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追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活   作者: ヒーター
9章:変わっていく日常と変わらない日常
424/1904

予想外想定外(:淡黄)


View.クリームヒルト



 私は、戦闘を楽しむかと問われれば楽しむ方だとは思う。

 どうやって相手を倒すかを直感的に考え、自身もダメージを追う可能性に常に晒されながら戦う。いわゆるそういったスリルに身を置くのは嫌いではない。

 ただそれはあくまでも強者との戦いに限るものではある。

 だけど……


「シャル、距離を詰めすぎるな、予備動作を見て攻撃だけは受けるな」

「分かっている、不用意には飛び込まない! お前こそ――」

「ああ。分かっている。それと上空に魔法を放った。誰かが気付けば合流も出来るだろう――ぐっ!」

「リオン君!?」


 こうして誰かと一緒に戦う時も、戦闘は楽しいものとは思えない

 自分が失敗すれば自分とは違う存在が傷付く。私と違って戦う事を楽しむことが出来る他者ばかりでは無いので、それを押し付けるかもしれないとなると気を咎めてしまう。

 故に今のような戦闘は早めに終わらせるに限る。


「大丈夫!?」

「っ、問題ない。羽を飛ばすとは……油断できないな」

「気をつけて。あの一枚一枚が当たり所が悪ければ致命傷になるよ」

「そのようだな」


 とは言え早めに終わらせるどころか、負けないようにする事すら厳しい相手なのだけど。

 牙は噛みつかれれば噛みつかれた部位は欠損を覚悟し。

 翼は飛ぶ事も出来ながら、羽の一枚を飛ばした攻撃は防御しなければ怪我を負い。

 甲羅は体を覆う強固な盾でありながら、敵を潰す矛にもなる。

 どれもこれも面倒だ。とういか適当合体的なモンスターなのに、それぞれの利点はキチンと兼ね備えているってズルくない? 私単独ならば楽しめそうではあるけれど……今は良いか。


「ヒット&アウェイで行こうか。数でせめて気を逸らそう。ダメージを与えられるかは別として、留めることは出来ると思う」

「……それしかあるまい」

「じゃあ――行こう」


 その言葉を合図にリオン君は魔法を展開させ、私とシャル君は一撃離脱を繰り返す。

 持っていたナイフを脆そうな部分に投げたり。

 シャル君が刀を振るったり。

 リオン君が詠唱と魔法陣を含めた高威力の魔法をぶつけたり。

 ダメージを喰らっているのかも分からない。けど休むわけにもいかない。


――カサスだと通常な攻撃はあまり効きはしなかったよね。


 別に全く聞かない訳では無い。ただ通常のモンスターを相手するような形では倒しにくいというだけだ。

 カサスだと主人公が作った毒で弱らせ、シルバ君の特殊な魔法で弱らせた後、シャル君の攻撃で甲羅の一部を破壊し、リオン君の……ヴァーミリオン殿下の自ら封じていた魔法で倒す事が出来る。

 倒し方としてはそんな感じだ。ようは覚醒イベント的な存在なのではある。

 が、今は覚醒イベントとかどうでも良い。

 倒さなきゃやられる。目の前に居るのはそんな存在だ。弱点は共通かもしれないので、意識するのは大切だろうけど。


「っ!」

「クリームヒルト!」

「大丈夫、当たってないよ!」


 キメラが魔法を私に向かって放ち、近くで爆発をする。

 私はなんとかそれを避けて、無事である事を報告する。


――アレは……


 そして避けた先で視界にとある花が入って来た。私はその花を避けるついでにその花に近付き、採る。

 この花はエメラルドちゃんに教えて貰ったもので、通常なら毒では無いのだけど、液体に混ぜる事で死には至らないが痺れはする微毒となる花である。

 私はそれを口に含み、噛み、大きく息を吸って――血と共に思い切り霧状に吐き出した。


『■■■!』


 ダメージは負わせなくて良い。このキメラにも目は有るのだから、単純に嫌がらせになれば良いのだ。

 足止めして、応援を待つ。その中で弱点でも見つけられればそれで良いし、ダメージを追わせられるのなら重畳だ。

 私達では倒すのは難しいのだから、今は応援を持って――


――あ。アレが、来る。


 不意に感じた危険信号。

 理屈なんて分からない単純に“マズイ”と感じる命の危機。

 私の血霧によって体勢を崩したと見たシャル君が、脆いだろう足を狙って攻撃を仕掛けようとしている。それを狙うかのように、羽の一枚一枚が分からない程度に魔力を帯びて放たれる。


「っ、この程度!」


 そしてそれを避けた所に、私が先程受けそうになった白い光の様な魔法が放出されるだろう。何故かは分からないが、そう感じた。


――魔法は羽で防がれる。なら……


 私は瞬間的に足に大きく力を入れ、羽を避けるルートを辿りキメラに向かって一気に近づく。そして顔の下あたりに滑り込む様に潜り込み、先程投げて地面に刺さっていたナイフを手にして、脆そうな首の付け根を狙い思い切り刺す。


『■■■■!!』


 刺されたキメラは不快な声をあげ、怯んでいた。

 ここなら攻撃は通るようだ。だけどこのままも居られない。怯んだのならその隙に今すぐ逃げてなくては。


『■』

「……え」


 逃げようとして、キメラの腹の部分が割れて黒い物体を吐き出した。

 何事か分からずとも、とにかく私は逃げようとして、


「Grr」

「ケルベ――っ!?」

「っ――!?」


 その黒い物体がケルベロスだと分かった次の瞬間には、ケルベロスが膨らみ――爆発した。


「クリームヒルト!?」


 爆風を受けながら、リオン君が私の名を呼んだのが聞こえた。


「っ、ぅ……なにあれ!? なんでモンスターを産んで爆発させてるの!? なに、神風特攻!? あんなの条約違反だよ!」


 なんとか無理矢理力の方向転換をさせ、爆風と共にキメラから距離をとった。

 そしてリオン君が居た所辺りまで、私の身体は吹っ飛んでいた。


「落ち着け、なにを言っているか分からないぞクリームヒルト! というか無事なのか!」

「うん、大丈夫だよ。ちょっと無理に力を入れたから足が痛いくらいだよ」


 リオン君は爆風で視界が晴れない中、私を心配してくる。

 顔は咄嗟に腕でガードしたけど、無理に方向を変えたから足に負担がかかった程度だ。

 それになんだか奇想天外な状況だったが、思ったよりも爆風自体は弱かったような……


「……あれ?」

「クリームヒルト、左腕が……!」


 無理に力を入れたから筋線維か筋を痛めているモノと思ったけど、左腕が折れているような感覚があった。先程まではアドレナリンかなにかで痛みを感じていなかったようだ。今も痛みは微妙だけど。

 後は痣からして、逃げる際にキメラの足か身体かなにかで攻撃されていたようだ。

 ……これはこのままじゃちょっとキツイかな。


「リオン君。攻撃の手を緩めないで。私はイケるから、身を守る事を考えて。さっきは逃げたけど、コイツは今対処しないと駄目だから。だから左腕程度で逃げたくない」


 戦力を揃えてから戦ったほうが良いとか、逃げるのも戦術の内とかは有るだろうけど。

 コレは放っておけば、いつ何時シキに災厄をもたらすか分からないモンスターだ。

 神の複合体が共鳴したからドラゴンなんてモノを呼び、蘇らせるなんて事は起こしたくない。だから早く倒したい。


「っ、分かった」


 一瞬動揺したリオン君だったけど、状況を判断してすぐに警戒態勢に戻る。

 視界が不良の中では相手もどう仕掛けてくるかは分からない。今はキメラを警戒する事が最良だと判断したのだろう。


「シャル、お前は無事か!」


 キメラからの攻撃は来ず、爆風による視界が晴れてきて、リオン君は私よりは爆発の場所からは遠かったけど、爆風に巻き込まれる距離に居たシャル君に声をかける。

 私も左腕を縛って動けるように治療しながら、シャル君が居たであろう場所を確認する。


「無事だ。……アイツは今気配を消している。が、逃げてはいないようだ。油断はするな」


 そして視界がハッキリして声がした所に居たのは、刀を構えている戦闘態勢のシャル君。

 ただ――


「シャル、お前傷が……!」


 ただ、シャル君は左目近くに大きな傷跡があって、左目を閉じていて。

 挙句には全身を怪我している痛ましい姿のシャル君が、そこには居た。


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― 新着の感想 ―
[一言] シリアス回。かっこいいです。 誰にとっての覚醒起点になるのか、これによってそれぞれの関係性や意識が変わるのかどうかとか気になるけど、なにより言いたいのは……! 戻ってこいほのぼのギャグ展開…
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