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迷惑かつ面倒_4(:偽)


View.メアリー



「して、どのような者なのだ、ゴルドという錬金魔法使いは?」


 私のお師匠様の事を、話では聞いていますが実際に会った事は無いヴァイオレットが屋敷に戻る道中に私に聞いてきました。

 探しに行った方が良いのではないか、とヴァイオレット自身も探そうと提案してくださいましたが、探し回るにも、手掛かりはないのと向こうが動いてからの方が見つかりやすいという事でまだ探しはしません。下手に動くよりは、動いた痕跡を見つけて探した方が早いからです。それよりもチョコレートケーキを一旦置いた方が良いですからね。


「善良な方ですよ。ただ少々破天荒なのです」

「ほう?」

「そうですね。私も会ったのは一週間程度ですが、会った時の事を言うと――」


 強大なモンスターが現れ、お師匠様が討伐する事になりました。そしてモンスターごと飲み込む爆弾を放ち、モンスターを中心とした半径二十メートルの円状に爆発(私の見た限りではブラックホールに近いモノです)を起こし、周辺木々や地面を抉ってモンスターを亜空間に消失させました。

 抉られた地面でなにか出来ないかと領主に相談され、水を発生させる石を錬金魔法で作り、湖を作る事にしました。ちなみに湖を初めて見た私はテンションが上がって最初に泳ぐと、石が生み出した鮫に追われました。何故鮫が居ると言う問いにお師匠様は、『なんかやりたかったからやった。そしたら出来た』と説明不足を悪びれもせず言いました。

 錬金魔法で空を飛べる道具を作れると聞き、私が飛んでみたいと言うと私を担いでそのまま上空に投げました。そしてお師匠様に受け止められた私が何故投げたのか問うと『飛んだじゃないか。説明を聞かないお前が悪い』と言いました。アレは私が悪かったのかと、未だに納得できていません。

 惚れ薬を作れるかという依頼に作れると答え、出来たモノを服用させた相手は確かに惚れましたが、その効果は感染し、周辺が大混乱に陥りました。そして収まる頃にはお師匠様は忽然と姿を消していました。


「――という感じです」

「……そうか」

「あ、ちなみに爆弾などの危険物はなにやら古代技術(アーティファクト)を使ったらしく、二度と作れないらしいのでご安心ください」

「安心出来るか出来ないかの複雑な情報をありがとう」


 噂はあくまでも噂である、というスタンスのヴァイオレットですが、私の情報を聞いてどのような相手かを想像して少々頭を悩ませていました。噂ではなく私の情報に対してはそれなりの信頼を得ている、という事で良いのでしょうか。


「だが、あのシュイとインという者達は何者だ? 先程は良い子だとは言っていたが、クロ殿とアッシュに似ていたのは理由があるのだろうか」


 ……恐らくこの似ていた、というのは『相手がクロさんのふりをしていた』という考えすらしていないのでしょうね。似ているだけで別人だ、という、私の様に違和感とかそういう段階の話じゃないのでしょう。

 と、それよりも、彼・彼女らについてですね。


「彼・彼女らはいわゆる……人造生命体(ホムンクルス)です」

「ほむんくるす?」


 あ、ヴァイオレットが可愛らしく首をかしげています。なんでしょうこの可愛らしさは。というより色々と詳しいヴァイオレットもホムンクルスは知らないんですね。


「ようは母体や卵から生まれたものではなく、魔法によって作られた生命体……と言いましょうか」

「……待て、それは無理に創造した生き物、という事か? そういった類は生命を冒涜するとして禁止されているはずだが……」

「? あ、合成生命体(キメラ)とは違うんです。種族を合わせてヒトの手で作ったのではなく、一から生命を作ったと言いますか……」

「それも危ういと思うのだが……」


 はい、とても危ういです。

 ですがこの辺りの倫理面は正直私にとっても曖昧です。精霊や死霊、使い魔が正式な生命体として認知されているこの世界においては、前世の生死の価値観から見ると正直複雑な所がありますから。複数の生命体を混ぜたキメラのみが生命を冒涜する存在、という価値観は少々複雑ではあります。私にとっても複数の生命体を無理に繋ぎ合わせるキメラは善くない存在だとは思いますが。


「ですがシュイとインは物体に生命を宿した存在なんですよ」

「物体?」

「はい、液体金属を元にした生命体なんです。だから身体を液体の様に形を変え、金属の様に固める事で身体を自由に変えられるんです」

「ほう、それはすごいな」

「……錬金魔法で液体金属を素材にして、ハーブとか馬糞を入れて……人格を持たせてそして生まれたのが彼・彼女らなんです……」

「……本当に大丈夫なんだろうな」

「お師匠様曰く、“物体に喋れるように生命を宿しただけだ。そもそも何故金属が喋れないと思うのだ? 今こうして喋れているのは、この金属は意志を持つという証明にすぎまい。なら問題はあるまい”と言われて……」

「……そうか」


 私の言葉と表情に、ヴァイオレットは納得したような言葉と共に『ああ、理屈が通じないんだな……』という表情が見え隠れしていました。……まぁ初めて聞くと無茶苦茶ですよね。


「だが、ホムンクルス。というのは初めて聞いたのだが」

「そうなんですか? あ、そういえば私が名付けた時に、お師匠様にも“なんだそれ”と言われた気がします」


 その時はお師匠様がいい加減な方なのだと思っていました。

 ですがよく思いかえせば私が錬金魔法、錬金術で生成した生命体をホムンクルスと思っていただけで、この世界でもその定義が当てはまるかは確かめていませんでした。

 この世界の方々は実は知らない単語で――


『へぇ、ホムンクルス。私は話には聞いた事は有るけど、見た事ないから見てみたいな。可愛らしく付いて回る使い魔みたいな感じなのかな?』


 ……あれ? でもあのヒトはホムンクルスを知っていました。

 その言葉が違和感ないように受け入れ、私もその会話があったからこの世界でホムンクルスは認知された言葉だと思っていたはずです。

 あれは確か学園で……誰と話していた時でしたっけ……?


「……ん、あれは……?」


 私が妙な違和感に苛まれていると、ヴァイオレットがなにかを発見したかのように少し離れた位置を見ていました。

 私もその言葉につられ、思考を中断しヴァイオレットと同じ方向を見ます。

 するとそこには女性が倒れていて――


「ふ、ふへへへへへへへへ、良い、良いぞ……! この痺れは――はうっぅ! あの金髪の男め、なかなかいい毒をくれるじゃないか……ふへへへ……!」


 彼女の名前はエメラルド。毒をこよなく愛する素晴らしき薬師です。

 ……そんな彼女が、なんだか女の子として、というよりはヒトとしてマズイ表情をしていました。なんだかエクスクラメーションマークの代わりにハートマークが付きそうな声を出しています。危ういです。


「……なんとなくだが、件のゴルドと関係があるのは気のせいか」

「……出来れば気のせいだと思いたいですが、眼を逸らしては駄目ですね」


 本当に気のせいだと思いたいですが、お師匠様だと『喜んでもらえそうだからやった。安心しろ、死にもせんし後遺症も残らん!』とか普通に言いそうですから。

 ……ふぅ。数年も経ったのですから、少し落ち着いていて欲しかったのですがね……


「……まったく、せっかくクロ殿に喜んで貰えると思ったのだが……これでは渡す前にクロ殿の心労が増えてしまうじゃないか……」


 そしてヴァイオレットは可愛らしく箱を見ながら呟きました。……本当に可愛いですね、この子。


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