【コミカライズ完結記念】黒と菫の結婚初夜に向けての意気込みと、??
コミカライズ完結記念の番外編です!
※このお話は直接的なシーンはありませんが性的なネタが含まれます
そういった類が苦手な御方はご注意ください
とはいえ大体コメディです。
クロとヴァイオレットのはじめての日
今日、俺は妻であるヴァイオレットさんと初夜を迎える。
シキのあらゆる領民に「夫婦で仲が悪い訳でもないのにキス止まりのまま半年近くとかなにやってんだ」と散々馬鹿に……いや、馬鹿にだけはされていた訳ではないが、日が進むにつれ心配が勝ってきていた中、今日“その日”を迎える。
――き、緊張してきた……!
俺は今、寝室のベッドの上で緊張の中であった。なにせベッドの上なのに正座で座っているとかいうよく分からない状況なのに気にしていられない程だ。
先程まである重要なイベントがあり、グレイやアプリコット達も含めた騒ぎをした後お開きの雰囲気になり、アプリコットおねむなグレイを連れてグレイの寝室に向かった。多分シアンも含めて今頃寝室で楽しく話をしているだろう。
そして俺とヴァイオレットさんは二人きりになった後、その……ええと、良い雰囲気になり、そういう雰囲気になった。そして俺は来客の浴室、ヴァイオレットさんは家族の浴室を使い身を清め、俺が先に出てこうして部屋で待っている訳なのである。
「落ち着け俺……イメージはして来たし知識が無い訳では無い。経験は無いが、そこは知識で少しでも補って醜態を晒さないようにするんだ……!」
俺は放っておくと叫んでしまいそうなほど緊張の中、自分に言い聞かせる。
俺、クロは女性との性的な経験は前世も含めて無い。Cは勿論無いし、Bも無ければ、Aもヴァイオレットさんと俺の誕生日にしたのが初めてだ。
異性の友人も多かったし、女性と話すのが苦手だったわけではない。
パタンナーとして裸の女性のスケッチとかしたり、白ともワンルームで過ごしていたし、アプリコットとも出会った一年くらいはグレイも含めてお風呂にも入っていたので女性の身体に免疫が無いという事はない。ただ女性経験は無い。
言い訳にはなるが、前世ではそういうのを避けていたのもある。モテなかっただけだと言われればそれまでではあるのだが、前世の母の恋愛観……というか性への奔放さを見ていると、血の繋がった息子である自分に恋愛や性を当てはめるのが嫌だった。自分は性的要因をお金や相手を支配する欲などを満たすために使う母のようになりたくはなく、一人の相手を愛していたいというある種の恋愛に対する潔癖症を発症させていたのだ。故に女性と一定以上性的な繋がりや恋愛関係になる事は無かった。
――でも俺前世も含め、めっちゃ性的な絡みされているような……
シアンは……まぁ良いとして、シュバルツさんは全裸だし、前世の下着デザイナーの女性友人はインスピレーションが湧くから男の香りを嗅がせろと言ったりして、それで出来たものを実際に着ているだとか言って見せてきたり目の前で普通に次のデザインとか言って着替えやがっていたし、デザイナーとパタンナーの友人夫婦は夫を女装させてはだけさせてソフトに虐めるプレイを会社とか間近で繰り広げやがっていたし、後輩デザイナーは男ではあったのだが女装して女性にしか見えない姿であられもない格好を――
――落ち着け俺。あんなもの思い出していたら臨戦が萎えてご破算になるぞ。
女性との経験が無いくせに妙に性的なシチュが多かったなという、自身の過去についてあまり理解したくない事を理解しかけた所で思考を打ち切った。これ以上この事を思考すれば今からまさに行為が出来なくなりそうである。
「……大丈夫。今世でもなにかと女性の裸とか見て来たし色々あったが、シュバルツさん以上はもうないはずだ。あの人もエロと言うよりは芸術だし、別ジャンルだ、うん。だから大丈夫。妻以外の成人異性の裸を見ておきながらなにが大丈夫なんだチクショウ。……いや落ち着け俺。思考をクリアに。今世ではシュバルツさん以上はいないしこれからも無いから平気、平気……」
(※なお、後日常時全裸でマントを羽織った、消えているはずなのに転生者組には常に見えているどう扱えば良いか分からない女性がシキに現れたりするが、今この時は関係ない事である)
「と、ともかく、俺には経験は無い。しかし知識はあるから頑張るぞ! 独りよがりにならず、ヴァイオレットさんに痛い思いはさせずに気持ち良くするぞ! …………いや、大丈夫かなぁ……」
経験は無い。しかし知識はある。
しかしその知識と言うのが三次元……もあるにはあるが二次元、ようはR18な制限がかけられているゲームの話が多いのである。
現実の恋愛には何処か潔癖な俺ではあったが、前世ではそういうゲームはやっていた。初めは友人に「戦闘が熱いしラスボスもめっちゃ良いキャラしているし面白いぜ!」みたいな勧めで「アダルトゲームなのに戦闘……? 熱い……? まぁF○teも元はそうだったらしいし、そういうのか……?」という感じでやり始めて、その作品にはまり、R18作品に抵抗がなくなり戦闘とか熱いとか関係無しにプレイするようになったのである。ちなみに最初は白に隠れてやっていたのだが、バレた時「ズルい!」と言われて一緒にやったり別々に同じ作品をプレイしたりもした。……思い返すと凄い事やってたな。
そして、その作品関連でそちら方面の知識も得た。
女性は初めては痛いとか、破れると血が出るとか(……恥ずかしい話、ゲームでそういうシーンがあるまでそういう事すら知らなかった)、前戯とか順序とか精神的和らげ方とか感じやすい場所とか。
元よりパタンナーとして進むにあたって人体の構造は学び始めていたので、間違っているなと思う所も含めある程度「機会があるかは分からないけどこういう感じにすれば良いんだな……」と学びはした。
その経験が活きる時が来たのだ!
「……でもあれファンタジーだからなぁ……この世界も前世から見たらファンタジーだけど、そういうことではなく……」
……とはいえ、知識は知識だし、情報源もほぼ二次元だ。
俺が最初にやった友人に勧められたゲームなんて真面目主人公のはずなのに「ヒロインにメイド服を着せて早朝の浜辺のど真ん中でやり始める」なんて訳の分からないシチュエーションがあった。しかもそのキャラにとって主人公も含め互いの初めてのシーンだ。
これ自体は後で特殊だと分かったが、これほどにないにせよゲームである以上、作品として印象を残すために現実とは違う風にする必要がある事もある。
ゲームだけでなく漫画でも「互いにはじめてでも愛の力で最初は痛かったがすぐに気持ち良くなる!」とかが多いが、実際ははじめての場合女性側が気持ち良くなるように以前から開発……もとい自慰行為のような事をしていないと痛いだけというのが多いとか。もちろん個人差はあるだろうが。
聞いてもいないのに赤裸々に語るデザイナーとパタンナーの友人夫婦の妻の方が「めっちゃ痛いだけだったし今も違和感ある……けれど今だからこそ生まれるデザインがあると思うんだ……!」と言っていたのが印象に残ったものである。
「ともかく、はじめてなのにすぐ気持ち良くなるとかは無いし、胸に挟むのは実は気持ち良いというほどでもないとかいう話らしいし、気持ち良さがあっても負担が大きいのだし、二次元知識は二次元知識として頭の片隅にやりつつも忘れずに意識し、最大限の注意をせねば。そもそもアレをあんな大量に出すとか水分不足で倒れるし、何回も出来てたまるか! ……いやでもライム義兄さん一晩十二回とかあったらしいし……本当にどうやったんだろうなぁ……」
……スミ姉夫婦の特殊さは置いておこう。アレはファンタジーの領域だ。俺は多分出来ない。
ともかく二次元は二次元。役に立つ事もあるかもだし前知識のお陰でどうにかなるかもしれない。だがあまり過信はしないように気を付けよう。
二次元では男性側はかなり気持ち良いと表現される事が多いが、実際は思ったほどでないと思う事もあるかもしれない。
実際は女性側の反応が行為に対して普通な反応の範疇であっても相手の反応が良くないと思ってしまい相手に気を使わせてしまう事もあろう。というか二次元作品のように女性側が「○○が○○で○○しちゃうっ!」とか行為を実況するかのように気持ち良さを話し始めるとか実際に目の前で繰り広げられたら困る。
――この世界……というかこの国のエッチな声ってどんななんだろう。前世の欧米っぽく“オーイエス! カモンベイベーイエェア!”みたいな感じが普通だったりするんだろうか。
もしそうなら……イカン、悪いけどちょっと笑ってしまいそうである。実況も想像したら笑ってしまいそうだ。例え愛しのヴァイオレットさん相手でもちょっと耐えられそうにない。……いや、実況はともかく「オーイエス!」みたいな声に関してはありえるから笑うのは良くないのだが。むしろその方がマナーとして良いとされる場合もあるんだし、それを笑うのは良くない。……というかその場合は俺も対抗して「ヘイヘイヘーイ!」とか言った方が良いんだろうか。こんな事ならカーキーの奴に聞いた方が良かったのかな……でもアイツに聞くのはなんか違う気がするな……
「はー……なんかもう色々考え過ぎて来てしまったな。……ある意味想像で臨戦態勢だった“コレ”もいつものに戻ってきたな。まぁ最初から大きかったら色々思われるかもだし、むしろ良かった――」
と。
そこまで言ってふと気づく。
いや、気付くと言うより疑問に思ってしまったとでも言うべきなのだろうか。
そう――
――この世界の“コレ”の平均の大きさって――どんなものなんだ……!?
ある意味では男性の象徴とでも言うべき、自分の下半身にある“コレ”について、疑問に思ってしまった。
記憶の限りではクロ・ハートフィールドの“コレ”の大きさは前世とそう変わり無い。大きくなれば日本人平均よりは大きいと言えるものだ。故に大きさに違和感を持たずにここまで来た。
だが――
「ここはある意味日本で言えば海外……欧州的な存在の国だ。もしかしたら平均がそっちの方の可能性も……」
しかも魔法で身体強化とか出来る……つまり筋肉や身体の上限値は高く、そして俺も先代を辿れば【龍人族】のような大柄な体躯を持つ種族の血も入っているほど混血が進んでいるような世界だ。
ようは平均値がもしかしたら前世のあらゆる国の最大平均値の値よりも大きい可能性がある。そして俺にそれを知る術はない。なにせこの世界にネットなんて便利なものは無いからだ。
……もしこの国の平均が30は当たり前だとすれば、俺のこのサイズは小さ――
「落ち着け! 大きければ良いと言うものではない!」
前世のゲームや漫画ではよく大きいほど良い的な描写は確かに多かった!
俺の嫌いなジャンルであるネトラレ的な作品でも「今の彼は小さくて満足できなかったけど大きくて良い!」みたいな描写をよく見た!
友人夫婦も「デカくて入らない……痛くて出来ない……!」という悩みを聞かされ俺はどういう反応をすれば良いんだと大いに悩んだ記憶が鮮明に蘇る!
つまり大きい事が良いと言う訳では無い!!
「だけどチクショウ、小さければ良いと言う訳でもねぇ!」
けれど小さくて満足できないという事もあるのは事実だ。
しかも平均値が高い……前世より大きい人が多いという事は、それに伴って女性の受け入れるサイズもそれに対応した身体の構造へと進化しているはずだ。人間は対応し進化する生き物だからな、うん。多分。
その進化に俺は対応できていなくて、進化した身体に相応しくないとすればヴァイオレットさんを満足させるどころか気持ち良くする事すら――
「落ち着け俺。温泉とか学園生の頃実地研修の着替えで見た時、友人達は前世のサイズとそう変わらなかっただろう……!」
だがふと、この世界、この国で見た限りでは“コレ”はそう変わらなかった事を思い出した。もちろん個人差はあるだろうが、そこまで逸脱したものは見た事無い。むしろ見た事無いからこそ今までその疑問を抱かったのだと、俺は考え始めた。俺の物を見ても小さいとかそういう事を言う奴もいなかったし、俺よりも小さい人はいたし、気にする必要も――
「だが臨戦態勢になれば3倍の大きさになるのが当たり前だとすればどうだ……!?」
それが常識であり、普通であり、わざわざ言うほどでもないものだとすれば平均値は跳ね上がる。なにせこの世界で俺は他の人の“コレ”の臨戦態勢なんてマジマジと見た事無いからな、可能性は充分にある!
「くぅ……! 俺は……俺は今日、大丈夫なのか……!?」
俺はベッドの上で独り。
これから起こる事に対し、苦悩するのであった。
◆
View.ヴァイオレット
私とクロ殿は今日、初夜を迎える。
一番そういう事をする雰囲気に近付いたのは始めた会った日であり、それ以降は仲が悪い訳でもないのにお互い一歩を踏み出せずにいた。
その結果友人達になんだか生暖かい目で見られる……なんて事もあったが。
――今日、私達はようやく初夜を迎える事が出来る……!
私は独り、お風呂場にて念入りに身体を洗いながらこれから起きる事を緊張しつつ意気込んだ。
クロ殿と良い雰囲気になり、何処か互いに緊張し合い、このままなし崩しに行くのかとも思ったが、一旦気持ちの整理の時間を入れようという事で身体を洗う時間を設けた。
それは逃げのための時間ではなく、後悔せずに事に及ぶための時間であった。今更逃げる事などありはしないと、私とクロ殿は覚悟を決めたのである。
――ど、どうなるのだろう。はじめては痛いと聞くし、異物感があるとも聞く。自分が自分の身体でなくなる感覚があるとか、少し経つと慣れて気持ち良くなるという話もあるが……くっ、どうなるのかさっぱり分からない……!
私は経験はない。
清く正しく美しく。公爵令嬢、第三王子の婚約者として、淫らになる事も気軽に異性と接するのも許されず、私自身も良しとしなかった。
ヴァーミリオン殿下との婚約が破棄されバレンタイン家の教育から脱しようとしている今でもその気持ちは変わらない。例えそれが政治に関わるが故に、商品価値を高めるためのような事であったとしても、それとは別に気軽にやって良い事でないこと位だと私は思っている。百聞は一見に如かずが信条のソルフェリノ兄様も流石に良しとはしていなかったほどだ。身持ちは固く、相手を見て慎重にせねば待ち受けるのは身の破滅、もしくはそれに準ずるものであろう。
……例外はカーキーくらいか。彼は多くの相手と経験を持つが、本人も相手も楽しそうだし、幸せそうなのでアレも一種の愛であろうと思えるほどだ。
――例外は置いておこう。私はこれから今までの知識を活かした経験をする……!
私は経験はないが知識はある。
バレンタイン家に居た頃に教育の一環として性教育は学んだ。
ほとんどは構造や仕組み、作法、婚約者以外の男女は密室に二人きりだと不貞になるといったようなもので、「行為の基本は男性に任せなさい。高位貴族の女性が淫らに求めるなどはしたない」と言われ、詳細な事や実際にしている所を見た訳でもないのだが……それでも最低限の知識はある。
――後は友から得た知識もあるから、大丈夫なはずだ……!
そして頼もしい多くの友からの知識は私にもある。
両方の知識を活かし、お行儀の良い杓子定規にならず、かといって乱れすぎないように、慌てすぎないように事を成す。
両方面から知識を得た私になら出来るはずだ!
――……思い返せば聞いた相手は全員私と同じで未経験なのだがな。
聞いた主な相手はアンバー、シアン、クリームヒルト、メアリーだ。彼女達の前世を含め彼女らに特定の相手は居ない。やけに自信ありげに語っていたから失念していたが、あまり当てにならないのではないだろうか。それにクリームヒルトとメアリーに関しては妙に特殊でなにか違うようなとも感じたが……
――よし、教育の方も含め記憶の片隅に追いやろう。けれど忘れずにすぐに引き出せるようにしつつ、全力でその時に応じた行動をする!
私はともかく頑張ろうと意気込んだ。
なにせクロ殿とはこれから長い付き合いになるが、クロ殿との初夜は一生に一度だ。失敗はしたくないし、大事な思い出にしたい。だから今の私の全力を以って事にあたる!
「よし、これ以上クロ殿を待たせるわけにもいかない。行くぞ……うむ、行くぞ!」
私は身体の清めも充分に出来たと判断し、お風呂からがあろうと決めた。
緊張はまだまだするが、治まるのを待っていては夜が明けてしまう。清めた時間で充分に知識も会話も復習できた。だからもう行こうとして――そう、知識の復習も出来、て――
――待て……
最後に自分の身体に変な所は無いかを確認しようと鏡を見て、ふと止まる。というよりは思い出す。
――クロ殿にはこの身体を見られる。
これからする事を考えれば当たり前の事だ。
身体に関してはここ数ヶ月は食べる量も増え前よりは健康的、かついつ見られても良いようにと体型の維持も努めていた。その努力は成果として出ており、見られるのはまだ恥ずかしくも綺麗に意地が出来ていると思っている。
だが――
「クロ殿に……“アレ”を見られるというのか……!?」
公爵家に居た頃に学んだ性教育。
子供の作り方も、身体の仕組みや男女の違いも学んだ。
その際、男性の“モノ”と女性の“アレ”も学習した。とはいえ実物や写真ではなく、イラストによるものだった。
百聞は一見に如かず。
ソルフェリノ兄様の信条は時に苛烈ではあったが、私自身も経験は大事だと思っている。実際に見て学ぶ事は想像では及ばない知識を与えてくれる。
とはいえ、いくら兄達や男性の従者がいるものの、実際に男性のモノを見るのは憚られるし、はしたないし遠慮したい。当時の婚約者であるヴァーミリオン殿下相手でも駄目だ。
だが男性は無理でも女性であればすぐに見られる。なにせ自分自身だ。
私はそう思うと、学んだその日に実際に見て確認しようと判断し、湯浴みの時間に確認をした。……確認をして、見てしまった。
「あの、内臓としか言いようが無い“アレ”を……見られるというのか……!?」
“アレ”の外は見てきた。中もチラッと見える時もあった。お風呂など身体を清める際はバレンタイン家でも自分だけで行っていたので綺麗に洗っても居た。
だが性教育を受けるほど身体が育ってきた後、意識して中身を鏡越しに見た時に私は思った。「これが私の一部なのか……!?」、と。
モンスターや魚の内臓は見たことはあった。はみ出た胃や腸も見た事はあるし、それに準じたモノが私の体内にもあるとは何処かで理解していた。
そして真正面から自分の“アレ”を見た時、抱いた感想を一言表すと“内蔵”だ。その時の私は言葉に出来ない感情――言うなればショックを受けた。
私の身体の一部にこのようなものが有る、という事実は当時の私が数日考え込む程度にはショックだったのである。
――クロ殿に今日、見られると言うのか……!?
初夜である以上“アレ”は間違いなく関わる部分だ。避けては通れまい。
ショックはとうに抜け、今まで忘れていた事とはいえ、その事実を受け入れなければなるまい。
綺麗ではない、あのようなものを、見られ……見ら、れ……!
――どうする……!
クロ殿には色んな姿を晒してきたが、それでも私にも出来る限り綺麗な姿を見られたいという思いはある。ようは“アレ”を見られたくない。愛があるのなら“アレ”も含めてありのままの全てを受け入れるべきだ、なんて怠惰な事は言いたくない。見られたくない。見られたくない――だが今更どうしろというのか。
電気を消して、出来る限り見られないようにするか。それだけでどうにかなるのか。クロ殿も初めてというしなにか問題が起きた時にじっくり見られることも有るのではないか。
あと、特殊な事を語っていたクリームヒルトやメアリーのように、クロ殿も前世があるから特殊な事をしだしたりするのではないか。その特殊な事の結果、見られるどころかマジマジと見られる事もあるのではないだろうか!!
どうする。私はどうするべきだ。
今までの過去を思い出し、未来への対策を考えろ。
なんでも良い。なんでも良いから、解決への道筋を――
「変態変質者……!」
ふと、実際はそんなはずないのに噂として流れていたクロ殿の渾名を思い出す。
何故思い出したのか。その理由は――
「クロ殿に“アレ”を気にしないような、変態変質者のように私自身がなれば良い……!」
向こうが変態変質者になり私を弄ぶのではない。私が変態変質者になり弄ぶくらいの気概で攻めれば良いのだ!
私はそう決意し、お風呂場を出る。
悩みは過去に追いやった。
全力で、事を成すとしよう!
※続きません
※なんだかんだ上手くはいきました




