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気付けの一発(:涅)


View.クリ



「……あ、あのー……」


 どのタイミングで話しかけてれば良いかは分からなかったが、話しかけないとドンドンと話しかけづらくなると判断した私は、勇気を振り絞って気配を出して話しかけた。


「ん? ああ、お前がクリ・ハートフィールドか」

「……は、はい、そうです……」

「いや、失礼ハートフィールド先輩。こうして話すのは初めてだな」

「……べ、別に先輩は、必要、ないです……」

「緊張はしなくて良い。立場上私は後輩だからな。先輩は付けさせてもらう。……だが、家名では兄君と被るな。クリ先輩と呼ばせてもらうが、構わないか?」

「……は、はい、構いません……」


 そして気配に気付いたヴァーミリオン殿下のイケメンオーラに少し引いてしまった。しかも名前で呼ばれる事にたじろいてしまう。ファンの子が居たら嫉妬で恨まれそうだ。

 こんなに近くで見るのは初めてだ。流石学園一と評される事が納得できるイケメンだけあって本当に顔が良くスタイルが良い。個人的にはもっと筋肉が欲しいが。

 けれど入学当初の誰も寄せ付けない雰囲気(オーラ)がある時と比べると、少し親しみやすい空気は感じられる。殿下だけの話ではないが……メアリーさんの影響だろうか。

 だけど先輩扱いはして貰えるが、言葉の端々から王族特有な言葉は感じられる。なんと言うか有無を言わさない威圧感、というモノを感じる。


「貴女がクリさんか。クロ殿から話は聞いているよ。学園で会話はしていないから、はじめまして、だな」

「……は、はい、はじめましてヴァイオレット……様」

「様は良い」

「……いえ、様をつけぬわけにはいかないので……ヴァイオレット義姉様でお願いします」

「それならば構わんが……」


 そしてこちらも顔が良い。

 ただヴァイオレット義姉様の場合の“顔が良い”は、美形、という意味も勿論含まれているが、良い表情をするようになっている、という表現がしっくり来ると思うのは何故だろうか。

 入学当初の殿下とは違う意味で誰も寄せ付けない時と比べると、柔らかくなっている気がする。体型の話ではない。

 クロ兄様との結婚生活が良い方向に作用している、という事なのだろうか。……ここまで変わるモノなのか。


「ああ、そうだ。スペード家と婚約が決まったと聞く。クロ殿の代わりにおめでとう、と祝福の言葉を贈らせて頂こう」

「……ありがとうございます」


 ……本当に変わるものだ。

 先程の殿下との会話でもそうだが、話しても威圧か業務的なものしかなかった“あの”ヴァイオレット・バレンタインが……このような微笑みを私に見せるなんて。

 やっぱり男性経験を得ると変わるというモノなのだろうか。学園に居た頃は(恐らくは)無かっただろうから、経験を得て大人になり余裕を持った。……よし、クロ兄様にどのような調きょ――ではなく、高飛車系を落ち着かせるとはどのような感じだったのか聞いてみよう。そして私も参考にしよう。

 って、聞くためには大切な事があるのであった。


「……あの、クロ兄様が……その……」

「クロ殿に関してだが。……先程の会話を聞いているのならば、ある程度予想は付くと思うのだが……」

「……先程エクル君からも、捕まったとだけ……今クロ兄様はどのようにされて……」

「そうだな。今クロ殿は――」


 そして私はクロ兄様の現状を知った。

 現在クロ兄様は教会の一室に居て、家族ですら会えない事。

 調査にきた騎士団の一部はクロ兄様を捕まえるために来たようなモノであるという事。

 そして、クロ兄様の逮捕に関与しているのはクリア教の大司教様であるという事。

 ……意味は理解できても、納得は出来ない。何故そんな事になったのか。


「……あの、私に出来る事が有れば力を貸します。クロ兄様のために……」

「申出感謝するクリさん。力を借りる時があれば借りるかもしれない。だが、今は学園の調査の方に集中していて欲しい。いずれ機を見て話す」

「……分かりました」


 これは私なんかでは頼りにならない……という事ではなく、今はそうするしかない、という事だろうか。下手に動いても問題があるのだろう。

 あと、気のせいでなければヴァーミリオン殿下も動いているような……いや、それは流石に気のせいか。先程の殿下の行動でヴァイオレット義姉様は助けていたが、あくまでもヴァイオレット義姉様相手であるから助けたのだろう。一貴族のクロ兄様のために動くなど淡い期待はしてはいけない。


「……わ、私はクロ兄様ほどではありませんが、運動はと、得意なので! 力が必要な時は仰って頂ければ率先して手伝いますので!」

「そ、そうか。クロ殿から話は聞いているから、期待しているぞ」

「……はい!」


 とりあえず私に出来る事だけはアピールしておこう。

 そして私の事をクロ兄様はなんと言っていたのだろうか。褒めて貰えていたら嬉しいなぁ……

 というかクロ兄様に会いたい。先程までは会う事が不安であったが、会えないと分かると途端に会いたくなる。

 あの優しい笑顔と声と鍛えている様子はあまり見ないのに引き締まった身体を見たい。……いや、身体を見るのは変か。ともかくクロ兄様に会うためにも、私は私が出来る事をしよう。


「クリ!」

「……カラスバ兄様?」


 私が気持ちを新たにしていると、カラスバ兄様から声をかけられた。


「ヴァーミリオン殿下、ヴァイオレット義姉様。会話を遮ってしまい申し訳ありません」

「いや、説明はしたから大丈夫だ。そろそろ他の学園生が行った所に案内しようかと思っていた所だ」

「それは私にお任せください。殿下と義姉様達のお手を煩わせるわけにもいきませんし、別の仕事もあるでしょうから」

「そうか。すまないが頼まれてくれるだろうか、カラスバ先輩」

「はい。行こうか、クリ」

「……は、はい」


 私に呼びかけた後、カラスバ兄様はヴァイオレット義姉様とヴァーミリオン殿下に挨拶をして、二、三個言葉を交わした後、礼をして私に着いて来るように促した。

 今の会話からして、既にあってはいるようだけど、いつ着いたのだろうか?


「……カラスバ兄様。クロ兄様の事は――」

「知っている。その件については歩きながら話すぞ」


 話を聞くと、カラスバ兄様は昨日の時点でシキに着いていたらしい。

 そして昨日の内にクロ兄様やシキの状況を知ったため、先程の様に既に話せる間柄になっていたようだ。

 なんでも隣街で偶然クロ兄様達と会い、そのまま……え、空を飛んできた? ロボがロボで、古代の失われた技術で家族皆で吹っ飛んで時間を短縮してヒヤウィゴー? ……なにを言っているのだろう、このカラスバ兄様は。

 冗談が苦手だと思っていたけど……あ、もしかして不安にならないように無理に冗談を言っているのだろうか。まったく、私を子ども扱いしているようだけど、私だってそれなりに大人なんだから。……変な意味ではない。


「意外というと失礼だが、領民の方々はクロ兄様が捕まったと聞いたら協力的でな。“そんな事ない! 相手が大司教だろうと許せん!”みたいな反応が多かったよ」

「……そうなんだ」


 とはいえ、あくまでもヴァイオレット義姉様が「信用でき、充分に逆らう力を持っている相手」と言える方から説明したらしい。ようはクロ兄様やヴァイオレット義姉様の友達と言える相手から話したのだろう。

 そうでなければ大司教相手に逆らう、なんて方は少ないだろう。

 だが、クロ兄様が信用できる相手か……一体どのような方なのだろう。それに今後手伝うとなれば味方は把握しておきたいし、カラスバ兄様に聞いて見ようかな――


「ククク、カラスバ君。ちょっといいかな」

「……!?」


 聞いてみようかな、と思っていると。

 見るからに不審者ですと言わんばかりの男性(?)が黒猫と共に現れた。


――……な、何者!? というか今カラスバ兄様の影から現れなかった!?


 もしかして敵なのだろうか。

 はっ、まさかクリア教の暗部!? 見るからに邪教徒のようだけど、教会の暗殺者をそのまま出したようなイメージだもの!


「あ、オーキッドさん。おはようございます。どうされました?」

「ククク……今朝はこれを渡しそびれてね」

「これは?」

「暗い場所でも少ない魔力で光るランタンみたいなものさ。おや、彼女は……」

「ああ、妹のクリです。先程調査の団体と一緒に到着いたしました。クリ、挨拶しなさい」


 え、なんでカラスバ兄様は普通に話しているの。そしてなんで私に挨拶を促すの。


「……ク、クリ・ハートフィールドです」

「ククク、オーキッドだ。こちらはウツブシ。よろしくね」

「ニャー!」

「……よ、よろしくお願いいたします」

「はいよろしく。ゆっくり話したいが、用事があってね。すまないがこれで失礼させてもらうよ」

「……は、はぁ……」


 よく分からないまま互いに挨拶をすると、オーキッドと名乗った男性は丁寧に礼をして去って行った。

 ……なんだか少し歩くと黒い霧の様に霧散したのは私の見間違いでは無いと思うけど……彼とあの猫は一体なんなんだろう。


「彼はオーキッドさんだよ。黒魔術師で怪しい格好をしているけれど、礼儀正しくて良い方だよ。クロ兄様がシキでも最も信用している内の一人らしい」

「は、はぁ……」


 カラスバ兄様が仰るのならば信じるが……それに見た目で人を判断してはいけない。見た目は大切ではあるが、決めつけは良くない。

 うん、あの方は良い方、あの方は良い方……


「そして一緒に居たのが彼の妻のウツブシさんだ。実はパンダなんだか、パンダではあるのだけどパンダでは無くて、自由に変身できるような女性らしいよ。変身は見ていないけど」


 なにを言っているのだこの兄様は。


「あ、そしてあっちで鬼気迫る勢いで歩いている男性が見えるか?」

「……あの、コーホー……と息を荒げている、渋い外見な御方の事? なんだか今にも周囲に襲い掛かりそうだけど、通報する?」

「しなくて良いよ。彼はクロ兄様の事で悲しんでいる我が甥のグレイ君を見て、積極的に協力してくれているブライさんという方だ」

「……グレイ君を見て?」

「ああ。なんでも“少年を悲しませやがって……万死じゃ生温い!”って意気込む子供が大好きな方さ。あ、もし武器が欲しければ彼に頼むと良いぞ。今ならすぐに最高品質な刃物の類は作ってくれる」


 本当に大丈夫なのだろうか。

 今にも「キシャー!」とか言って威嚇しそうだけど。


「お、あっちに女の子が居るだろう? あの子はエメラルドと言ってな。戦闘はともかく、薬に精通している凄い子なんだ。なにせ首都に居るトップな薬剤師と比べても遜色ない」

「……へぇ、凄い子なんだね。でも包帯巻いたりして、身体は弱そう……」

「ああ、だがクロ兄様の事を聞いて、今は毒を食べるのを我慢して俺達に協力してくれるんだ。口は悪いが、困ったらあの子を頼るといい」

「……毒を……食べる……?」


 なにかの隠語なのだろうか?

 それともマズい薬に手を出しているのではなかろうか。あの子も、ついでに先程から訳の分からない事を言うカラスバ兄様も。


「あの子は七歳の子供だけど、協力してくれる良い子だぞ!」

「……落ち着いてカラスバ兄様。どうみても成人男性だよ!」

「あっちはシアンさんだな。今は本来の身分を隠しているためあのような格好だが、本来は貞淑な女性なんだよ。元の職業的にそうに違いないんだ。元からああらしいけど!」

「……貞淑な女性は、ロングスカートにあんなえげつないスリット入れないよ!」

「あっちはカナリア! キノコの事は彼女に聞くといい!」

「……いや、キノコは今回役に立たな――ってカナリアさん!? なんで彼女がここに居るの!?」

「お、あの方はロボさんだ。空を飛んだり、今では復調してワイバーンも屠れるようになって来たらしいぞ。なんでも凄い魔法で空から撃ち落とすらしいんだ!」

「……確かによく分からない外見だけど! 落ち着いてカラスバ兄様! さっきからなんか目が虚ろだよ!」

「ははははは! なにを言っているんだ、俺は正常さ。ただちょっと変わった方々が居るなーって思ってはいるけど、クロ兄様が治めている素晴らしい地なんだ! おかしいと思う方がおかしいのさ!」

「……目を覚ましてカラスバ兄様!」


 シキの方々を説明して行く内に、カラスバ兄様の目が虚ろである事に今更ながら気付いた。

 だ、駄目だ。今のカラスバ兄様は受け入れようとしたが、受け入れられない事が多すぎて現実逃避をする事で無理に受け入れている!

 ここは一旦――


「……ごめんなさい、カラスバ兄様!」

「へ? ――ぐふっ」


 一旦落ち着かせるために、痛みも後遺症も残らない一発で正気に戻らせた。

 ……カラスバ兄様をこんな風にさせるなんて、シキってどんな地なのだろう……







「…………」

「どうかされましたか、ヴァーミリオン殿下?」

「……いや、彼女の婚約者だが、スペード家、といったな」

「はい、そのように聞いていますが。なにか問題でも?」

「スペード家と言えば、男女問わず変わった婚姻条件を付きつける……というよりは、認めない一家だと聞いていたのだが……」

「変わった?」

「ああ。……だが、彼女の様子を見る限り、噂であった、という事なのだろうか……?」

「どういった条件なのでしょう」

「俺の聞いた話では――」


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― 新着の感想 ―
[一言] クリの婚約者が出した条件、次回に持ち越しですか気になりますね。 カラスバはシキの住民の非常識に許容オーバーしたようですね。
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