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攻撃力過多、防御力脆弱


「あ……申し訳ない、クロ殿。今のは……」


 自身の心情が少し落ち着いて、どうにかヴァイオレットさん達に話しかけられるようになった時。我に返ったヴァイオレットさんが俺に謝って来た。

 それと同時に俺の右腕に抱き着いている形になっている事に気付いたのか、頬を赤くし慌てて俺の右腕を放した。もう少し抱き着いて貰っていても良かったんだけど。


「束縛が強いという訳では無くて、いや、強いのかもしれない事も無かずもがなでだな」

「イオちゃん。言葉が滅茶苦茶になっているよ」


 恐らく重い女と思われたくないのか、もしくは過去にヴァーミリオン殿下の事で束縛関連で厳しい女と思われたくないのか、あるいはその両方なのか、慌てて無茶苦茶な言葉を言い始めた。


「……いや、こういった言い訳は良くないな。すまない、クロ殿」


 しかし一転して冷静になり、こちらに謝って来る。

 謝って貰うような事は無いのだが、ここは素直に受け取るべきだろうか。

 いや、もしかしたら「束縛が強い=以前のヴァーミリオン殿下への叱責」のように、過去の事を思い出しているのかもしれない。束縛を強くし、要望を押し付けた結果が以前のような決闘騒ぎになったから、束縛を強いとまた逃げられてしまうと思っているのだろうか。……俺がそうなる事は無いのだが。

 しかし冗談とは言えスカーレット殿下に言い寄られていて、

 俺がヴァイオレットさんをフォローをしたのだが、する前にヴァイオレットさんが俺を真っ直ぐ見て、


「だが束縛が強いと言われようと、私はクロ殿が好きだから誰にも渡したくはない!」


 別の方向に開き直った!


「本気にならなければ、他の女性とも浮気は良い!」

「束縛気にしすぎてとんでもない事を言ってますよヴァイオレットさん!」

「最後に私の元に戻って来てくれるのならばそれで良い!」

「自ら都合の良い女にならないでください!」

「クロ殿は魅力的だからな、他の女性が言い寄るのも無理はない!」

「えっ!? あ、ありがとうございます……?」


 魅力的なヴァイオレットさんにそう思って貰えるのは素直に嬉しい。

 正直申し訳ないくらい高嶺の花であるので、釣り合わないから褒めて貰うのは――って違う、そうじゃない。


「じゃない、俺もヴァイオレットさんを魅力的に思っていますし、貴女が言い寄られるのも無理はないと思っています。ですが俺には本気にならずとも、別の男性と浮気されるのは耐えられません。前も言いましたが、俺が傍に欲しいのはヴァイオレットさんとグレイなんですよ。」

「ぅ……」

「俺だって独り占めしたいんです。ヴァイオレットさんだけがそう思っているとは思わないでください。分かってくれないなら行動で示しますよ」

「うっ……今は行動で示されると困るから……と、とにかく、ありがとう……?」


 俺が今すぐに抱き着くような仕草を取ると、ヴァイオレットさんは、

 うん、よく考えたら周囲に息子であるグレイだけではなく、殿下達や子供達も居たな。さすがにこの場で言いすぎたかもしれない。けれどヴァイオレットさんが暴走しかけたのを止めないといけなかったし、仕様がない事だ、うん。


「……エメラルド、といったか。領主夫婦はいつもあのような感じか?」

「暴走したら大体は。大抵はああやって毒と違った蝕み方をする空気を撒き散らすな」

「そうか。…………オレもロボさんと……」

「まずは会話できるようになると良いな」

「……であるな」


 ……なんだかルーシュ殿下に奇妙な目で見られているが、気にしないでおこう。

 いや、なんだか恥ずかしくなって来たな。グレイは仲良くなったとなんだか感動しているし、アプリコットはグレイの頭を撫でてるし、ブラウンは立ったまま眠そうにしているし。確かに周囲に人が居る中で行動で示すのは恥ずかしい。ルーシュ殿下のように愛の言葉も堂々と出来ればいいんだけど。


「うわー……ヴァイオレット、変わったな……私の知ってるあの子と全然違う……」

「イオちゃんは心配しなくても、いわゆる“自身の理想を、王族の義務とあり方という形に押し付けて相手を束縛する”という事は無いから安心して良いよ、レットちゃん」

「う、バレてた? クロ君は別に悪い子じゃないからねー。私の知っているヴァイオレットだと仏頂面で周囲をピリつかせるような性格だったし、正直引き離した方が良いとすら思っていたんだけど。あれなら心配いらないかな」

「でも心配していたのは、()()だけではないんでしょ」

「……どういう意味かな?」

「意味というか、クロの()()を心配していたのかな、って話」

「……ふーん、シスターだと相手の様子を見るのが上手い、って所かな」

「さぁ? 私は見えて、正しいと思ったら口にしてるだけ。少なくとも、クロの友として懐疑の視線を向けている相手に聞いているだけだよ」

「ふ、ふふ。シアン、だっけ。随分と面白い事言うね。私はただクロ君のハーレムを形成しようとしたただの第二王女よ」


 そしてシアンとスカーレット殿下がコソコソと俺達に聞こえないように小さめの声量で会話をしていた。

 とはいえ詳細は聞こえなかったが、所々の単語は聞こえてはいたが。引き離すとかハーレムとか。シアンが相手である以上あまり心配は無いが……


――ハーレムと言えば、メアリーさんは……


 ふと、ハーレムという言葉でメアリーさんの事を思い出す。

 あの乙女ゲーム(カサス)で言えば、今の季節はストーリー的にはとっくに後半入っている時期だ。

 別れる間際に「協力できることがあれば、協力する」とは伝えたが……メアリーさんは今頃なにをしているのだろうか。


「変に暴走してなきゃ良いけど」


 ストーリーには関わってはいないけど、同じ転生者(たちば)の者として、渦中に居るだろうメアリーさんをふと心配するのであった。


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