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報告と○○_3


――キミ、前世の記憶でもあるのかい?



「……へ?」


 シュバルツさんからされたその問いに、俺は一瞬理解不能のため間の抜けた返答をしてしまった。

 もしこれがヴェールさんみたいな何処となく妙な探りを入れてくる相手や、俺に前世があるのではと疑われている最中における警戒中の質問であれば、反応してしまい身構えてなにか疑われていたかもしれない。


「まぁ、そういった反応になるだろうね。突拍子もなさすぎる」


 しかし注意していない時の予想外の言葉であったため、シュバルツさんは疑いを持たずに俺の反応を“理解不能なことを言われた反応”と思われたようだ。


「何故急にそのような事を?」


 そのお陰で少し心に余裕を保つことが出来、何気ない感じで聞き返すことは出来た。

 なにが目的かは分からない。

 単純に“前世の記憶がある”と思われているだけならば、まだ良いのだが。

 もしシュバルツさんが“俺がこの世界と似た世界を前世の記憶から知っており、行動している”と疑っているのならば、俺は警戒しないといけない。

 精神的疑いを心配されるというのもあるが……例え俺の記憶があてにならなくても、少しでも不確定な未来や隠しているはずの出来事を知っていて、別世界の技術を知っているという事は、どのような反応をされるかは分からない。


「簡単な話だよ。キミ、前世の記憶があって、王国の未来を既知としている疑いがかけられているみたいなんだ」


 そして俺の問いに対してシュバルツさんは俺の警戒を特に気にする事なく、自身でも訳の分からないことを言っているな、とでも言いたげに呆れた表情で問いに答える。

 ……この様子だと、シュバルツさん自身は俺に対して疑いを持っている訳では無いのだろうか。だけど油断はしないでおこう。


「前世の記憶と、王国の未来を知っているって……なんの関係があるんでしょう。というか、何故俺に疑いが?」


 なので俺は至極当然な事を聞いてみた。

 少なくとも、前世の記憶があると未来を知っているは結ばれる事では無いだろうし……前世が今より未来、なんて事は普通無いだろう。前世がそもそも普通ではないというのは置いといて。


「さて? どうもキミとメアリーくんに同じ疑いをかけられているようなのだが、キミ達はこの世界を“物語の世界”と認識して、目の前に居る相手を“会う前からどのような相手か知っている”者として扱っている可能性が有るのだと」

「それただの危ないヤツじゃないですか。物語認識で俺はお前を知っている……っていうヤツが居たら」

「まったくだな」


 …………思ったよりも、正解に近い形で疑われているようである。アリス症候群的な病を心配されている感じではなく、明確に知識を利用した生き方をしているように思われているようだ。

 あれ、俺とメアリーさんに疑いを持っているという事はもしかして……


「疑いをかけているのはヴェールさん達ですか」

「その通りだね。だからさっきキミとメアリーくんに質問があると言ったのだろう」


 ……やはり()()なるのか。

 『君達は何者だ』『興味を抱いている』。……出会った時のあの問いかけと言葉は、疑いを持っていたからこそ出てきた言葉であったのか。どの程度本気かは分からないが、可能性を考慮している以上は気をつけるべきだろう。

 ……そして、シュバルツさんに対しても気を付けなければならない。

 どこまで本気で聞いているかは分からないが、シュバルツさんが俺達に疑いをかけられているという事を知っている以上は――


「ま、突拍子も無い訳の分からない疑いさ。例え前世の記憶持ちだとかこの世界が物語の世界でキミ達が知っているとかが事実だとしても、キミ達がキミ達であるという事は変わらないというのに」

「へ?」


 ――気をつけようと思っていたのだが。

 シュバルツさんは心底どうでも良さそうに、呆れた物言いでそんな事を言い出した。


「……えっと、どういう意味です?」

「事実だとしても、それを悪用しているようには思えないし、周囲の皆を幸福にしようと動いているのは分かる。ならば、それで充分なのに、という話さ」


 シュバルツさんは俺を少し見上げる形で見ながら、くだらない事に対する自身の感想を言う。

 俺もメアリーさんも悪意を持ってかき乱そうにしているようには思えない事や、少なくとも周囲の為に尽力しようとしている事。


「利用をしても、クロくんの場合はヴァイオレットくんもグレイくんも、シキに居る者に慕われている。少なくとも一度は世間から溢れた子達のね」

「全て利用するためかもしれませんよ。己の利益の為にね」

「それのなにが悪いんだ。少なくともキミは、私が初めて会った時からシキの皆を心配していたし、今は家族を愛しているからね。ならばそれで充分だよ」


 だから私は気にしないと、シュバルツさんはよく分からないポーズを決めながら答えた。俺がやれば変であるが、無駄に決まっている辺りは凄いと思う。

 ……本当に、こうしていると一つの絵画のような美しい女性像だから困る。あれか、ギャップ狙いというヤツか。


「でも、事実でも虚偽でもどちらにしろ、強い意志を持った者が知ればどうするかは分からない」


 あくまでも会話の延長線かというように、シュバルツさんは何気なしに俺に言葉を続けた。


「事実はどうでも良いんだ。単純に“未来を知っていたはずなのに、防がなかった”、“アイツが未来を知った故に行動したから、自分が不幸になった”そう思われてしまったら、どう足掻いてもキミ達は意志に飲み込まれやすいターゲットになる」

「……意志とは善意・悪意問わず、という事ですか」

「そうだね。だから気をつける事だ」


 シュバルツさんは相も変わらず端正な表情を作り、


「皆が皆、ありのままを受け入れてくれる訳では無いからね」


 少し寂しそうに、俺に言ったのであった。

 ……言われなくても分かっていますよ。その言葉はどうにか飲み込んだ。


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