迷惑かつ面倒_6(:偽)
View.メアリー
「……なるほど、今は女性ですが、メアリーさん達の錬金魔法の師匠であるゴルドさん、ですか。はじめまして、シキにて領主をやっておりますクロ・ハートフィールドと申します」
「よろしく頼むよー」
領主に挨拶をしたいとお師匠様(女性)に言われ、エメラルドを届けてから領主邸に向かい、今こうして応接室にてクロさんとお師匠様が挨拶を交わしていました。
私達を見るなり「なにか妙な事はされませんでしたか!?」とクロさんとアッシュ君が詰め寄ったりと一悶着はありましたが、ともかく今は私、お師匠様、アッシュ君、クロさん、ヴァイオレットというメンバーが応接室に居ます。なおチョコレートケーキの箱は気付かれる前に一旦冷蔵庫に入れました。
そして私やクリームヒルトの錬金魔法のお師匠様であり、「やってみたらなんか出来た」のノリで女性化した事を話すとアッシュ君は、
「……詐欺では無いでしょうね」
と、まずは疑いをかけました。
お師匠様はある意味賞金首ですし、女性化した事などから疑うのは無理は有りません。正直私も虹色に変化する瞳や、錬金魔法を目の前で見せられたり、過去の私を言われたりしなければ疑っていましたし。
……後は私に対して弟子と言って色々と親しそうにしたりとしているのもありそうですが。
「まったく失礼な男だ。我が弟子であるメアリーもこうしてお師匠様と仰いでいるんだぞ。お前は愛しの女が信じている私を疑うのか」
「愛しいからこそ騙されていないか不安になるんじゃないですか。そもそもやってみたいから女性になったなど……性転換はそう簡単に出来ないものですよ」
「おお、弟子も愛されているなー。関心関心。まったく、多くの男を誑かす女になったものだなー。王族に侯爵家に伯爵家に子爵家に特殊家系にその他諸々かー。…………大丈夫か? なにか活力が湧く薬でも錬金ろうか?」
「話を逸らさないでください!」
……なんでお師匠様に色々と私の事情がバレているのでしょう。
色々とその件に関して聞きたいですが、問いただすと色々と言われて聞かなきゃよかったという状態になるんですよね……一週間程度ですが、それだけでよく分かります。
「クロ子爵もなにか言って下さい。何故そんなにも落ち着いていられるんですか」
「慌てる必要は無いですよ。目の前で起きている事は事実であり、錬金魔法を扱う以上はこれ以上に無い、彼女がメアリーさんやクリームヒルトのお師匠様であるゴルドさんという証明です」
それにしても……慌てたりするアッシュ君に対して、クロさんは冷静ですね。領主として冷静でいられる大人な余裕、という感じでしょうか。
「ほう、私の性転換に驚かないのだね」
「ええ、女性になったんですよね。元々男性が女性になったという事はお湯をかければ男性に戻るはずです。それだけのはずですから」
「は?」
「クロ殿、落ち着いてくれ」
いえ、落ち着いていませんね。冷静を装っていますが、恐らく現実逃避をしています。
「お湯をかければ男に戻る……面白いなその発想。試してみる価値はあるだろうか……」
「止めて下さい! クロさんもお師匠様に不用意言わないでください、本当にやりかねないですから!」
「え、ええ、ごめんなさい!」
水をかけると女性になるとかいう発想を最初に抱いたあの方は本当に凄いですが、お師匠様は本当に実現させかねないですから。「この入浴剤を溶かすことで再現したぞ!」とか……考えるのはやめましょう。シキの温泉で実験しかねません。
「お師匠様! なんの御用でシキに来たのですか!?」
「ん? ああ、そうだったな」
変に実現させようと考える前に、私は話題を逸らすと言いますか、本題を聞きます。
聞けばアッシュ君達にもシュイとインを使って試す様な事をしていたと聞きますし、なにをしようとしているのでしょうか。
するとお師匠様は思い出したかのような反応を示し、クロさんの方を向いてにこりと微笑みます。
「?」
それに対してクロさんも疑問を抱きながら微笑みを返します。その様子に嫉妬するべきなのかどうかヴァイオレットは悩んでいました。
そして目を開き、虹色の綺麗な瞳でみつめると――
「クロに会いに来たのだよ。――好きだ、付き合わないか」
『!?』
顔を近付けて愛の告白をしました。
無駄に顔が良く、手を顎にやる顎クイ。ある意味ヴァイオレットと近しい格好良い美しさがあるお師匠様(女性)がクロさん(妻子持ち)を誘惑しています。しかもヴァイオレット(現妻)の目の前で、です。
見た目は良いですから、少しはドギマギするかもしれません――!
「ご好意は嬉しいですが、私には妻子が居りますので。その申出には応える事は出来ません、申し訳ありません」
……ですが、クロさんは一切照れる事無くお断りをしました。強いです。
「なんだ、残念だ」
お師匠様はその答えに対し、食い下がることなく引き下がりました。
これだけ見ると冗談で言ったように思えますが、多分お師匠様は見込みがあれば誘い込んでいたと思います。なんとなくですが、そう思います。
「ゴルド。私は性転換はした事ないから分からないのだが、元は男性なのに男性に好きというのはどうなんだ」
「今は心も体も女なんだよ。正直女より男が良いという精神性になっている」
「……大丈夫なのだろうか、それ」
確かに大丈夫か気になりますね、それ。
ですがそれよりも気になる事は……
「(アッシュ君、聞きたいのですが……)」
「(小声でどうされました?)」
「(性転換後の肉体的異性愛は同性愛に含まれると思いますか?)」
「(私に聞くのですか。…………難しい問題ですね。含まれる……んじゃないでしょうか)」
アッシュ君は含まれる派ですか。
この女性が男性化しての男性との絡み、あるいは男性が女性化しての男性との絡みは同性愛になるのか。私的にはどちらでもよくとりあえず楽しむ派ですが、これは永遠と言っても良い課題です。相容れない議題ですからね!
「まぁ今のはともかく、本題なのだが……」
「冗談で私の夫を口説くな」
「すまないな。その件に関してはあとでお詫びをしよう」
あ、流石にお師匠でも悪いとは思うんですね。
「本題の一つなのだが、実はクロに頼みがあったのだよ」
「私に?」
「ああ、依頼というのかな。噂を聞いて依頼をしたいのだよ」
「内容によりますが、聞かせて頂きますか?」
「うむ、まずはそのためにも――」
お師匠様は応接室にある椅子に座り直し、本題を――
「クロ、今すぐ全部脱ぐから私の今の身体をじっくり見て欲しい」
『待て』
――言ったのですが、やはり碌でも無い事でした。
◆
おまけ 転生組にメアリーの問いを語らせてみた。
「性転換後の肉体的異性愛は同性愛に含まれると思いますか?」
「ああ、黒兄のPC内に入っていた“女性化したから男の親友と親しくする。男だったなら苦しみが分かるから相手しろ!”みたいな感じだね」
「白のPC内にあった“俺、元は男なのになんでこんなに気持ち良いんだ……! ダメ、近付かれると身体が……!”というやつだな」
「まぁそうですね。というかなんで普通に兄妹で相手のPC内を見ているんですか。というかアールかかっている類ですよね、それ」
「私的には徐々に精神が肉体と同じ性別になっていく過程が好きなタイプだからなぁ。ようは異性愛なのを自覚していくのが好きだから、私的には異性愛かな」
「俺は……ノリノリでいきなり元同性の相手をし始めたら同性愛だと思うけど、基本はクリームヒルトと同じだな」
「つまりは……過程ですね。私と同じですね。では性転換後の肉体的同性愛は同性愛に含まれると思いますか? せーのっ、で言いましょう。せーのっ!」
『同性愛!』
『異性愛!』
『…………』
「よし、語り合おうじゃないか」
「良いでしょう。とことん語り合いましょう」
「あはは――うん、分かってもらおうか」
備考
おまけの最後は誰がなにを言ったかはご想像にお任せいたします。




