っても無駄に終わる可能性が高い。


「残念だが、私が言える情報はここまでだ。後は明日凡愚共と話し合ってくれ」

「そうですか……情報ありがとうございました」


 これ以上の情報が聞けないのは残念だが、ある程度の心構えが出来ただけでも良しとしよう。

 そもそもこういった内容を仕入れているだけでも凄い事だ。もしこの情報が他に漏れ出ていたとすれば、クリームヒルトも手紙かなにかで伝えて来るだろう。そうでないという事は、ゴルドさんがこの情報を得て、俺達に善意で教えてくれたという事だ。その事に感謝をしなくては。


「しかし、俺達のためにわざわざありがとうございます。断片とはいえ、そのような秘匿情報を仕入れて教えてくれるなんて……」

「いや、別に断片ではなく大体の事は把握しているが、中途半端に言った方が面白そうだからここまでしか話さないだけだ。ようは面白そうだから来ただけだ!」

「アンタ本当に碌な事しねぇな」


 と、イカン。つい素が出てしまった。

 だが今ので大抵の相手に微笑み慈愛を見せるメアリーさんが、露骨に嫌な表情をする理由が見えた気がする。


「すいません、クロ様、ヴァイオレット様。この方はいつもこんなんなんです」

「死なないと治らないので、もうこういった災害だと思って頂ければ……」

「シュイとインが謝る事じゃ無いよ」

「ん、あれ。私コイツらに遠回しに馬鹿って言われた?」


 遠回しでもなんでもない罵倒な気もするが。

 まぁその辺りはシュイとインに色っぽい女性の格好をさせたり、この部屋に入るためにアンバーさんに化けさせたりとした代償とでも思っておけばいい。


「しかし、お前達も大変だな。騎士団とも関わる必要があるようだし、前世で悪い事でもしたのか?」

「善人とは言い難いですが、前世の分を来世(いま)まで呪われる事はしていない……と思うのですがね」


 ……不良時代に恨みは買っているだろうから、無いと断言出来ないな。

 というか、普通に明日騎士団と関わる事も言ってんじゃないぞこのナチュラル破天荒。


「それで、お前達はどうするんだ?」

「どうするとは?」

「明日望まぬ結婚が破棄されそうになったとしたら、だ。お前達で逃げようにも、息子と娘もいるだろう?」

「…………」


 ゴルドさんは俺達がどう答えるかを、その特徴的な虹色に変化する瞳で愉しそうに観察する。……この答えによっては俺達を“興味の無い対象”と見做し、今日のように絡んでくる事は無くなるかもしれない。

 ゴルドさんは愉快犯とも言える行動を多くする。

 それはまさに楽しいからやっている、やれてしまっている、という事が多い。そしてそれが原因で王国内では追われる立場となっていると言えるだろう。

 一応は善意の元、錬金魔法を他者を救うために使う事もあるようなので、悪人という訳ではないようだが。……ある意味ではクリームヒルトと同じように、天才が故に常人が楽しいと思う事を理解出来ず、愉しい事を見出そうとしているのかもしれない。そのために善行と呼ばれる事も()()()()()、というだけで。

 ……と、そんなゴルドさんの人となりはともかく、この天才錬金魔法使いの質問に対する俺()の答えは――


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