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恋愛策略-男性陣の場合_3


「待ってくださいウツブシさん! 裸になるってどういう意味ですか!?」

「いや、だって猫のサイズから人間サイズになるんだよ? 服を着ていても破れるに決まっているじゃないか」

「そりゃそうですけど……」


 そこはこう、メルヘン的な理由で服を着ている事は出来ないのだろうか。というか魔法やオーキッドの黒魔術ならなんとかできそうなものなんだが。

 とりあえず今回はオーキッドが伸縮自在な服を用意(黒魔術により生成)し、変身? と同時に着れるように調整する事にはなったが。


「ていうか恥ずかしくないのか。夫以外にその……」

「はは、神父様。私は常に服を着ていないんだよ? 今更見られたところで、ねぇ?」

「うん、そうなんだけど……うん、なにか違うような……」


 うん、なにかが違うような気がする。

 ある意味常に全裸なのかもしれないが、猫としては毛に覆われている訳で……とにかく違う気がする。

 ところで、オーキッドは嫁の裸を他の男に見られても構わないののだろうか。あれかな、俺がドレス姿のヴァイオレットさんを誇りたい時があったように、己が妻の美しさにも誇りを持っているから自慢したい的な感じだろうか。


「だが突然の裸に驚くかもしれないからね。一応確認をとっただけさ」

「そうですか……」

「では改めて行くぞ――ウツブシ、メタモルフォーシス!」

「その言葉必要なんですか――うおっ、眩しっ」


 再び決め台詞的なモノを言うと、ウツブシさんは光り始めた。なんというか魔法少女の変身バンクのようである。


――さて、どうなる?


 それはともかく、俺は変身にワクワクしていた。やはりこの手の変身はワクワクを抑えきれないものである。

 俺の抱く猫が人間になるもののイメージは、イケメンだったり美少女だったり。愛くるしい見た目であったり。

 先程も考えたが人間と猫と交わりの比率や変身具合は物語によってまちまちだ。

 どのような姿になるのか楽しみだ。


「うぅ、ぐぅ、ぐぅうううおおおおおおお!?」


 ウツブシさんが叫ぶ。身体が軋む音がする。

 バキゴキバキ、となんだか聞いているこっちの方が不安になるような音が鳴り響く。

 ブチブチブチ、となにかが切れているような音が聞こえるが、なにが切れているのかは知りたくない。


「え、だ、大丈夫なのか!?」

「ククク……大丈夫さ」

「なんか危ない音しているけど!?」

「身体を大きく変化させるんだ。そりゃあ色んな所を作り変えるから、色々と音くらいするさ」

「そうかもしれんけども!?」


 もっとメルヘンチックに変わると思ったら生々しく変わるとは。ていうかなら何故光っているんだ。必要なのか、これ。


「おぉぉおおおおおおお!」


 俺達の心配をよそにウツブシさんの身体が段々と変わっていく……のだが、光っているためシルエットしか分からない。そのシルエットもなんか関節が複数あったり、腕らしきものが伸びたり、数メートルになったりと怖い。むしろシルエットだからこそ怖い。


「ククク……そろそろ終わるよ」

『…………』


 オーキッドの言葉に、俺達一同は息を飲む。

 こんな怖いものを見るかのような変身バンクは俺は見た事が無い。

 鬼が出るか蛇が出るか、さぁ、どのようになるのか。

 あと変身が終わりかけて光が収まり、代わりに煙が出ているのは何故なのか。大丈夫なのか、色々と。お陰でシルエットすら見えないぞ。


「……という訳で改めましてこんにちは。オーキッドの妻、ウツブシだ。よろしく頼むよ、皆」

『…………』


 そして煙から出てきて、俺達に挨拶をしたのは、確かに人間形態に近い白い髪の毛の女性だった。

 いや、正しくは白と黒だ。一部が黒いんだ。空五倍子(くろ)色の部分は耳らしき頭に着いている丸い部分である。


「ふふふ……どうだ、今まで見た事の無い姿に驚いたであろう」

『おお……!』

「…………」


 ウツブシさんは収まりかけている煙をバックに、腕を組んで何故か得意げにドヤ顔をしていた。 そして段々と姿がハッキリしていき――俺は薄々感じていたその()()に確信を持った。

 神父様とカーキーはその姿に驚愕している。俺もある意味驚愕はしているが、多分神父様達とは違う驚愕であろう。


「これが私の真の姿――そう、ウツブシ(ニュー)形態(フォルム)さ! かつて太古に滅亡したと言われる伝説の姿に驚いただろう!」

「クククククク! ああ、可愛らしい姿だウツブシ!」

「ああ、驚いたな。俺も今まで見た事の無い可愛らしい姿だ!」

「なんて事だ。こんな姿を見せられたら先程断られたのが更に惜しい! だがこれだけは言わせてくれ、美しいぞウツブシ!」

「ふ、ありがとうオーキッド、そして皆。そして見てみるんだ、クロも開いた口が塞がらないようだぞ」


 煙が晴れ、ウツブシさんの姿をハッキリと視認する。

 ウツブシさんの目の周りは黒い。隈などではなく、そういう模様なのだろう。

 後は服に隠れて良く見えないが手や肩部分、そして足の辺りも黒く、それ以外は白い。毛で白い部分もあるが、肌で白い部分もあるようだ。

 そう、まさにその姿は――


「パンダじゃねぇか!!」


 紛うことなきパンダであった。

 人間とパンダの混ざり具合は半々だろうか。なんとも可愛らしい姿ではある。あるのだが……なんだ、なにかが違うと俺の中で叫んでいる。見たかったのとなにかが違う!


「な――クロは知っているのか、私の中に流れる血が織り成すこの姿、太古に滅亡した伝説の種族、パンダを!」

「ええ、よく知っていますよ! (ビャク)好きでしたもんパンダ! 東京へ行った時燥いでましたもの!」


 パンダは(ビャク)のやつが前世では食べる以外で珍しく興味を持っていた動物だ。

 なんでも「色が黒と白で私達兄妹の象徴みたい!」という理由で好きらしい。いや、そんな可愛らしいエピソードは良いんだ。


「まさか猫な理由ってそれですか。大熊猫だから猫の形態になっていたんですか!?」

「な、なんの話だ?」


 確かパンダは漢字で書くと大熊猫とかだったはずだ。字面だけ見て日本政府が最大限の警戒態勢でパンダを出迎えたなんてエピソードがあるらしい。と、(ビャク)から聞いた。


「まさか猫繋がりで猫であったとは……予想外でしたが……」

「私の血であるパンダを知っているのか? 伝説の種族、愛らしい姿で敵を誘惑しながらも恐るべき獰猛さがあったため狩られ、表舞台では絶滅されたというパンダを……」

「俺の知っているパンダとは違いますね……表舞台?」

「ああ、裏では生きているのだよ。変身と言う術を覚え、世の中に忍ぶ事が出来るようになり、獰猛さを抑えられるようになったのが私達パンダだ。私の場合は猫の姿への変身を覚えた。ちなみに長時間パンダ状態だと暴れたくなるから長時間姿を維持するのは難しい」


 ますます俺の知っているパンダじゃないな。というかどんな歴史を持っているんだ、この世界のパンダ。なんでナチュラルに変身覚えているんだよ。


「ククク……ちなみにウツブシは閉塞的なパンダ社会に嫌気がさし、外に出てきたんだ」

「そして追われて怪我を負った私を、同じく故郷に見捨てられていたオーキッドが救ってくれたのさ。そして命の恩人であり、内面も外見も美しい彼に惚れたんだよ」

「ククク……それは僕も同じさウツブシ。美しき内面と外見に惚れたのさ……!」

「オーキッド……!」


 成程、よく分からないが仲が良いのは互いに似た境遇だったからだろうか。

 パンダ社会なんてワードを聞く事になるとは思わなかったが、とにかく確固たる絆が結ばれているようである。

 オーキッドの褒め言葉に顔を赤らめて、嬉しそうにし丸い耳をピコピコと動かす姿は可愛らしい。


「――ハッ、つまりそういう事か!」

「え、今の流れでなにを理解したんです神父様」


 そしてオーキッド夫婦の姿を見て、神父様がなにかに気付いたかのような反応を示した。

 なんとなくだが碌な事に気付いていないと思う。


「男女問わず、皆は基本可愛い姿が好きだ」

「まぁ差は有れど言いたい事は分かります」

「そして彼女、ウツブシの姿は可愛らしい。不思議と惹き込まれる」

「ええ、分かります」


 クリームヒルトがいたら今すぐ飛びつきそうな可愛い外見だものな、ウツブシさん。


「シアンも彼女を見たら惹き込まれると思う。だが、俺の外見は生憎と彼女とは似ても似つかない」

「……ええ、そうですね。あの、神父様。言いたい事が分かってきましたが、それは多分違うと思いま――」

「だからシアンに喜んで貰うために――俺がパンダになろう」

「目を覚ませ」


 神父様ってこんな明後日な方向に結論を出す御方だっただろうか。

 あるいは好きと言う感情を上手く処理しきれずにこうなっているのだろうか。恋は盲目、というしな。

 ちなみにこの時の神父様の言葉の意味は“着ぐるみを着る”的な意味だったそうだが、時間がかかるので止めておいた。

 結局の所俺が裁縫を教えて、シアンのために人形を作るという事で落ち着いた。

 まぁプレゼントを贈る、という点では良い案だとは思う。


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― 新着の感想 ―
[一言] 悲劇的伝説の泉の時点で気が付くべきだった・・・くっ私も読みが甘い!
[一言] 猫からパンダになるのか……(困惑)
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