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露出すりゃ良いってもんでも無い


「エントリーナンバー04。白く細い、まさに妖精と称するに相応しい愛らしさと天真爛漫な美しさを兼ね備えるエルフキノコハンター! カナリア・ハートフィールドの登場です!」

「いえーい、なんだかよく分からないけど、急に呼ばれてお洒落できるというから着てみました、エルフカナリア、ここに推参でございます!」

「まったく趣旨を理解していない女性が来ましたー。むしろ理解出来ていないのが凄いですねー」

「あ、おーいクロー、グレイ君―! どう、軍服似合ってるー?」

「特定の誰かに対するアピールはやめてくださいねー。まぁどうですか、審査員のクロ君にグレイ君?」

「はい、お似合いですよカナリア様!」

「ふふん、当然だね。なにせエルフだからね!」

「ボタンはかけ間違ってるし、下は前後逆だぞ! というかどうやったらズボンの前後を間違えられる!」

「……エルフだからこの着方なんだよクロ!」

「エルフ関係無いわ! というかサイズも明らかに小さいし、そのままじゃボタンが弾け飛ぶぞ! あと帽子を貫通して生えているキノコを取れ!」

「お、本当だ。よいしょ、と。ふむ……良い仕上がりのキノコだね、流石私!」

「え、それお洒落チャームアイテムとかじゃなくって、直に頭から生えてるの」

「エルフですから」

「え、ええと……ともかく! クロ君の言う通りですね。サイズが少し小さい上に、ボタンのかけ間違いでちょっとパツパツですね……動くと破けそうですし、裏で着替え直して後で登場しますか?」

「私、背は高いですからねー。丁度良いサイズがこれしか……ふふん、でも私はヴァイオレットちゃんとかと違って胸は大きくないからね。動いてもおはだけハプニングは起きないんだよ!」

「その自信はなんなのでしょうね」

「残念だったね男性諸君、クロ!」

「そういう話をしているんじゃ――っ!?」

「あ」

「あ」

『おおー、はだけたー!』

『軍服前開きって良いよね! なんかエロい!』

『先輩、私達の軍服そういう風に見てたんですか』

「ふ、残念だったね――私の身体は隙を生じぬようにガード済みだよ! 名付けてキノコストッパー!」

「おー、男的には嬉しいでしょうが、謎のストッパーがあるとはいえ堂々とされると教育者として困るので隠させて頂きます。はい、このまま後ろにお願いしますね、カラスバ君ー」

「はい。……カナリアさん、谷間が見えてますから後ろで着替えましょうね」

「あ、はい、かしこまりましたカラスバ様。今すぐ――ふぼぁ!?」

「ごふぁ!?」

「カラスバ君にカナリア君!? ……おおう」


「はぁ、アイツは全く……」

「む、クロ子爵。俺はあの状況を知っているぞ。ラッキースケベイというやつなのだろう?」

「誰から聞いたんです」

「クリームヒルトだ。なんでもフューシャがよく起こすらしいが……」

「あ、それは私めも聞きました。あの状況を男は喜ぶとも」

「ククク……僕も聞いたよ。確か“とらぶるなりとさん”状態と言うらしいが」

「む、オレはメアリー女史から“ダークネス状態”と聞いたのだが」

「皆さんその言葉を忘れてください。…………」

「クロ。心配なら行っても良いんだぞ。カナリアもカラスバも心配なんだろう?」

「だ、大丈夫だよ神父様。覗き込んだ学園長の表情でなんとなく状況を察せるし。…………」

「……クロ子爵はどちらも大切なようだな」

「実の弟と姉のような存在のようだからな。短い付き合いだが、オレが見ているだけでも分かる程彼らを大切にしているようだ」

「……そのようですね」

「聞けばカナリア嬢はよくダークネスなトラブルを巻き起こし、ヴァイオレットと婚姻してなければいずれはそのトラブルで婚姻まで行くほどのであったとか」

「そうなのですね?」

「ルーシュ殿下。それ言ったヤツ教えてください。締めます」

「あ、私めですが」

「なに言ってんだグレイ!?」

「え、でも正直カナリア様はヴァイオレット様がいらっしゃらなければ母上になると思っていたのですが……」

「それはない。……あの姉のような存在を嫁になぁ……」

「ククク……僕もそう思ってはいたが、それ位にしておきなさい」



「エントリーナンバー05。美しき身体の代表格! 鍛えられたその肢体と美貌はまさに洗練されたと言うに相応しい美しさ! 騎士候補生スカイ・シニストラの登場だ!」

「……こんにちは。この場に立てる事を誇りに思います。分不相応ですが、参加する以上は頑張らせて頂きます」

「おや、固いですねー。折角スカート丈が短いのを着ているのに、固いとアピールできませんよー」

「み、短いユカタはこういうモノだから仕様が無いじゃないですか! 私に合うユカタがこれしか無かったですし、わ、私だってこんな女らしくない足をあまり出したくないんですよ……!」

「一朝一夕ではならない美しい足だと思うんですがね。というかその服本来短く無いですよ。君サイズでロングはあったはずだけど」

「クリームヒルト、騙しましたね!?」

「おっと、後ろに行こうとしないでくださいね。ですが、恥ずかしくともその服を着て、揃えたかったんですね」

「……なんの事でしょうね」

「なんの事だろうね。さて、感想を聞きましょうか。審査員のクロ君、彼女の服について一言どうぞ」

「な、何故(なんで)そこでクロを聞くんです()!?」

「えー、偶々目に入っただけですよ。ともかく、クロ君。審査員として彼女の服はどう思う?」

「はい、とてもお似合いだと思いますよ。その服はスカイのような女性に最も似合う形で作られていますし、スカイのよう女性が着ると、まさに大和撫子、という表現がしっくりきますね」

「ヤマトナデシコ?」

「あ、ええと……上品で美しく、内面に凛としている強さがある女性、という意味です」

「おおー。随分と褒めるんだね」

「スカイを見ると自然と思いついた言葉ですよ。ですからスカイ、恥ずかしがらずに堂々として良いと思いますよ」

「わ、私の足にこの服の丈は似合いますか……?」

「? 足は関係無い……事も無いですね。この美しさを競うコンテストにおいては、今のスカイは気にしている足も含めて、その服を着る事で女性としての美しさが際立って素晴らしいと思いますよ」

「う、うぅ……」

「当然普段の凛々しき騎士候補服や学園服も良いですが、今の服だと可愛らしさも出ていて良いですね」

「かわっ!?」

「はい。美しさと可愛さがあって、クリームヒルトも分かってそうしたのでは――」

「スカイ・シニストラ、アピールタイム等はすっ飛ばしてここまでとさせて頂きます! では!」

「え、スカイ!?」

「む、これは……下手に触れない方が良いかな。そう思わないか、観客の諸君!」

『そうですねー!』

『なんだかよく分からないけど、褒め殺しに弱いんですねー!』

『スカイ可愛い!』

『筋肉……曲線美……はぁ、はぁ……!』

「なんだか色々ツッコミたい言葉が聞こえたけど、次行こうか!」


「な、なんだったのだろう。もしかして変な事言ったかな……セクハラ的なコンプライアンス関連だったかな……」

「……クロ子爵」

「なんですかヴァーミリオン殿下……って、なんで皆俺を見てるんです。なんでグレイ以外妙な目で見るんです」

「……さぁな。恐らくだが、その妙な目で見ている者は共通認識を抱いているだろうな」

「な、なんです。なんだと言うんですか!?」

「私めは分かりませんが……なんとなくですが、先程のクロ様はメアリー様と似た気配を感じました」

「グレイまでなにを言うんだ!?」

「ヴァイオレットと出会っていなければ、カナリア嬢かスカイか……どっちかだったとは思わないか、弟よ」

「そうはならなかった訳ですが、同意見ですね」

「なんの話だと言うんですか!?」

「クリームヒルトちゃんのお言葉を借りるのならば……鈍感系ハーレムな主人公」

『ああ、何故かしっくりと来る』

「皆してなに!?」



「――さぁ、彼女の番を待った者も多く居るのではないでしょうか」


 本来アピールタイムなどが終わった参加者は邪魔にならない様にステージ脇に行くのだが、スカイさんは何故か裏に逃げて行った後。俺が審査員や一部観客(変装済みフューシャ殿下含む)に妙な目で何故か見られていると、司会であるノワール学園長が今までとは違う紹介の前振りをする。


「ある意味このコンテストを開く要因となった三名の女性。その中で最も謎多き存在であった存在。――そう、白髪の美少女」


 その言葉に観客の皆がざわつき始める。

 このコンテストを開くきっかけとなった、最も美しいと言える三名の女性。

 一人はメアリーさん。彼女の人気と美貌を考えればあげられるのも無理は無い。

 一人はシュバルツさん。言動はともかく、彼女の美しさは間違いなく世界でも通用するレベルだ。

 メアリーさんの参加は観客としては予定調和であったし、シュバルツさんも謎の商人と言う扱いであったが、隠れてもいなかったし審査員であったので参加自体はするだろうと思っていただろう。

 だが、最後の一人は違う。


「謎の彼女だが――領主夫妻とその息子の協力により、参加する事が出来た」


 名前不明、出自不明、存在すら不確か。彼女の参加を諦めていた者もいただろう。

 その彼女の参加の確定に、観客がどよめいた。

 なにせチラッとしか見なかった、幻のような存在をこの目で見る事が出来るのだ。どよめきもするだろう。

 先程まで妙な視線で見ていた一部観客面子も、謎の美少女を呼べた事に俺やグレイを尊敬の目で見る。


「では登場願おう。そして彼女の名を高らかに叫ぼう!」


 そして続いてノワール学園長の言葉に、登場口に視線が一斉に集まる。

 ハクさんを知らない観客はメアリーさんやシュバルツさんと並ぶ美しさを楽しみにし。

 ハクさんを見かけた事がある観客は再び見る事が出来る事に血が目走り。

 先程紹介した時に見たノワール学園長は、彼女が着飾って登場する事にとても楽しみにしているように見える。


「エントリーナンバー06、ハクだ!」


 そんな皆が登場に楽しみにしている彼女が――


「ふふふ、皆ー! 美少女である私が登場だぜ、さぁ歓声を浴びせなさい!」

『おおおおおおおおおお!?』


 ――ホルターネック(童貞を)の背中が大きく(殺す)開いたセーター()を、前後逆にした状態で、下着もつけずに現れた。


「アウトだ馬鹿野郎が!」


 ハクさんは違った意味で歓声を浴びた。

 俺達ハクさんをよく知っている審査員と観客は全員で駆け寄って隠し、裏に追いやるのであった。


備考1 フェードアウトしたカナリアとカラスバの状況。

カナリアの下敷きになる形でカラスバが背中から落ち、はだけた部分が顔面に直撃しました。

痛みが引き状況を把握したカラスバは柔らかい部分が当たっていたので慌てましたが、柔らかい部分はキノコでした。


備考2 ヴァイオレットと出会っていなければ、カナリア嬢がスカイか云々

アリもしないイフではありますが、設定的にはヴァイオレットと出会わない場合でも、クロは二十一歳までにはどちらかと結婚します。


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― 新着の感想 ―
[一言] 姉分(姉貴分とは呼べない)と、妹分、のどちらかかー。 なかなか難しい選択だ。どっちもクロがママになる
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