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主人公だったはずの少女の回想_2(:淡黄)


View.クリームヒルト



『お師匠……お師匠様……師範……うーん』

『なにをやってるクリームヒルト』

『あ、はい! 貴方の事をなんと呼べばいいか迷ちゃって! なにか希望は有りま――有る!?』

『好きに呼べ。くだらない事で悩んでいるな』

『ではお師匠たまで!』

『前言撤回だ。師匠と呼べ』

『はい、分かりま――っ、分かったよ師匠!』

『……無理をするな。言葉遣いは徐々に慣れろ。それでは今日はまず――』







「――っ、と……」


 ふと、身体の急な揺れを感じて、意識が覚醒して師匠との会話がそこで途切れた。

 一瞬なにが起きたか分からず、周囲を見渡している内に意識が覚醒していき、今まで昔の夢を見ていたという事が分かった。


――懐かしい夢、見たなぁ


 あの後、村の皆に「笑う目が怖い」と言われていたので、笑顔の練習をしたり、笑い場所を選ぶものだと教わったり、モンスター以外の人などと戦ったり接したりする方法を師匠から教わった。


――お陰で対人戦とかは弱くなっちゃったけど


 師匠のお陰で色々と普通は分かったけど、そこだけは少し慣れきれていない。模擬戦なら大丈夫だけれど、一定以上戦うとお母さんのあの表情に近い形で見られるため、思い出してどうも攻めきれなくなる。

 あと、目も偶にモンスターと戦っていると昔のような目になるらしく、同行者に怖がられる時もある。そのため最近では冒険者として依頼を達成と錬金魔法の材料集めをする時はソロで行くようにしている。

 そういえばソロで行くようになってから、一回だけ依頼の途中でアッシュ君と会ったっけ。あれ以来アッシュ君が私を偶に警戒する目で見るようになったはずだ。


「お、起きたか、クリームヒルト」


 私が腕を上に伸ばし身体を解していると、前の方でメアリーちゃんと話していたシルバ君が私が起きた事に気付いた。どうやら起こさないようにシーツをかけて前の方で小さな声で会話をしていたらしい。


「うん、おはよーシルバ君、メアリーちゃん。寝ちゃってたみたいだね」


 私は少し寒かったのでシーツを羽織りながら、他に誰も居ない馬車の中を歩いてシルバ君達の方へと近づいていく。


「あはは、会話の邪魔しちゃったかな?」


 学園に入る前にようやく怖がられなくなって来た笑顔を浮かべ、落ち着くようになった笑い声を出しながら話しかける。この笑顔と笑い声自体は元々自然と出ているものだったから、私の普通が日常に溶け込めて良かったと思っている。


「ふふ、大丈夫ですよ。よく眠れていたようでなによりです」


 うーん、でもメアリーちゃんみたいに綺麗に笑えれて言葉遣いも上手く出来たらいいなぁとも思うんだけど。

 以前は私に似た笑顔の上位互換、って感じだったけれど、今は少し私と離れた所にある気がするんだよね……


「そうそう、別に構わないよ。それに丁度良いタイミングだったし……」

「丁度良い?」

「シルバ君のヴァイオレットに対する感想を聞いていたんですよ」

「感想?」


 好きな相手であるメアリーちゃんとの会話に割り込んで悪かったかなと思ったけれど、シルバ君は以外にもバツが悪そうな表情で助かったと言った。私が疑問顔になると代わりにメアリーちゃんが答える。


「ええ、シルバ君、始めの方はヴァイオレットに対してずっと睨み付けていましたから。少しは変わったのかを聞いていたんですよ」

「う……」


 確かにメアリーちゃんを特に好いているイケメンズファイブ(今名付けた)の中で、シルバ君とエクル先輩だけがまだヴァイオレットちゃんに対して明確に敵意を向けていた。実際にシルバ君とシキに来る前も「メアリー(ちゃ)んがあの女の所に行っているなんて!」という感じで敵意ありありだったし。

 けれど私と会った時に、私と同じで馬車のお金と予約が無くてどうしようか悩んでいたのは可愛かったけど。


「確かに決闘では色々あったけど、当のメアリーちゃんも気にしていなさそうだし、クロさんとの夫婦関係も学園祭の時点で良さそうだったし、そこまで心配する必要あったの?」


 当然許す許せないは当事者の問題だから私がとやかく言えないけれど、あそこまで敵意を隠さなかったのは何故なのだろうか。


「……だってさ。アイツら学園祭の時点でキスも未だだって聞いたし、夫婦仲も良いものには見えなかったから、皆騙されていると思って」


 確かに事情を知らずに皆が決闘相手を許し始めたら心配なのかもしれないけれど、学園祭の時にも充分棘は取れて夫婦仲も良さそうに見えたけど。


「ほら、アイツってクロさんの事を“クロ殿”っていうでしょ? それを見た時、正直本当に好きだなんて思えなかったんだよね」

「え、どういう事?」


 ヴァイオレットちゃんがクロさんを殿付けする事がおかしい事なのだろうか? 旦那様を敬う、って感じの呼び方だと思ったんだけど。

 と思っていると、シルバ君は「うん」と頷いてから自身の予測を呆れた様に話した。


「アイツ、対応はともかく、少なくともヴァーミリオンの事を好きだったからね。それで、“殿下”を夫とする風にずっと思っていたから、夫となったクロさんに対して“殿下”の影を見て、殿付け呼ばわりしているんだと思っていたからさ」


 ああ、そういう事なんだ。

 決闘の時に私は実家に呼び戻されて勘当の一歩手前の段階まで陥っていたから直接見てはいないけれど、ヴァイオレットちゃんは相当精神的にまいっていたと聞く。

 好きという感情が確かに存在していたのに、それを否定されてなにが正しいかも分からなかった状態だろう。シルバ君の予想は正しいものかもしれない。


「……まぁ、でもアイツはクロさんの事を好きなのは確かだと思ったし、偽りとかじゃないのは今回の滞在で分かったし、それに……」

「それに?」

「……それに、僕が事故を起こした時に僕のフォローも入れたみたいだし、領主の仕事もクロさんに押し付けずに頑張ってた。……認めたくないけど、アイツも変わったんだとは思うよ。……アッシュ達もこんな風だったのかな」


 シルバ君は少し認めたく無さそうに、いじけるようにそう呟いた。こういった仕草が年齢よりも幼く見られる要因なのだろう。

 けれど良かった。シルバ君もヴァイオレットちゃんへの恨みは薄れてはいるようだ。


「ふふ、ならまずは“アイツ”ではなくキチンと名前を呼ぶところからですね」

「うっ……そういえば、アイ……バレンタイン……でもなくって、ヴァイオレットが変わった事として気になる事があるんだけど。メアリーさんに聞きたいんだ」

「はい、どうしたのでしょうか」

「……ヴァイオレットが変わった原因って、シキの影響を良くも悪くも受けたからでもあると思うんだけど……メアリーさんとかも、もしかして影響を受けたからヴァイオレットを許した……ってことは無いよね?」

「私が影響……ですか?」

「うん、温泉で男湯に突撃しようとしたりしたのも、もしかして影響を受けたのが理由かな、って」

「…………」

「……ねぇ、メアリーさん。僕で良かったらなにか力になるよ? ほら僕、魔力関連で精神関与の魔法は効きづらいし、なにか悩みがあるのなら……聞くことが出来ると思うんだ」

「大丈夫です、本当に大丈夫ですから…………ごめんなさい、シルバ君。温泉に入る前に、貴方に一緒に入るなんて無神経なことを言ってしまった私を許してください……」

「だ、大丈夫だよ。環境が違って少し思考がうつ――変わっただけだから!」


 ……うん、良かったよね、多分。


「そういえば、さっき寝言でいつもみたいに笑って“師匠!”って言っていたけど、なにか夢を見ていたの?」


 シルバ君は居たたまれなくなったのか、話題を変えて私に振る。

 けどそんな寝言を言っていたんだ、私。ええと、……少し内容は忘れてしまってけど、確か……


「確か昔師匠……錬金魔法の師匠と会った頃の夢を見ていたんだ」

「錬金魔法の師匠っていうと、メアリーさんと同じ?」

「はい、そうですね。少々変わった男性ですよ。基礎を教えて貰った後はずっと会っていませんが……」


 私も色々教わった後は一度も会っていない。

 錬金魔法も基礎以外は「後は勝手に覚えろ」と言われて特に教わっていない。なんでも錬金魔法自体感覚で学習していくしかないからだそうである。あと表現を濁してはいるけど、アレを少々変わったでは済まして良いモノかと疑問はあるけど。


「実は数日しか会っていないんですよ。基礎を教えたら私の住んでいた町を出てしまったんです。流浪の旅をしているそうですから」

「師匠って言うには微妙だし、自由なんだね……」

「でも教えて貰ったからお師匠さんです。クリームヒルトも数日程度しかあっていないんじゃないですか?」


 あれ、なんだろう?

 メアリーちゃんは問いかけはしているけれど、答えを知っていて問いかけているような……気のせいかな?

 でも、私は錬金魔法以外に色々と教わったから数日どころか一ヵ月以上は話をしている。

 しばらく経つと長であるお爺ちゃんから色々言われて出ていったけど。


「ううん、私は一ヵ月以上は教わったね。錬金魔法に関しては基礎だけだけど」

「ん、じゃあなにを教わったんだ?」

「言葉遣いとか……都会での過ごし方とか。あとはモンスターの動きとか、狩り方とか」

「てことは本当に色々な意味での師匠なんだな」

「あはは、そうだね!」


 実際は日常生活や喜怒哀楽に関しての事だけど。モンスターを狩る方法も教えて貰ったのも確かでけどね。

 だけどわざわざ話すような事でも無いと思う。話す時は気をつけないと、油断をすれば少し前に私を勘当した時の、お父さ――生みの親のような反応をされてしまうからね。


「…………え?」


 だけど、メアリーちゃんは何故か私の回答に対して不思議そうな表情をしていた。

 メアリーちゃんには珍しい……シキでスノーホワイト神父様の自己紹介を受けた時のような、複雑そうな表情であった。

 ……? なにか変な事を言ったのかな、私?


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ・・・シルバ君汚染済みか・・・手遅れやったんや・・・ しかしメアリーの気づいた齟齬は果たして何を意味するのでしょうか・・・
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