デート、出来ない奴らの場合_2
「……それで、何故ここに居られるのでしょうか、スカーレット殿下……いえ、レット様?」
「ふふふ、ロイヤルな私が此処に居る理由? それは勿論――」
「スマン医者。お金は後で請求して良いから私はこの場を逃げ――」
「アイボリー君、彼女捕まえて」
「御意に」
「あ、くそっ!? そういえばお前王族には忠誠を誓っているんだったな!? は、離せ変態が!」
「俺が殿下の命に背いて離す時は死する時としれ。例えそれが触れたくもないお前を捕まえるという事でもな。絶対に離さん」
「クソが!」
「女の子がそんな荒っぽい言葉を使うんじゃありません親友のエメラルド!」
「お前に言葉遣い云々は言われたくない! やめろくっ付くな頬擦りするな!」
「っていうかなんで親友から逃げるの! 私、ロイヤル悲しい!」
「今のこの行動が理由そのものだろうが! やめるなら私も逃げん!」
「はは、断る!」
「…………」
「どうしたの、スカイお姉ちゃん。疲れた顔をして」
「ティー殿下といい、スカーレット殿下といい……言いたい事は有るんですけど、どうすれば良いか分からないんですよ……」
「ブラウン君。スカイ君は疲れているんだ。放っておくのが吉だよ」
「そうなの?」
「ええ、大丈夫ですよ。これは私の問題ですから……レット……いえ、スカーレット殿下! 質問にお答えください! まさかまた職務から逃げ出したんじゃないですよね!?」
「ふ、仕事はこなしたよ。休みを自主的に取れる程にはね」
「つまり勝手に休んでいるんですね」
「ちゃんと代役は立てたさ! 言う通りにしていれば、近しい者達以外は首都の外に出ている事が分からない計画を立ててね!」
「またですか……」
「また、という事は以前もあったんだね! というか凄いね――凄い計画性ですね!」
「カナリア、コイツに敬語は要らん。本物の第二王女は首都で働いているはずだからな」
「じゃあ普通の女として私と接してくれるという事だねベストマイフレンド!」
「やかましい! また一番上の姉に怒られるぞ」
「うぐっ……!」
「ひっ……!」
「ぐっ……!」
「何故変態医者とカナリアまでビビってるんだ」
「エ、エルフだから私は大丈夫……でもあの正論無表情攻撃が怖い……言い返そうとしても隙のない正論と無言の圧力が……!」
「ローズ殿下違うのです、違うのです、その感情の灯らない瞳で見るのはやめてください……!」
「私は大丈夫。ロイヤルな私、いける。反論は出来るように工作したから問題無い。問題無い……!」
「……何故コイツらはここまでビビってるんだ。お前ら分かるか? 私はあまり知らんのだが」
「? ローラン……じゃない、ローズお姉ちゃんって優しいよね。僕を撫でてくれたよ?」
「ほう、第一王女にしては優しき女なんだな」
「ローズ殿下は……クロが怒ってはいるけど声を荒げない時ありますよね?」
「? ああ、領主が本気で説教する時か。ああなるとシキの連中でも黙るやつだろう?」
「あの雰囲気が説教の時に常に出ている感じです」
「……………………」
「黙るほどなんですね」
「クロお兄ちゃんって怖い? 確かに変な所で寝ると怒りはするけど、怖くはないよ?」
「ブラウン君はそのままで良いんですよ。それが正しいんですから。クロは余程じゃないと怒らないですから」
「?」
「ロ、ローズ姉様はともかく! ともかく、話を戻そっか」
「話を逸らしたな。あともう逃げんから離せ」
「はいはーい。……アイボリー君」
「はっ。逃げようとした場合は拘束いたします」
「よろしい。で、ブラウン君に性的な事を教えて純粋な少年を汚す楽しみをしている所だっけ?」
「ほえ、僕?」
「そんな事してないぞ。ただの性教育だ。汚す云々とか、んなもんに興味は無い」
「そっかー。性教育って事は、スカイが実践教育で教えるという事なんだね!」
「……スカーレット殿下のご命令とあれば、スカイ・シニストラはこの身を捧げましょう。さぁ、ご命令を。ブラウン君にこの身をもってお教えします」
「どうどうどう、落ち着いてくださいスカイちゃん!」
「ごめん冗談。本気でやりかねないもんね貴女」
「義務感で自身を安売りしてはならないよ。そんなノリで生きているようなふりをしている女相手なんかにね」
「……おい、シュバルツ」
「シュバルツさん、それは……」
「悪いが取り消さないよ。スカイ君やアイボリー君の忠誠は分かるけど、生憎と私のような帝国人には忠誠心など無いのでね。個人的な好き嫌いになるんだよ」
「へぇ、それで私は嫌いって事になるんだ」
「そうは言っていないよ。外見は美しいし、好きな部類に入るけど、それだけだ」
「ふぅん、結構言うね。名前は――ってうわ、貴女改めて見ると本当に綺麗。うちの弟とかどう? 貴女なら美しさ一本で王女になっても誰も文句言わないレベルだし」
「王族の血が変態に染まるので止めて下さい」
「というかさっきまで自身を色々言われたのに良いんだね」
「それがコイツらしさだからな。……危ういが」
「エメラルドお姉ちゃん、なにか言った?」
「なんでもない。ほら、ジュースを飲め。奢るぞ」
「ふ、私の美しさに見惚れるのは自明の理。だけど君の弟君は別の女性に夢中のようだよ?」
「え? ああ、ヴァーミリオンじゃなくって、バーガンティーっていう末っ子。真面目だけど良い子だから――」
「うん、そっちの子、ティー君は今とある女の子に夢中だよ。」
「……え!? ウソ、誰、誰!? あの手を繋げば責任をとると言いかねないレベルの真面目だけど、女性関連は言い寄る女が鬱陶しくてにこやかかつ天然に女性を避けてたバーガンティーが!?」
「スカーレット殿下はティー殿下をどう思われてるんですか。……クリームヒルト、という私の同級生ですよ。笑顔が可愛い元気な子です」
「え゛。……あの子かぁ……」
「? スカーレット殿下、クリームヒルトをご存じで?」
「前にちょっとね……そっか、あの子かぁ……うーん……」
「どうかされたので?」
「ううん、なんでもない。恋をしたのなら姉としてロイヤルな応援しないとね」
「……?」
「……スカイ、耳を貸せ」
「どうしましたエメラルド?」
「……私の勘だが、今は分からんがレットとクリームヒルトは相性が悪いんだよ。同族嫌悪に近いだろうがな」
「同族嫌悪……そうなんですか……?」
「そうだ」
「そういえばティーがここに居るって聞いていたから、見つからないようにこっそりしていたんだけど……見当たらないんだけど、今なにしてるか分かる?」
「彼らならば今バーガンティー殿下がクリームヒルトをデートに誘い、護衛の者と共にデート中です」
「え、本当にアイボリー君!? 自ら誘うほどそんなに入れ込んでるの!?」
「はい。それはもう幸せそうでしたよ。……護衛の女性も含めて」
「へぇ、デートかぁ……弟も進んでるなぁ……というかデートってなにするの? 私デート経験無いから分かんないんだけど、貴方達なら分かるんじゃない? 私とスカイ以外は家の柵とかないし、そういう方面に詳しいんじゃない?」
『分かりません』
「え、なんでそこでブラウン君以外ハモるの」
「それはねレットお姉ちゃん。皆がどーてーとしょじょ、っていうやつだからなんじゃないかな? 単語はよく分からないけど、なんとなく関係していると思うよ」
「……まぁ運命の相手が見つかるまで身綺麗なのは良い事だからね。うん、良いと思う」
「そう言うお前は経験あるのか。デート経験もないんだろうが」
「デートってなにをするか話そうか!」
「話を逸らすな」
「逸らした時点で答えは言っているような気がするけどね」
「外野がうるさいよー。さぁスカイにカナリア! デートってなにをするか答えて!」
「え!? ……失礼致しました、お答えいたします」
「ふふふ、エルフとしての回答をご覧に入れましょうぞ!」
「おー」
「ぱちぱちー」
「デートと言えばやはり……!」
「そう、やはり……!」
「手を繋ぐ所からですよね!」
「はい! 触れ合う体温……うん、エルフ的にもエロくて温かいです!」
「おー、手を繋ぐってエロいんだー」
「ええ、まずは二人きりになった後、“よろしくお願いします”といって指を絡め合う。良いですよね!」
「そして逸れないように常に手を繋いでいて、色んな人に見せつけたり……!」
「食べ物を食べる時も分け合って、あーん、をしあって、食べ終わった後に自身のした事に羞恥が芽生えて、恥ずかしがったり!」
「相手が好きな服を着て、お披露目して反応を楽しんだり!」
「攻めてみてどうかと不安になるけど、喜んで貰ってそのまま盛り上がってキスしちゃったり!」
「だけど攻めようとした所と無意識に別の所で攻めてしまっていて恥ずかしくなったりとか良いですよね!」
「おお、良いね、他には他には!」
「相手が所用で離れた時に、幸福のあまり店員に“私の彼・彼女は世界一だろう”と相手の惚気を言ったり!」
「ナンパされて“悪いな、傍に居るのが大切相手なんだ”と追い払ったり!」
「呼び名の事で一悶着あったり!」
「一悶着って?」
「そうですね……知り合いと会って、親しく渾名で呼び合っているのを見て嫉妬するとかでしょうか?」
「それで不意に渾名で呼ぶと良いよね!」
「あ、良いですね! あと他には……服がトラブルで濡れて、乾かすまでどうにかするとか……」
「あ、雪山で遭難したカップルが身を寄せ合うって本で読んだけど、そんな感じも良いよね!」
「良いですね。仄かに感じる体温や、普段見ない肉体に異性なんだと自覚して急に恥ずかしがったりするとかも良いです!」
「おー、デートってそんな感じなんだー」
「な、なんと……ロイヤルな私でも思い浮かばないデートの数々! もっと聞かせて!」
「良いですよ、ドンドン話していきましょうか!」
「皆で話しましょう!」
『おー!』
「……なぁ医者と露出狂」
「……なんだ薬師」
「美しき露出狂と言ってほしいな」
「私だけが思っているかもしれんから問いたいんだが……そんなデートをする連中っていると思うか?」
「そんな初々しいというか奇特なデートをする奴らがいてたまるか」
「お前と気が合うのは癪だが、そうだよな」
「ああ、同意するのは癪だが、そうに違いない」
「分からないよ? クロ君とかシアン君とか、今頃デートしている皆は、案外そういう事やっているかもしれないよ?」
「ないだろう」
「ないな」
「……本当に分からないよ?」




