違う意味で面倒なタイプ(:灰)
View.グレイ
「カラスバだ。お前らの父親のクロ兄様の弟。という意味での叔父さんだ。で、こっちが……」
「……クリ。クロ兄様の妹。貴方達にとっての叔母さん。……私は子供を買わない」
「俺も買わねぇよ」
この方々はクロ様の弟君と妹君なのか。確かに改めて見ても、クロ様と似た特徴を持つ方達だ。目元とかそっくりである。
彼らは名前などは聞いていたが、こうして会うのは初めてである。先程の言葉から察するに、私の方の顔は知ってはいたようだが。
「申し訳ありません、先程はとんだ勘違いを……あ、グレイです。はじめまして、カラスバ様、クリ様。どのような方か、お話は伺っています」
「すまない、弟子……彼は他者から受ける言葉を素直に信じやすい性格でな。恐らく誰かが説明した事を鵜呑みにしたのだろう。――改めて、アプリコットと申す者です。貴方達の兄君には大変お世話になっています」
カラスバ様達の挨拶に対し、私達は先程の非礼の謝罪も含めて立ち上がって礼をし、挨拶をする。
私の勘違いのせいでアプリコット様に余計な言葉を言わせてしまった。気を付けなければ……。
「買うに関しては気にするな。悪意を持っていたのではなく、勘違いならば良いんだ。それとあまり堅苦しくしなくて良い。食事中だしな」
「……」
しかしカラスバ様達は特に気にする事無く私達に身振りで座る様に指示する。私達はそれを見てどうするか悩んだが、カラスバ様達も座ったのを見て改めて着席した。
「此度はどうされたのでしょうか? 話を聞く限りでは、カラスバ様達は私め達との接触を避けている、と聞いたのですが」
「まぁ、そうだが……」
クロ様から聞いた話では、カラスバ様とクリ様はクロ様との接触を避けていると聞く。ご両親であるブラック様とランプ様がクロ様をひどく嫌っているらしいので、少しでも接触するとひどく叱咤を受けるのだとか。
だから接触をしておらず疎遠になっていると聞く。ただし、カラスバ様達から返信をしない前提でこっそりと手紙が来ることは有るそうなのだが。
「色々あってな。ちょっと気になる話もしていたし、折角の機会だから話そうと思っただけだよ」
「……うん。私にとっては姪と甥。そして後輩だから。心配はしなくていいよ」
カラスバ様は少し気まずそうに視線を逸らし、クリ様はマイペースに手に持っていた珈琲を飲みながら接触による親に関しては気にするなと告げていた。
クロ様のご弟妹に関しては興味もあるので、心配しなくて良いのならば私は構わないのだけど……気になる話とはなんだろう? 先程の話と言うと……奇妙な言語だろうか?
「ところで。その気になる話とは違う事を聞きたいんだが……」
「はい、どうされましたか?」
「あの、だな。さっき……」
「……さっき私達をクロ兄様から話は聞いていたと言っていたけど、どんな風に言っていたの?」
「クリ、言葉を取るなよ」
「……言うのが遅いカラスバ兄様が悪い」
「ぐっ……」
カラスバ様がこちらの様子を伺い聞き辛そうにしたのに対し、クリ様が代わりに聞きたい事を聞いて来た。クリ様は静かに話されるお方であるが、言いたい事は言う性格なのだろうか。
と、それよりも、クロ様から聞いていたカラスバ様達の話と言うと……
「カラスバ様は勉学方面に関してとても優秀であり、色々な知識を話すのが上手くて聞く事が楽しく、綺麗で繊細な字を書く自慢の弟だと」
「そ、そうか!」
「クリ様は芸術方面に優れ、見ているだけで楽しくなる様な作品を作り、お料理も上手で自慢の妹だと」
「……そう」
私がクロ様から聞いた話を告げると、カラスバ様は嬉しそうな表情の後すぐに平静を保とうとし、クリ様のあまり表情は変わらないが、口角が僅かに上がっている辺り嬉しそうな感じはする。
「ま、まぁでもクロ兄様のせいで俺達は父様達の監視がきつくなったわけだし、ハートフィールド家の風当たりが強くなったわけだからな! 今更自慢の弟と言われても嬉しくもなんともないんだからな!」
「……そうだね。私もお母様の監視が厳しくなったし、好きでもない男性を何回も多く紹介されたからね……今更自慢と言われても、遅いって感じだよね」
「まったくだな!」
「……ええ、まったくね」
そしてその後、なんだか言い訳じみた言葉を言い始める。
なんだろう。私は相手の言葉の裏を読み解くのは苦手なのだが、今回ばかりは分かる気がする。
しかし外れていては失礼なので、アプリコット様にこっそりと耳打ちをして私のカラスバ様達の今の状態についての感想を言ってみた。
「アプリコット様、これ知ってます。素直になれないブラザーコンプレックス、というやつですね。実はクロ様が大好きなんでしょうか」
「今回は大いに当たっていると思うぞ」
おお、アプリコット様も同意してくださった。なんだかアプリコット様が「こういう類か……」みたいな複雑そうな表情をしているが、気にしないでおこう。
ともかく、カラスバ様達がクロ様達を嫌っていないようなので良かった。
「で、カラスバさんとクリさん。話したいのは我達も同じだが、悪いがこの後試験もあるのだ。時間はあまり……」
「ああ、悪いな。簡潔に話すよ」
「……我? ……私の姪は格好良い一人称を使う…………ずず……ふぅ、苦くて飲めたものじゃないな……」
アプリコット様がカラスバ様達に告げると、改めて気を取り直してこちらを見る。クリ様はなんだか「おお……!」というような感心した瞳でアプリコット様を見ているが、どうしたのだろう。やはり隠しきれない素晴らしさにあてられたのだろうか。
あと、苦いのなら何故砂糖とクリーム無しで飲んでいるのだろう。しかも何故飲み干してから飲めたものじゃないと言っているのだろうか。
「クロ兄様が奇妙な言語を使っていたという話だが……」
そういえばそのような話であった。だけど、今回の場合は少し違って、言語を使っていたのは私を見ていたかもしれない男性なのだが。
「ああ、いえ。使っていたのは私の方を見ていた男性が使っていた気がしただけで……クロ様が使われていた訳では無いのですが」
「でも、似た言語をクロ兄様も使っていたのではないか?」
……確かにそうだ。
聞いた事が無い言語のはずなのだが、クロ様が使っていた気もした。クロ様は元々多数の言語を使われる方ではあるが、その中の一つとして聞いたのだろうか? けれど、誰かと話をしていた時に使っていた言葉でない気もする。
『「邪竜。投影。直死。魔眼。二重NO極み」』
「――っ!」
そうだ。そういった言葉の類であった!
クロ様がアプリコット様と出会われ始めてから偶に呟いていた言葉。意味は分からなかったが、それと似た言語であったのだ。
「もしかしてと思って聞いて見たが、やはり君達も聞き覚えがあったか……」
「……クロ兄様はあまり使わなかったけど、私達は覚えているの。奇妙な言葉を使っていた、クロ兄様の呟きを」
「そして最近、似た言語を俺達は耳にした。誰かは分からないけれど、学園で男性の声でな」
「……それは、最近クロ兄様が治めているシキでモンスター被害があった後の事だったの。その話を学園で私達は聞いた時、同時にその言語を聞いたの」
「カラスバさん、クリさん。……なにが言いたいのだ?」
思い出したのは良いが、何故カラスバ様達は今それを言いだしたのだろうか。
単純に私の疑問に対し答えてくれたのならば感謝はするが、それとは違う目的があるような気がする。
「悪い、ハッキリと言おう。もしかしたらなんだが……」
カラスバ様達は、私達を真っ直ぐに見て。
「――クロ兄様は、シキでのモンスター被害の裏を知っているのかもしれない」
備考
読者の皆様はお察しでしょうが、クロが呟いた日本語には特に意味があった訳ではありません。魔法に関連して中二魂に火が点いただけです。当然聞かれたと知ったら黒歴史です。




