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クリームヒルトという女の子_4(:菫)


View.ヴァイオレット



 クリームヒルトという少女について。

 ヴェールさんはメアリーに対して聞いていた。


「そうだね、疑っている……事にはなるのだろうが、ほら、彼女天然気味な所あるだろう? 錬金魔法でこういった道具をいつの間にか作っていたんじゃないかな、って思ってね」


 調査する者としてあくまでも聞いておかなくてはならない、と言うかのように少し困り顔の表情になっている。

 だが、不思議だ。この表情は巧妙に隠されてはいるが、別の目的を持ってクリームヒルトを知ろうとしているように見える。


「いえ、いくらクリームヒルトでもそんな道具は――」

「でも学園祭で笑いながら爆弾を爆発させていたじゃないか。あんなノリで作っていそうでね……」

「――否定、出来ませんが……!」


 ……うむ、確かに否定できないな。

 確かにその部分だけで判断するならば疑うのは無理もない、というかヴェールさんの立場であったのならば私でも疑うな。

 メアリーはコホンと咳払いをした後、少し考えて自身の考えを言い出す。


「錬金魔法は様々な道具を作れます。作れるかどうかと問われれば、似たような効果を持つ道具は作ることが出来ますね」

「ふむ、やはりか」

「ですが、あくまでも工程と手法を変えるだけで、錬金魔法で作れるものは別の錬金魔法を介さない手法で作れますから」


 あくまでも可能性はある、という程度だ。未知に近い魔法である以上疑うのは仕方あるまいが、特別すぎるという訳でも無いという事を知って欲しい、という事か。

 それにクリームヒルトが仮に今回の事件の原因を作っていたとしても、自ら告白しないとは思えないが。


「ではもう一つ質問だ。君から見てクリームヒルト君はどう映る?」

「ヴェールさんの言葉には含意が広すぎます。どう映る、とは?」

「失礼した。つまり私が言いたいのはね――ふむ、どう表現すればいいだろうか」


 白々しい。

 ヴェールさんのその考える仕草を見て、そんな失礼な事が思い浮かんだ。だが否定する気はしない。


「彼女の成長性は素晴らしい所がある。だが同時に危険な所がある」

「ヴェールさん。その言葉はクリームヒルトの友である者として見過ごせません」


 クリームヒルトが危険と言われ、私は両者の会話に割り込む。

 例え駆け引きであろうとも、今の言葉は見逃していては、友と慕ってくれているクリームヒルトに申し訳が立たない。


「そうですね。クリームヒルトと、ヴァイオレットの“友達”である私としても見過ごせません」

「そこはわざわざ言わなくて良いし、強調しなくて良い」

「重要じゃないですか!」


 メアリーはそこは譲れないとばかりに必死な表情になる。……やはりこちらが素なのだろうか。先程までの表情とは違った表情と思える。


「ふむ……」


 私達の様子を見て、ヴェールさんは仕事服でもあるアプリコットよりは控えめな魔女の帽子を杖で軽く上げる。観察するようではあるが先程までのように謝罪を口にし、別の問いをかけるだろう――


「言い方が悪かったね。だが悪いが、この質問は変えることが出来ない。彼女の――特異性について、私は知りたいんだ」


 しかしヴェールさんは仕事状態の表情と声色で、私達への問いを続けた。

 ……何故だ? クリームヒルトを疑っているかのようであるが、何故疑う?

 こう言ってはなんだが、その場に居た他の者達の方がまだ可能性としてはあるくらいであるのに。既に他も疑っていて今聞くことが出来る相手に聞いている、という可能性もあるが……


「それは君もだよ、メアリー・スー君?」

「……私も?」


 メアリーの疑問に対し「ああ」と頷くと、杖をクルリと回し魔力増強用の宝石が付いた方をメアリーの方へと向ける。


「錬金魔法、成長性、俯瞰視点、冷静さ、そして君の場合は多くの男性を魅了する会話術」

「……ふふっ、ありがとうございます。ですが買い被りというものですよ。私はあくまでも最善を尽くそうとした結果が、偶然上手くいっただけですから」

「謙虚だね」

「驕り、自らの地盤を知らずに崩壊の道を辿るのならば、謙虚に己の為せる事を為す生を歩みたいだけです」


 メアリーはヴェールさんの問いに対し、いつものような笑顔になり問いに答える。

 相変わらずな受け答えで、同性であろうと魅了させるような慈愛の表情だ。


「我が息子も大変だね。このような女性相手だと口下手な息子では難しいだろう」

「シャル君……シャトルーズ君は口数こそ少ないですが、思いは伝えてくれる男の子ですよ。守るべく強くなりたいといつも言っていますから」

「いや、それはない。うちの息子は口数が少ないだけでまともに異性と話せない馬鹿だ」


 同意見ではあるが母親としてそれで良いのだろうか。


「話が逸れたね、すまない。クリームヒルト君は……」


 ヴェールさんはそこで少し考え、杖をまた回転させて地面をトン、と叩く。


「メアリー君はクリームヒルト君のなにを知っている? そして、クリームヒルト君は何故廃嫡された?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 勘当者や廃嫡されたものが集まる町、それがシキ・・・あながち間違っていない気がする
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