以下省略(:灰)
View.グレイ
「魔法の試験は二種類。各々が持つ魔法、あるいは補助魔法を我々に見せる事。魔法の同時使用や発動速度をアピールしても構わない。一分間の間に叩き込めるだけ叩きこむ事だ」
ヴァーミリオン様が同じサイズ程度の隣に立つ人形の肩に手を置きながら、試験の説明をする。
ただの試験の説明であるにも関わらず、試験を受けに来られた他の方々が見惚れていたりするのは身振りの一つ一つがヴァイオレット様のように洗練されているからだろうか。女性陣の中には頬を染める方も居られる。
アプリコット様は……頬は染めていないようだ。良かった。
「護身符は知っているだろうか? 知らぬ者は一定の威力を打ち消すものと思えば良いが、護身符と似た特徴を持つ魔法道具が人形の中に入っているから、壊れる心配は無い。だが、壊してやるという意気込みを持つ者が居るなら歓迎しよう。壊す者が後輩になるとしたら、先輩として安心して後を託せるからな」
ともかく、彼の所作は不思議とルーシュ様のようなカリスマ性を感じられる気高さが存在していた。……王族としての在り方、というやつだろうか。王族の男性の方々はクロ様やヴァイオレット様の事も有り好ましくなかったのだが、ルーシュ様などを考えると良い方々なのだろうか……?
「あ、ちなみに魔法の試験だから武器の持ち込みは禁止ね。補助魔法を使うにしても、自分を強化するのならいいよ」
「もしくは特殊な魔法を使えるのならばそれを使っても構わない。例えば……まずは実演だ。クリームヒルト」
「はーい」
ヴァーミリオン様がクリームヒルトちゃんの名前を呼び、返事をすると人形の前に立つ。
私よりも小柄で、先程は平民用制服を着ておられるにも関わらずヴァーミリオン様にも気安く話していた少女という事も有り、知らぬ者……一部貴族の生徒からは既に睨まれている。大丈夫なのか、というような視線に思える。
「彼女は錬金魔法という、様々な物を混ぜて別の物を作るという、特殊な魔法を使用する。今回はあくまでも“武器の持ち込み”が禁止なだけで触媒などは大丈夫だ。つまり今回の場合は――」
「えーい」
そして説明の間に錬金魔法を展開させ、空間に道具を混ぜてすぐさまなにか別の物を作り上げると、可愛らしい掛け声とともに人形に投げつけ――
「あはは!」
爆発した。
「……と、あのように特殊な魔法で作った道具の使用は可能だ。例えば地属性の魔法で岩の剣を作るなどだな」
「威力に関しては人形内部に仕組まれている測定値にて分かるから、各々自分に合ったアピールをするようにね! 例えば実演するけど、一分間の間に連続的に爆弾を――」
「やめろクリームヒルト、充分だ」
流石はクリームヒルトちゃん。あのような爆弾を作る事が出来、さらには連続作成も出来るとは。相変わらず尊敬できる素晴らしきお方である。……と、イケない。彼女は友達である。素晴らしき存在だとしても対等を望む方だ。尊敬は程々に、友として誇らしくだけ思っておこう。
……だけど周囲の皆様は、尊敬の念ではなくひいているのだろうか?
◆
「――次、025番。オリーブドラブ・コックス」
「は、はい!」
次々と試験を受ける方々が魔法を唱え、アピールしていった。
私は皆様が素晴らしい魔法を唱える事に目を輝かせつつ、様々なやり方で威力を出していく事が楽しくて仕方なかった。やはり学園というものは素晴らしいのかもしれない。
シキの方々とは違う素晴らしさである。
「――次、026番。グレイ・ハートフィールド」
「はい」
と、次は私の番だ。
アプリコット様の弟子として恥じのない試験結果を残さねば!
「(ねぇ、やっぱりあの子小さくない? というか幼くない?)」
「(なんでも私達より三つ下とか。学園長直々に推薦って噂)」
「(へぇ、天才児、ってやつかぁ……あれ、ハートフィールド?)」
「(うん、あのハートフィールド。ハートフィールド家唯一の問題児とされている男の養子だって)」
「(あんな可愛い子が……もしかしたら親から逃げるために飛び級を……?)」
「(可能性はあるね。彼自身も同じ、という事も有るかもだけど……)」
「(変態か暴力性があるかもしれないって事?)」
「(うん)」
私が呼ばれると、先程までの他の受験生を見る目とは違う視線が投げかけられた気がした。……あまり好ましくない視線である。クロ様がシキに来られた当初の住民の方々の視線を彷彿とさせるような視線だ。私もかつてはクロ様に向けていたので、とやかく言う資格はないのだが。
「(……変態の方だったら良いかもしれない。可愛いし。美少年だし。お相手願おうかな……)」
「(おいコラ痴女)」
あれ、なんだかブライ様と似た視線を感じる。何故だろう。
『「…………うん、改めて見ても美少年ですねぇ、あの子。この姿じゃなければ行ったのですが……」』
……? なんだろう。どこからか聞いた事の無い言語で話され、周囲の方々とはさらに違う視線を向けられている気がする。
こちらはブライ様と似たような、全く違うような……?
「準備は良いか?」
「あ、はい。どうぞ」
と、イケない。今は試験に集中せねば。
一分間の魔法試験。悔いの無いように、良い結果を残せるようにせねば。クロ様からもヴァイオレット様からも落ち着いてやれば良いと言われている。
アプリコット様からも変に張り切らない方が良いと言われた。いつもの様に、私の出来る最大と最速の取れるような魔法を唱えれば良い。
「では、はじめ!」
威力が高いほど良い。属性が多いほど良い。ぶつける魔法は多い方が良い。クロ様も言っていた「数こそ最大の暴力」だと。
「――ふぅ……【基本六属性同時上位魔法】!」
つまり……私が使える基本魔法六属性をぶつければいい。
では、行きます!
「え……もしかしてあれって六属性同時上級魔法使用!?」
「それって学園生でもトップクラスじゃ……!?」
なんだか周囲が騒がしいが、それ所ではない。
時間は一分しかないのだ。やれるだけやらなくては!
「【基本六属性同時上位魔法】【基本六属性同時上位魔法】【基本六属性同時上位魔法】……!」
「うわー、グレイ君凄いなぁ。クロさんから才能はあるって聞いていたけど、ここまでとはねぇ。うんうん、綺麗だね!」
「……あれは綺麗で済まして良いのだろうか。同じ魔法の連続だが……」
「【基本六属性同時上位魔法】……【基本六属性】…………以下省略! 略! 略!」
「あはは、ついに魔法名まで略し始めたよ! 凄いね!」
「…………ああ、凄いな」
なんだかヴァーミリオン様の諦めたような声が聞こえたのは気のせいか。
『「……え、あの子転生者? チート、チートなの? クロさんってもしかしてそっち系の能力でも授かっているの? ……メアリー様と似た境遇だったとかかな……?」』
……? やはり遠くで、妙な声が聞こえた気がする。




