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デート、紺と雪白の場合_1(:紺)


View.シアン



「神父様、私とデートをして下さい!」


 そう言ったのが一時間前。

 今頃隣ではあるが、離れた街でデートをするクロやレイちゃん達、あるいはリムちゃん達のように、私もデートをしたいと思ったのだ。

 神父様は突然の私の提案に対して一瞬戸惑ったが、快く了承してくれた。

 私は嬉しさのあまりみっともなく少々飛び跳ねてしまったが、ともかくデートを出来る事が嬉しかった。

 付き合ったのは良いが、未だに恋人関係らしき事を出来ていない私達。多少意識はされてはいるのだが、元々一つ屋根の下であるので、正直そこまで変わりはない。……キスもあれ以来していない。なのでこれを機に恋人らしい事をしたいと思ったのだ。


「……だが、デートってなにをするんだ?」

「……なにをするんでしょう」


 しかしデートとはなにをするのだろう。

 生憎と私は経験は無いし、神父様も女性と付き合った経験が無いというのでないだろう。

 今日のお勤めは領主代行的なモノはあるが、そこまであるわけでもない。だが、クロ達のように遠出する訳にも行かない。なので自然とシキでのデートになるだろう。

 だが一緒に神父様と歩いた所で、それは今までも偶にやっていた散歩とか買い物の類ではなかろうか。

 ともかく私も後先考えずに誘ってしまったので、どうするべきかと悩んだのだが、シキの広場の中心で言ったのがマズかったのか良かったのか、私の発言を聞いた周囲のシキの皆々に、


「デートならまずはおめかししないと!」

「さぁさぁ神父様もシアンちゃんもお着替えしよう!」

「え、レモンにカナリア!?」

「え、ちょっと!?」


 などと言われ、無理矢理気味に宿屋に連れていかれた。

 そして神父様にはオーキッド(オー君)カーキー(カー君)。私にはカナリア(リアちゃん)レモン(レモちゃん)がついてそれぞれ別の部屋で着替える事になったのだ。私はレモちゃんの部屋である。


「これも良いんじゃない? シアンちゃん、シスター服以外だとパンツスタイルだし、スカートも行くと良いと思う。こう普段とのギャップで落とす的な!」

「でもスカートだと教義的にマズくありませんか? ノーパンスカートは良くないです。まぁ夫は喜びますので、男性的には喜ばれるかもしれませんが。恥ずかしくてデートどころではないのでは?」

「普段からスリットシスター服だから今更じゃない? その程度で羞恥とは思わないんじゃない?」

「そうですね今更ですね」

「おいコラ私を痴女みたいに言うなや」

『えっ』

「その反応やめなさい」


 など、着せ替え人形のような扱いを受けた。

 私の趣味らしくない、レモちゃんが趣味の乙女コーディネートを受けたり、男性を落とすのに最適とリアちゃんに言われて若干透ける上着を提案されたりした。なお透ける服は下着を着用出来ないので、上着が透けると胸がマズい事になるという理由で却下された。


「ではこれ、クロが好きな白いワンピース! 光加減で若干透けるやつ! こういう体のラインは分かるけど、ハッキリは見えないもどかしさが男性は好きだって聞いたよ! クロも好きだし!」

「それ夏服だよ。流石に寒いよ。というか私がそれを着たら透けて色々見えちゃうよ」

「ではこれはどうです? 私と敵対していた忍者集団の一つが着用していた、体にピッチリと密着した衣装で、ボディラインを強調したエロス溢れるスーツです」

「完全に体のラインが出てるよそれ!? 本当に忍者? の服なの!?」

「じゃあ東の国にあるこの服は? サイドスリット入っていて、シアンちゃんの普段と似ているよ?」

「いやいや、カナリアさん。ここは印象を変える必要があるので、背中が大きく開いたホルターネックセーターとかどうです? ほら、これです」

「うわっ、これって背中がら空きでお尻まで見えない!? あ、そうか、下にシャツを着るんだね。エルフには分かるよ」

「いえ、これだけ着ます。そして上の部分は少し見えますよ」

「そ、そうなんだー。……というか持っているのってもしかして……」

「ええ、夫が喜びますので着ます」

「相変わらず仲良いねっ! あ、これは――」

「それはですね――」


 ……この子達、本当に楽しんでるなー。

 リアちゃんもレモちゃんもこういう所は女の子なんだなーって思う。いや、私も女なのだけど。昔から私はこういうのはよく分からなかったからなー。そもそも修道服以外あまり着なかったし。

 ともかく、話が逸れて来ているので早めに戻そう。


「私にはレモちゃんが好むようなゴスロリとかかわいらしい服は似合わないと思うんだけど……」

「普段格好良いシアンちゃんだからこそギャップで行けるんだよ!」

「神父様も可愛いって思ってくれますよ」


 ……思ってくれるのだろうか。

 こんなフリルとかレースたくさんが付いて、可愛らしい色合いで、私が好むピシッとした服とは違う、なんだかフワフワした服。コットちゃんとかエメちゃん。あるいはレイちゃん辺りなら似合うとは思うのだけど……私には似合わないんじゃないかな……


――でも可愛いと言って貰えたら……


 だけどもしも着て可愛いと言って貰えたら嬉しい。

 自分に合わないからと諦めながらも内心では女の子らしい服に憧れている、という訳では無い。正直こういったレモちゃんの乙女趣味……というか、少女趣味な服は苦手だ。どちらかというと男性が切るようなタイプの方が私は好む。……のだが、神父様にこれが似合うような“女の子”として可愛いと言って貰えるのはとても嬉しい事だ。神父様にそう扱われるという事はこの上ない喜びである。それを思うと、着る事で言われるのではないかと淡い期待をしてしまう。


――でも似合わないと言われたら……


 対して私らしくない事も分かっている。イオちゃんであれば、クロは間違いなく「似合います!」とか言って甘々な雰囲気を作りそうだが、私の場合は微妙だ。

 普段着ないだけに反応が怖い。合わないと思われてしまっては、初デートがそのまま羞恥として身悶える事となってしまうかもしれない。


「……ごめん、レモちゃん。流石にやめておく。反応が怖いし、その……こっそりリサーチして、反応が良かったらその時貸してね……?」


 かなり悩んだが、私は着ない事にした。


「構いませんよ。ですが、ワンポイント程度なら良いのでは? おめかしは大切ですよ」

「そうだね」


 ワンポイント。ようはリボンを一つだけ付ける、と言った程度だろうか。それならば良いかもしれない。そして反応が良けれ着るのも良いだろう。

 ……その時はクロに頼んで私に合う服を作ってもらおう。確かこの服もクロが作ったもののはずだし。流石にこの年齢であんなお人形さんが着るような服を着るのは恥ずかしい。……いや、レモちゃんの方が年上なんだけどね。


「ではシアンさんに合うリボンは――」

「にょべぁあ!?」

『!?』


 レモちゃんが私に合うリボンを探していると、唐突にリアちゃんが服に足をとられてこけて、なにかに捕まろうと手を伸ばした先にクローゼットの取っ手を掴み、そのままクローゼットの扉を勢いよく開けた。……相変わらずドジなようである。


「大丈夫、リアちゃん?」

「イタタタ、うん、エルフだから大丈夫!」

「エルフ関係無いよね。――って、あれ、これって……?」


 勢いよく開けられたクローゼットの中。レモちゃんのプライベートな場所だから見ないほうが良いと思ったけど、ふと中にあるとある服が目に入る。

 この国ではあまり見ない色合いと布の、どこか目を惹く意匠な服。


「レモちゃん、これって……」

「え? ああ、私の祖国の服ですね。クロさんに再現して貰ったんですよ。偶に着ると落ち着くので――あ、そうですね、これは……」

「どしたの?」

「……シアンさん、これ着てみますか? これは本来シアンさんの普段の服装に合った服ですし」

「?」


 それはどういった意味だろう。私とリアちゃんは目を合わせて、互いに疑問符を浮かべた。







 その頃の男性陣。


「な、なぁ、この服は絶対俺に合わないと思うんだ! 服には疎い俺でも分かるぞ!」

「なにを言うんだぜ神父様。ギャップだ、ギャップ! 普段とは違う服装で女の子を落とすんだぜハッハー!」

「だ、だがサングラスに指輪に腕輪に……しかも胸元があき過ぎだろう!」

「良いか、神父様。この台詞を言えばその服は誰もが似合うようになるんだ」

「お、おう」

「繰り返して言うんだぜ? いくぞ――混沌が俺にもっと輝けと囁いている――!」

「こ、混沌が――カーキー、お前絶対揶揄ってるだろう!?」

「なにを言う。その自信の無さがイケないんだぜ。神父様、お前に足りないのは自信だ。だから輝くための言葉が必要なんだ!」

「そ、そうなのか……!? こ、混沌が俺にもっと輝けと囁いている!」

「その意気だ! さぁもう一度!」

「混沌が俺にもっと輝けと囁いている!」

「ブラーボー!」


「ニャー」

「ククク……そうだね、そろそろ止めたほうが良いね」


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― 新着の感想 ―
[一言] シアンのデート服。 会話の内容から察するに白系統と暖色系統のツートンカラー…。 即ち鏡餅のコスプレ(鏡開きの日付け付き)と見た。
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