女子会(男を含む)_1(:菫)
View.ヴァイオレット
「ヴァイオレット様、お客様です」
「客?」
黙々と領主としての仕事をこなしていると、グレイが来客を知らせて来た。
来客の予定はないはずだが、調査をしているというヴェールさんか、まだ滞在しているメアリーでも来たのだろうか。
私は持っていたペンを下ろし、グレイに誰が来たのかと問いかけてみる。
「クリームヒルトちゃんが来られて、同級生と言う銀髪の……シルバ様? も来られて爆発して吹っ飛びまして汚れたのでお風呂を貸して欲しいという事です」
「どういう事だ」
どうやら来たのはクリームヒルトと同級生のシルバというと……シルバ・セイフライドか。ともかく、その両者がシキに来たとの事。
グレイの話を聞いていくと、両者が偶々一緒にシキに来る事になったのだが、馬車を使うお金が無かったらしく、隣町から走って来た。そこで偶々モンスターと出会い、持ち前の錬金魔法で作った爆弾で屠ろうとしたら、偶々モンスターが寸前にスライムのような粘液系モンスターを捕食していたらしく、爆発と同時に粘液が両者を襲ったらしい。
さらにはモンスターとの戦いで気が付くと迷ってしまい、今ようやくこの領主邸に辿り着いたらしい。……モンスターとの戦いで迷った、とは言うが多分来るまでに純粋に迷っていたと思うが。
「そういう事なら貸せば良いぞ。替えの服が無ければ、私やグレイの服を貸しても良いから出しておいてくれ」
サイズ的にクリームヒルトはグレイのを。シルバは私のをとなるが、洗ったシャツならば渡せば良いだろう。
シルバは私の事をひどく嫌っているので抵抗があるかもしれないが……その時は適当なモノを買ってくるか。
「私はセイフライド……銀髪の同級生には嫌われているのでな。すまないがまずはグレイが対応してもらえるか?」
何故シルバがクリームヒルトと共にシキに来たのかは分からない。
考えられる事としてはメアリーがシキに来ている情報を何処かで知って、追い駆けて来た……と言う所か。
もしかしたらクリームヒルトに「お風呂をすぐ借りれるところだよ!」と言われて、ここが私達の屋敷という事を知らずに来たのかもしれない。とりあえずはモンスターと戦ってドロドロになっているようであるし、一旦湯に浸かってもらって落ち着いてから対応した方が良いだろう。
「分かりました。では両者を脱がせて一緒にお風呂に入れてきますので」
「待て」
と思ったのだが、グレイが割ととんでもない事を言い出したので出ていこうとするグレイを呼び止めた。
「アイツらも年頃だ。流石に一緒に入れるのは良くないぞ」
シルバは同級生と比べても幼い印象が見受けられ、皆から弟のような扱いを受けているが立派に成人した同級生である。
そんなシルバと同じく幼い印象はあるが、同級生のクリームヒルトを一緒に入れるのは良くない。
「ですが、我が屋敷にはバスルームは一つだけです。早く洗うためには一緒に入るのが良いのではないでしょうか」
「確かにそうだが……」
どうしたものか。
グレイはアプリコットやエメラルドとも温泉で普通に一緒に入るほどには性差をあまり意識していない。恐らくは過去の奴隷としての扱いを受けていた時に、グレイは対象にならなかったが他の奴隷が性的な扱いを受けていたので何処かでそういった意識を遠のけているのだろう。
いずれは正さないといけない事ではあるが……そんな事より、今どうするべきか。
「それに一緒に入ろうと言っているのはクリームヒルトちゃんですよ?」
「……なに?」
とりあえずはグレイにシルバの相手をさせて、私がクリームヒルトの相手をしてどちらかを宿屋か教会に連れて行き、後でグレイに説明をした方が良いのではないかと思っていると、グレイがさらにとんでもない事を言い出した。
「クリームヒルトが、セイフライドと一緒に入りたい、と?」
「はい」
一度問いかけるが、グレイは嘘などを言っていない瞳で私の問いに答える。
……え、クリームヒルトとシルバはそういう関係だったのか? だがシルバはメアリーが好きであるはずだし、クリームヒルトは弟のような扱いしかしていなかったように思えるが……もしかしていつの間にやら恋が芽生えたのだろうか。
いや、落ち着こう。きっとまたグレイが勘違いしている可能性の方が高い。例えばクリームヒルトが一緒に入ろうと言っているのは本当はグレイに対してとか、そんな感じかもしれない。……それはそれで問題な気はするが。
ともかく、一度私が行って確認した方が良いかもしれない。
「……やはり私が対応しよう。グレイ、案内して――」
貰えるか。と言葉を続けようとした所で、開けっ放しになっていた扉の奥、つまりは玄関先方向から大きな声が聞こえてきた。
「クリームヒルトが先に入れば良いだろう! 僕は待っているから先に入れば良いじゃないか! なんで一緒に入ろうとするんだよ!」
「粘液に塗れた状態で屋敷内に居座る訳にもいかないでしょ! 下着もぐちゃぐちゃなんだから脱ぐしかないでしょう!」
「タオルを借りて拭いて外で待ってるさ!」
「風邪をひくし、早く洗い流さないとモンスターがなんの病気を持っているか分からないんだから! 私もシルバ君も水魔法とか苦手だし、洗い流せないでしょ!」
「そうだが……!」
と、言い争うような声が聞こえて来た。
……成程、そういう事か。確かにどちらも洗い流せるような水魔法は出来なかったはずであるし、出来たとしても炎魔法で乾かさないと風邪をひく。弱っている状態で魔法を使ってしまえば精神力が弱まりなにか弊害が起きるかもしれないので、素直にお風呂に使った方が良く、クリームヒルトの言う通り早く流してしまった方が良い。
であるが、流石に一緒に入るのは良くないと思う。クリームヒルトはどうしたと言うのだろう。
「ええい、ちょこまかと動かない! シルバ君は大人しく脱げばいいんだよ! 大丈夫、私も脱ぐから!」
「クリームヒルト、お前恥は無いのか!? 普通女の子が男に、は、裸を見せるなんて抵抗あるだろう!?」
「私はひんそーな身体を見せるという事に恥はあるけど、見られて興奮されるような身体のつもりはないよ!」
「そういう事じゃないんだよ、異性同士が入る事が問題なんだ! それにその……女の子のは、裸を見せるなんてもう少し考えるべきだろう、男は皆見たがるモノだって聞いている!」
「え、じゃあ……そう、私も男の子の裸を見れるから得なんだよ! だからお互いの利益につながるから問題は無いよ!」
「そ、そうか。互いに得なら――とはならないかな! というか今それを考えたって事は、お前僕の事を男という事を普通に忘れていただろう!」
「………………違うよ!」
「せめて間をもう少し埋めろ! 僕だって男なんだからな!」
「でも、シルバ君だって普段は私の事を“友達としては良いけど女としては……”って感じじゃん! 女としていつもは意識していないでしょ!」
「………………違う!」
「せめて間をもう少し埋めてよ!」
……とりあえず、友と元同級生の諍いを止めに入ってくるか。




