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賑やかな食事


「くっ、はははは! だからイオちゃん途中でいなくなったんだ!」

「夫婦仲が良くて良いものであるな!」

「あはは、だねー。初々しいカップルみたいだよ」

「ぐ……悪かったな」

「悪くないよねー」

「うむ、仲良きことは美しきかな、といヤツだ」

「まぁ当の黒兄には気付かれてないみたいだけどねー」

「ほらほら、抜け出した感想を言うんだイオちゃん!」

「……結果的にシアンが照れて食器を壊したから成功だ」

「ぐふっ。わ、私の事じゃなくって……!」

「そしてその反応を見て、我が息子が我が娘候補に“私めもやります!”と詰め寄りその健気さに陰で嬉しそうにしていたから成功だ」

「がはっ。み、見ていたのか!?」

「あはは、容赦ないね」

「私だけを揶揄おうとするからお返しというやつだ。ところでクリームヒルト」

「なにー?」

「……いつもと様子が違うようだが……なにかあったのか?」

「…………」

「クリームヒルト?」

「知ってる? 宇宙の果てを探索する技術が開発されたとしても私達が住んでいる惑星の海底を調べつくす事は出来ないんだよ」

「ク、クリームヒルトさん、急にどうしたのだ?」

「これはスケールが大きいほど難解でなくなるという例えなんだ。けど全知は不毛で妄信は愚かなりやとするならば、無知に対する渇きはスケールが大きければ満たされやすくて――」

「り、リムちゃん、落ち着いて!」


「なぁカラスバ。私のメイクはどうだ」

「ええと……似合っています」

「ふふふ、そうかそうか! それで、私を食べたくはならないのか!」

「私を……? あ、もしかしてこの料理作ったのパールですか?」

「む? ああ、そうだ。よく分かったな。少し手伝った程度なのだが……」

「貴女の作る味は私は好きですから分かりますよ。とても美味しいですよ」

「そうかそうか! どんどん私が作ったのを……ん?」


「……カラスバ兄様、あれ聞かれるの何度目だろう……」

「私めの覚えでは……十八度めですね。ですがカラスバ叔父様は毎回照れてらっしゃる気がします」

「みたいだね。うむうむ、仲良きことは(ビつく)しきかな」

「……私もメイクしたら褒められるかな。……いや、気付かれなさそう」

「気付かれない……? あ、クリ先輩様は元々お綺麗なのですから、メイクをしても変わらずお綺麗で差が出にくい、という事でしょうか」

「……素で言ってるんだよね、この子。綺麗と言われるのは嬉しいけど……」

「彼の場合は裏が無いからね。素直に受け取っておいた方が良い。実際君は綺麗なんだから」

「?」

「……まぁ良いや。あと先輩様はおかしいから。叔母で良いよ。学園では先輩でも良いけど。別におばさん呼ばわりでも私は気にしない」

「分かりました。クリ叔母様先輩」

「混ぜれば良いってもんじゃ無いよグレイ君」

「……うん、それで良いよ」

「良いのかい」


「ほう……」

「ふむ……」

「ええと……シャトルーズにスカイ。俺のメイクはそんなに……変か?」

「いや、似合っていると思われる。ただ私はこの手の……メンズメイク? に縁が無かったので今まで見て来なかったのだが……こうして見ると興味深いと思ってな」

「シャルのお父様はそう言うのは絶対にしないからね。というよりは、こういう方面のメイクって私も見た事ないです」

「男性用メイクとは言っても演劇とは違う感じで、された俺も新鮮だったよ」

「……まぁ見た事ないのは私達がそんな暇があったら剣を振っていたのもあるがな」

「……私は戴冠式用とかに少しはあるから……」

「私も母様には少し教わった事はあるが……そんなものよりと剣を振るってたからな……」

「確かにメイクより男に負けないようにと身体鍛えたり部位鍛錬とかやってたから……」

「俺もあまりないし、このメイクはクロ達の知識によるモノだから仕様が無いモノだと思うぞ?」

「……メイクを覚えとけば、私も変わっていたんやろうか……ふふ、けども私はのくてぇ女やし、なんも変わらかった気がするんや……」

「方言が出てるぞスカイ……だが俺も少しは知識を入れた方が良かったのだろうか……コンテストでも服飾に興味を持てばもっと……!」

「……? なんで二人共疲れているんだ……? あ、これ美味しいぞ。二人も食べてみると良い」


「…………」

「ドウカシマシタカ、アッシュクン?」

「大丈夫、キノコが足りない? キノコ焼いて香りで満たされ快楽に支配されてみる?」

「ああ、いえ。なんでもありませんよミズ・ロボ。ああ、水を注ぎましょうか」

「イエ、貴方ニソノヨウナ事ヲサセル訳ニハイキマセンヨ。ソレニマダ大丈夫デス」

「そうですか。遠慮なさらずに言って下さいね? それとミズ・カナリア。その言い方だと危ういキノコを勧められてるみたいなのでおやめ頂けるとありがたいです」

「え、そうなの」

「そうです」

「というか、遠慮せずにとは言うけど、アッシュも遠慮せずに言ったら?」

「なにがでしょう、スカーレット殿下?」

「シャトルーズになにか思う所があるんじゃないかって話」

「……なんでも有りませんよ」

「ほう、ロイヤルな私に逆らうと言うのか。まぁ無理に話せとは言わないけど……ロボ、カナリア」

「ハイ?」

「どうしたの?」

「シャトルーズについてどう思う?」

「ソウデスネ……カンデスガ、何処カデ敗北ヲ悟ッテイルヨウナ……?」

「そうだよね。なんか前に学園を辞めて来たといった時からそんなんだよね」

「あ、やっぱりそう思う? アッシュもそう思うんじゃない?」

「……あまりそういった事を他の方に聞こえるように言わないでくださいね?」

「分かってるよ。この場四人以外は聞こえていないから安心して。まぁ、という訳でこの酒を飲みなさい」

「なにがという訳なんですか。アルコール強要はお止め下さい」

「大丈夫、お酒という名の麦の命の水だから」

「お酒ですよねそれ」

「ジャアワタシガ飲ミマス」

「私もー!」

「おー、さすがノリがいい! じゃあ飲もう。乾杯!」

「乾杯! ……ゴク、ゴク……ふぅ、喉越しが良いね!」

「乾杯デス! ……ゴク、ゴク……麦茶デスネ、コレ」

「そうだよ。というかこの国じゃロボは本来飲酒禁止だからね」

「うん、やっぱ麦茶は喉越しだよ」

「それは違うんじゃないでしょうか。というかミズ・ロボはその外装からどの様に飲んでいるのです……?」

「サァ?」

「え」


「~♪」

「ご機嫌だね、ハク」

「そりゃあそうだよシルバ。生まれて初めて料理をして、美味しいと喜んで貰えたんだ。嬉しいったらありゃしないよ」

「確かに、ハクの作った料理は初めてとは思えんほどだな。オレも言われるまで気付かなかった」

「ありがとうルーシュ! それになによりも一番は……」

「一番は?」

「こうして大勢で楽しく食事を楽しめるという事さ……私は食事はとらなくても大丈夫な性質だから、まともに食事も無かったし、あっても食べた反応を観察される感じだったから……」

「急に重いの言うのやめて」

「……すまないな。オレの先代がそのような……」

「確かに同じランドルフだけど、君がやったんじゃないし君を怨んじゃいないさ。それにこうして色んな人と会えたしね!」

「……そうか。そう言って貰えると助かる」

「そういえばさ、遊んだ時だけどなんで僕の魔力の話になったの?」

「ん?」

「クリームヒルトやスカイってその話題避けてるだろし、ティー殿下やエフは知らないし……聞けばハクが言ったって聞いたからさ」

「ああ、私が君の魔力を感じ取ったんだよ」

「ハクが? ……もしかして抑えきれてなかったのかな。大分コントロール出来てるから、エクル先輩レベルでも分からないと思っていたんだけど……」

「確かセイフライド家の魔力は……特殊なのであったか?」

「うん、まぁね。特殊って言うか、呪われているんだ。だから言い方に気を使わなくても良いよ。でも気を使ってくれてありがとうルーシュ殿下」

「いや、そのような……ともかく、ハクはその魔力を感じ取ったのは、やはり貴女の性質によるものだろうか」

「まぁそれもあるけど、その特殊な魔力は分かりやすいんだよ。私にとってはね」

「ハクにとって?」

「うん、だって私の魔力を分けて生まれた一家がセイフライド家だし。だから君、私の子供みたいなものなんだよ」

「え。……え!?」

「……そういった事は早く言ってやったほうが良かったのではないのだろうか……?」

「え? ……実は私は経験の無い経産婦なんだよっていう、奇跡の処女懐胎の表われなんだよって事……?」

「違う」


「……私は嫌われたのでしょうか、ヴァーミリオン兄様……」

「……何故そう思うんだ」

「なんだか避けられていますし、この席もクリームヒルトさんの場所から一番離れていますし……」

「席はロボのよく分からない機能を使ってのアトランダムだろう。好意は関係無い。……フューシャ」

「うん……ティー兄様は……思い切って……出し抜いて……プレゼントを贈った……けど……クソ雑魚のティー兄様は……あげた後の反応が予想外で……引き摺っている……」

「成程。だがフューシャ、クソ雑魚と言う言い方はやめた方が良い。ローズ姉さんが聞けば怒られるぞ」

「クリームちゃんから……教わった……言葉なのに……」

「アイツはなにを……まぁ良い。ティー、避けられているからと言って嫌いになった訳では無いのだぞ」

「そうなのですか?」

「ああ。好きだけど意識してしまってつい避けてしまう。そのような事もあるそうだ」

「ヴァーミリオン兄様……なんだか女心を……知ったように語る……メアリーさんに告白……成功どころかしてもいないのに……」

「フューシャ、今日のお前はなんだか口が悪くないか?」

「気のせい……冗談……」

「冗談を言えるようになったのだな……ともかく、気にし過ぎも良くないぞ」

「ですがヴァーミリオン兄様でしたら、好きな相手を避ける事は無いのではないですか?」

「当然だ」

「やはり避けられているのはよくないんじゃないですか!」

「……ヴァーミリオン兄様……」

「しまった……! ほらティー、これを食べろ! クリームヒルトが作ったものらしいぞ!」

「誤魔化さないでくださ――んむゅ! ……もぐ、もぐ……あ、美味しいです。これを本当にクリームヒルトさんが?」

「ああ。先程お前が居ない時に置き、ヴァイオレットがそのような事を言っていたから間違いない」

「そうなのですね。……私が居ない時にという事は、やはり避けて……」

「……ティー兄様も……ヴァーミリオン兄様も……女心分かってない……」

「何故俺もなんだ」

「……わざわざ持って来た事を……言ったからだよ……」

「?」

「……はぁ……」


 賑やかだ。

 とにかく、賑やかだ。

 今教会はとても賑やかで、食事も参加メンバーも豪華である。

 食事の内容自体は別に高級素材を使っている訳では無いのだが、料理の出来る女性陣や男性陣が腕を振るったので種類や量が豪華である。

 そして参加メンバーはまごう事なき豪華メンバーだ。

 王族や公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家。

 正式に爵位を継いでいない者も多いとは言え、この場に居る面子が集まっていると知られれば、なにかを企んでいるのではないかと勘繰られそうな面子である。


――でも、あまり気を使わなくて良くて気が楽だ。


 当然警戒とか最低限のマナーは必要だが、なんというか居心地が良いと言える食事場所だ。

 料理は美味しく、皆が話をして、誰かが誰かを恨んでいたりしている事は無い。

 騒がしいが、見ているだけでも落ち着くような空間である。


「『……凄い光景ですよね』」


 その光景を眺めながら食事を摂っていると、ランダムで決められた席で、隣に座るエクルが俺に日本語で話しかけて来た。

 本来他者の知らない別言語で話すのは警戒されるものなので避けるべきだが、他の皆は会話に集中して気付かないと判断しての小声での日本語なのだろう。


「『凄い光景とは?』」

「『王族の方と一緒に食事をするのも凄い光景ではありますが……あのゲームでしたら、主人公(ヒロイン)とか攻略対象(ヒーロー)とか悪役の令嬢とか悪役の殺し屋とかが一堂に会している訳ですから』」

「『……そうですね』」

「『当然彼らが違う事は分かりますが……はい、こうして皆さんが仲良く食事をしているという事に、驚きを禁じえません』」


 そう言いながらエクルはコップに入った水を一口飲む。

 飲んだ後息を小さく吐き、再び食事をしている皆を見る視線は、何処か寂しさを感じさせる。

 あの輪に入れないから寂しさを感じている、という訳では無く、入ってはいけないから申し訳なくなっている、という方がしっくり来るだろうか。


「『エクルさん……いえ、淡黄シキさん。気にしないでくださいとは言いません。ですが、そのように一歩引かれると返って周囲も困る時もあります』」

「『(シロ)様……』」

「『私も間違えた身なのです。……来たる時になにかを思う事はあるかもしれませんが、感謝をしつつ今を楽しみましょう』」

「『……ありがとうございます』」


 そんなエクルを見て、エクルとは反対の俺の隣に座るメアリーさんがフォローをする。

 基本的には俺も同意見だし、メアリーさんが言った方がエクルにとってもありがたいだろうからなにも言わずにおこう。


「『あ、そういえばふと思った事があるのですが』」

「『どうしました?』」

「『私、この世界が乙女ゲームのような、設定を持つ世界で良かったと思う事があるんです』」

「『?』」


 エクルのふと思い出したかのような発言に、俺とメアリーさんは疑問を持つ。

 確かエクル……淡黄シキさんは、ゲームやアニメはメアリーさんがやるから一緒に見ていたくらいで、他の転生者組と違ってあまり詳しくないとは聞いている。

 だがわざわざそう思うという事は、なにか俺達に気付かないなにかに気付いたのだろうか。


「『乙女ゲーム世界ではなく、ギャルゲー? 世界の異世界でしたら……女性はなんか露出の激しい服で、全裸に近い形で動き回るんでしょう? メアリー様が痴女らなくて良かったです……』」

「『偏見です』」


 俺とメアリーさんは同時にツッコんだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] と、常夏の国だったら露出度高くても問題無いし(震え声)
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