主人公だったはずの少女の回想_1(:淡黄)
View.クリームヒルト
昔を思い出していた。
吹雪も止み、すっかりと晴れ間が広がったお陰で予定よりは遅いけれど予定日に帰る事が出来たシキからの帰り道の馬車の中で。
日差しのお陰なのか眠気が襲い、眠ってしまった。そして私の昔の夢を見た。
一番近い年齢の子でも私と数歳離れているような子しか居ない、王国外れにある田舎に私は生まれた。
両親は私を大切に育ててくれたと思うし、周囲のお年寄りの皆も初めは可愛がってくれたと思う。
ただ、どうも私は一般的な皆とズレているようなので、所々で両親を困らせた。初めは恐怖を知らないために大人にとって驚いた事をされる、幼少期特有のものだと思われていたようであったので、「これは駄目なんだよ」と教えてくれた。
でも徐々に、両親もズレを感じ始めた。
『とぉーう! てーい! 風よ、土よ!』
『おお……この村では魔法の学術書が無いのに魔法を……! この子は大成するかもしれんぞ……!』
『あはは、ありがとうございますねお爺ちゃん!』
魔力をふと感じたので、感覚だよりで魔法を唱えたら結構な魔法が唱えられた。
腰を悪くした近所のお爺ちゃん達の代わりに畑を耕したら喜ばれた。喜ばれたのならば良い事なのだろうと思い、頑張って耕したら少し怒られた。流石に村の全ての畑を一晩で耕したのはマズいらしい。よく分からないが、夜に黙って家を出たのが悪かったようだ。
怒られたのだから、私が悪かったのだろう。
『お父さん! もっと本気で来ないと練習にならないですよ! モンスターを倒すのならばもっと強くならないと皆を守れません!』
『ま、待て、休憩を、い、いれ、いれて……!』
家族を守る為にモンスター対策で強くなろうと、お父さんに自己防衛の基礎を教わり、棒を使った剣術で何度も戦った。すぐに私が勝つようになったので、他の村では比較的若い男性相手にも戦った。しばらく経つと誰も相手をしてくれなくなったので独学で頑張った。
『なんで駄目なのですか! 私は悪いモンスターが居るから討伐したんですよ! 被害を出したのならば討伐対象なのでしょう!』
『違う、違うんだクリームヒルト。お前が討伐する必要はないんだ! そういうのは長が依頼を出したから冒険者が討伐してくれるんだ!』
『分かりませんお父さん! 悪い相手を倒したのは良い事なのでは! 何故怒られるのです!』
モンスター除けの結界をすり抜けてモンスターの被害が会った時、私が討伐をしたらお父さんに怒られた。お母さんはなにも言わずに泣いていた。
殺すのは駄目なのは知っている。けれど、モンスターと呼ばれる被害を出す相手は討伐してもおかしく無いはずなのに。
『あ、そうですね! 私がモンスターの血を洗わずに帰って来たのが駄目だったんですね! 全身濡れちゃったから汚いって怒っているんですね! なんの病原菌が居るか分からないから次からはキチンと洗うねお父さん! お母さん!』
『違う、違うんだよクリームヒルト……七歳のお前がそんな事をする必要はないんだ……冒険者でも無い女の子のお前が危険に晒される必要はないんだよ……!』
『あはは、お父さん! そんな顔をしては幸せが逃げてしまいます! 笑いましょう、笑顔でいる事はとても良い事なのですよね!』
私が理解を共有できる数少ない笑顔という動作に、お父さんもお母さんも何故か笑ってはくれなかった。
なんでだろう。敬語を使う事も笑顔も相手を敬う良い事だと教わったのに。それとも私の敬語はおかしいのだろうか?
『お母さん!』
ある日の夜。村を複数のモンスターが襲った。
どうやらモンスター除けの魔道具が先日の嵐で壊れ、モンスターがその期を見計らって侵入してきたらしい。
嵐の頃から滞在している、レンキンマホウとやらを使う男性が何匹かをレンキンマホウで作った爆弾で討伐はしてくれた。けれど、一匹が逃げ出してお母さんの方へと襲い掛かったので私はとっさにそのモンスターを討伐した。多分私が討伐しなくても、レンキンマホウを使う男性が助けてくれたと思う。単純に、私の方が少し早かっただけだ。けれど身体が先に動いてしまった。
『…………』
いけない。また汚れてしまった。
けど仕方ない。獣型であったから噛まれる可能性もあったから噛まれる前に一撃で仕留めないとどんな反撃をされるか分からなかった。
ああ、どんどん来る。他所様のレンキンマホウの男性の方や、魔道具が壊れたから来ていた冒険者の護衛の方も討伐はしているけれど、この数だとどうなるか分からないから私も討伐しよう。
『あはは』
槍があったので突き刺したら抜けなくなって使えなくなった。
剣が飛んできたので使ったら、何回か使った所で血で濡れて使えなくなったので投げて一匹を仕留めた。
武器が無くなったので、素手と歯でどうにか一匹仕留めることが出来た。
『クリーム……ヒルト、ちゃん……?』
モンスターの討伐がし終わった。
私はそこまで討伐は出来なかったが、皆が討伐してくれたお陰でどうにかなった。
ああ、さらに汚れてしまった。また怒られてしまう。けど悪いモンスターを倒したのだから褒めて貰えるはずだよね?
でもお母さんはそれ以上に怯えているように見える。モンスターは居なくなったのにどうしてだろう。
『あはははははははははははははは!』
よく分からないが笑おう。だって笑顔なら恐怖も薄れるはずだと教わったから。
『お母さん、大丈夫ですよ! もうモンスターはいませんから! 私と皆さんで討伐しましたから危険は無いはずです! そして悪いモンスターを倒した私を褒めてください!』
私は安心出来るように、出来る限りの笑顔でお母さんに近づいていく。
腕を広げて、ハグして欲しいとアピールをする。
『ひっ……!? その言葉遣いと笑いをやめて、気持ち悪い!』
だけどお母さんは、私に怯えて褒めてはくれなかった。
やはり私はズレているようだ。昔から分かっていたはずなのに、忘れていたようだ。
◆
翌日。後に師匠となる男性が、私にレンキンマホウを教えてくれた。
『良いか、お前は、お前らしく生きろ』
お父さんもお母さんも……家族が何故か私にあまり話さなくなったのに、師匠はそう言ってしばらくの間私にレンキンマホウだけではなく色々と教えてくれた。
何故という疑問に根気よく、昔尊敬していた家族のように、私を尊重してくれながら色々と教えて貰った。
『成人したらアゼリア学園に通え。そして、学ぶんだ』
『学ぶ! なにをです――っ、なにを学ぶの!』
そして成人になったら学園に通うようにと言われた。
閉じ籠ることなく色んな相手を見るようにと、師匠に言われた。
私の疑問に対して師匠は、
『お前が大切だと思う相手を見つけるんだ。……例え、それが――――だとしても』
親しみを持てる、私とは違う微笑みを浮かべながらそう言った。
笑顔とはこういうものなのだと、その時懐かしく思いながら学んだ気がする。




