迷惑かつ面倒_1(:紺)
View.シアン
「話はまとまったか?」
両者の話に一区切りつき、もう大丈夫だと判断したのかリオン君は声をかけた。
私はそれを見て緊張から解けたようなエフちゃんに対し、もう大丈夫だと言うように背中をさすってあげる。
「言いたい事は色々あるが、決着したモノを今更蒸し返しはせん。だから今やっている依頼をこなすために見張りの交代時間だから、クリームヒルト。お前は休めとだけ言っておこう」
「あはは、そうだね! じゃあバーガンティー殿下、あっちの寝る場所に一緒に行こっか。邪魔が入らないよう、寒くないよう二人で身を寄せ合って……」
「え」
「ティーも見張りだ。冗談はそれまでにしておけ」
「あはは、了解!」
休む様に言われた後、閨に誘うリムちゃんをリオン君が視線を動かし呆れながらも慣れた様に窘める。扱いが既に分かっている、という感じだ。
とはいえ、今回の誘いは本気じゃ無いのは分かる。揶揄いに過ぎないのだろう。
私はそんなリムちゃんの様子を確認して、視線をリムちゃんが見ている方とは逆側を見る。
「でも、殿下達を見張りに私達が休む、って凄い状況だよね。普通逆だよね」
「まぁね」
私達は場所を変えようとしていると、リムちゃんは当然と言えば当然の反応をする。本来であれば私達が寝ずの番をするものである。身分差とかは苦手な私ではあるが、それでも彼らに対して不敬を働くものでは無く、大事に扱わねばならない位は私も分かる。
だから私とリムちゃんは少し離れて、火を中心にしてバーガンティー殿下とエフちゃんを挟み込む様に移動する。
「冒険者に王族もなにも関係あるか。この場に居るのは冒険者として依頼を受けている平等な者達だけだ。むしろクリームヒルトは昔からやっているのだから先輩だな」
「なるほど、じゃあ後輩立場の者として焼きそばパンを買ってきて。勿論奢るしお釣りで好きなお菓子買って来て良いよ」
「焼きそば……? それはともかくなにかが違う気がするな」
それでもリオン君は学園祭で初め会った時とかは微妙だったが、私は神父様の代わりとはいえ、今では冒険者として依頼をこなすようにもなっている辺り、意外と親しみやすい王族ではある。
イオちゃん曰く昔は他者を寄せ付けない雰囲気を持っていたらしいが、今ではこうして同じ目線に立つ王子様である。今の第一王子も第二王女も親しみやすい雰囲気はあるのだから、恋とかそういったモノが良い方向に作用しているという事なのだろうか。
そう思いつつ、私は座って固まりかけていた筋肉を動けるように解していた。
「あ、リムちゃん、これ忘れてるー」
「あ。私のバッグありがとう、シアンちゃん」
「……?」
「ティー。お前の雷神剣、持っているか?」
「え、ええ。持っていますが……」
「そうか。見張りにも大切だからな。柄に手をやって置け」
「……はい」
私は色々な素材が入っているバッグをリムちゃんに投げて渡す。
エフちゃんは私達の行動によく分からないまま視線を動かして交互に見、ティー殿下は言われるがまま武器を手にしていた。
「……さて。大丈夫、リムちゃんにリオン君?」
「あはは、だいじょうーぶ」
「問題無い」
「え……?」
私の確認の言葉に、リムちゃんとリオン君は戦闘態勢を整えた事を伝える。エフちゃんは疑問顔のまま、ティー殿下はその言葉と私達の配置に気付いて武器を構えた。
「そこに居る者達。――素直に出てこい」
リオン君が声をかけるのは、遮蔽物や茂みのある、誰かが影に隠れる事の出来る場所。
初めにリオン君が閨に誘うリムちゃんを諫めながら視線を動かして確認した場所だ。
――さて、鬼が出るか蛇が出るか。
隠れている気配は二つ。私が分かる範囲では、リムちゃんとティー殿下が色々と話し合っている最中にはそこに居たのは分かる。
ただ私達を襲おうと言うような敵意は無く、モンスターなどの気配でも無い。
言語を話すなにかの種族……という事は分かるのだが……なんだろうか、よく知っているようで、身近に居る存在のような気もする。それにこの気配の消し方は……
「えっと、申し訳ありません皆さん。敵では無いので武器を構えるのはよしてくださいませんか……?」
「報告があったんで来たんだけど、話しているのを聞いて入り辛くてな……」
「……黒兄?」
「……神父様?」
声の主は、よく聞く神父様とクロであった。
ああ、だからなんとなく知っている気配であったのか。恐らくはなにかの用事……報告があって私達の所に来たんだけど、リムちゃん達の会話が聞こえてこっそり近寄ったら内容的に出るに出られず、どうしようかと隠れていた……という所だろうか。
「申し訳ないです、私のせいで……それならもう大丈夫ですよ、出て来て下さって大丈夫です」
私達は構えを解き、出て来るようにティー殿下が促す。
報告とやらが気になるが、別件で居なかった神父様が来たり、クロが来るとなるとそれなりに重要な案件だろう。
だけど私は神父様にこうして会える事が嬉しくて――
「領主と神父が揃って俺達に報告とは、なにかあったのだろうか」
「ええ、少々気になる案件がありまして。申し訳ありませんが、至急戻って頂きたいのです」
「自分達は護衛を踏まえてここに来ています」
「なるほど、俺達の身分ゆえに身元が保証されているお前達が来たという訳か。話は……移動中に聞こうか。ティー、フュ――エフ。準備をしろ」
「はい、兄様」
「……分かった……」
嬉、しくて……
「クリームヒルトとシスター・シアンも……どうした?」
姿を確認してから構えを解いたリオン君は、話を聞いて特急案件だと思い私達に準備をするように告げる。
そして恐らく妙な表情をしている私とリムちゃんを見て、不思議そうに疑問を投げかける。
だけど私達はその問いに答える事は出来ない。何故なら私達も疑問を抱き、問いに答えられないのだから。
『誰?』
彼らは、誰なんだろうか。
備考 雷神剣
雷魔法が得意なバーガンティーが使う長剣。雷魔法の効果をアップさせる。
名前はアプリコットが命名したり、思春期的なモノで付けた訳では無い。




