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さっさと進展しろよ by紺


「ぶっとべやこの裏切り者のクロ坊がーー!」

「危なっ!」

「クロ殿!?」

「え、なに!?」


 真正面から超スピードで迫って来た物理説教系シスターは、俺に目掛けて淡く光った拳を放って来た。

 なんだというんだ、一体。そして蹴りが得意なくせに拳とは舐められたものだ。どうせ来るなら得意なモノで来いというのに。

 シアンは俺が避けたことを確認すると、やはりこの程度は避けるかとでも言いたげにふっ、と笑うと身なりを正し何故急に拳を放って来たか説明をしだした。


「幸せそうに微笑むのが憎かった。それだけ」

「それだけ、じゃねぇ」

「安心なさい、峰打ちだから」

「拳に峰打ちもなにもないだろうが」


 淡く光っていたので治癒魔法も同時併用はしていただろうが、暴力は良くない。

 殴っても治せばプラマイゼロで良いよね! とかそんな理屈で相手を殴ろうとしないで欲しい。本気で殴ろうとしていたら避けられないだろうから、避けられる速度で来ているのは分かるが驚くには驚くんだ。

 ヴァイオレットさんは多少は慣れたみたいだが、クリームヒルトさんとはなにが起きたのか理解不能な表情している。


「ていうかお前、シャトルーズ卿と模擬戦していたんじゃなかったか?」


 お膳立てが完璧であったため俺は止めるのは諦めて、注目が模擬戦に行っている内にクリームヒルトさんに話しかけに来たのだが。


「ああ、うん。途中まではいい試合だったんだけど、何故か途中で動きが鈍ったから、隙を見てぶん殴ったら護身符の耐久を超えちゃったみたいで吐いたの。今は休んでいるよ」


 シアンが本気で殴ったとはいえ、護身符の耐久を超えて吐く衝撃って相当だぞ。シャトルーズも鍛えているだろうから早々には吐かないだろうし。

 というか動きが鈍った? すぐに疲れるような柔な鍛え方はしていないだろうし、一体何故……あ、もしかして。


「お前、当たり前だけどスリット入り()シスター服()で勝負したんだよな?」

「? 当り前じゃない。これが私の勝負服なんだし」

「あぁー……成程」


 つまりシャトルーズはシアンが蹴りなどのために大きく動いたせいで、際どい所まで見えてしまいそうになり動揺したのだろう。そういう方面の耐性はそこまで無かった気がする。


「どしたん?」

「なんでもない。というか介抱しなくていいのか?」

医者(アイくん)が診ているし、大丈夫。それになんか私が傍に居るの嫌がっていたし」


 なら仕様が無い。下手に弄らない方が良いだろう。

 ……面倒ではあるが、帰る前にシャトルーズには一言謝罪をしないといけないな。あれは教義によるもので露出趣味ではないのだと説明(フォロー)もしなくては。……いや、説明した所でそんなに変わらないか。穿いていないのにあの服を着ているという事実は変わりはしまい。


「という訳で中途半端に温まった所に丁度いい相手が居たから憎くてつい、ね。だから神様も許してくれる」

「という訳でもだからでもない。それ神様が許さないやつだ」


 七つの大罪の二つくらい犯している。元々シアンが守っているかと問われれば別問題だが。

 ところでシアンはなにしにここに来たのだろうか。まさか俺を殴る為だけに来たわけではあるまいし。有りえそうだが。


「それでさ、アッシュ君からの伝言。リバーズ(あの変態)の引き渡しに関して話があるらしいよ」

「先に言えよ」


 明らかに重要事項じゃないか。

 俺は溜息を吐きたくなるのを我慢し、ヴァイオレットさん達に向き直り言葉を掛けてからその場を去ることにした。シアンもアッシュの居る所に戻るというので、一緒に着いてくるようである

 そして二人は返事をして、俺達を見送る。まだ二人で話すことがあるようだ。


「じゃ、行くか」

「はいはーい。アッシュ君は教会前にいるから」


 俺は頷き、教会に向かって歩いていく。

 少し離れた所でふと振り返ると、ヴァイオレットさん達は先程見た時と変わらず楽しそうに会話をしていた。あのように楽しそうな表情を引き出せるクリームヒルトさんが少し羨ましい。

 すると俺が視線を向けたことに気付いたクリームヒルトさんは手を振って俺達を見送り始めた。それを見たヴァイオレットさんも真似をして恥ずかしそうに小さくこちらに手を振る。


「へいへーい、手を振っているんだから振り返せよー」

「やかましい。お前は一桁の子供か」

「でも振り返したら喜ぶと思うけど」


 ……気恥ずかしいが、俺も手を振り返すと、ヴァイオレットさんは何故かビクッと身体を震わせ驚いた後に、振る手を止め顔を俯かせた。

 そしてそれに気づいたクリームヒルトさんが背中に手を回し、なにかを耳打ちするとその状態のまま手を振り始めた。表情は見えないがヴァイオレットさんの顔が赤いのは分かる。成程。


「どう思う、シアン」

「ちゃっちゃと行って抱きしめてこい、もしくは見せつけてんじゃないですぞこの野郎的な言葉。どっちがいい?」

「どっちも却下」

「ヘタレ」


 やかましい。







「それにしても今日は暑いな」

「今日は多分涼しい方だと思うけど。……照れてるの? 一緒に居ることが幸せだって言われてからずっと顔赤かったし」

「なんのことだか分からないな。……ニヤニヤするな」

「してないよ。微笑ましく思っているだけだよ」

「同じだ。ところで何故急にあんな質問をしたんだ?」

「んー……そうだね。ヴァイオレットちゃん学園に居た頃と大分変わっていたから。結婚ってそんなに変わるモノなのかなーって」

「変わったのは確かだな」

「そっか。良かった。クロさんを大切にしないとダメだよ? 変態的扱いをしない旦那さんなんだから」

「どういう意味だ? あ、それとクリームヒルト。来月なんだが――」

「――そうなんだ。ということはヴァーミリオン殿下の他に……■■■■ちゃんにも会うんだね」

「……そうなるな」


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