シキでの一番の男親友と女親友
女神に直接祝福を受けるという贅沢な祝福を受けた後。前衛的神父代行の祝福の言葉が終わり、こちらに意志を確認し始める段階になった。
「――スノーホワイト・シアーズ。誓いますか?」
「誓います」
最初に確認し、誓いの言葉を言ったのは昨日までの家名ではなく、今日から名乗る新たな家名で呼ばれた、シキに来てからグレイの次に付き合いが長いスノーホワイト。
底抜けに善良。
善性によりすぎな性格。
敵意はあれど悪意は無し。
無邪気というよりは無垢。
これが天然か。と思わせるほど、この男は良い奴という言葉が似合う大切な親友だ。
前世では生の神父を見たことはなく、歴史の教科書とかネット知識である、免罪のお札とか少年趣味とかそういう宗教や神父の腐敗あるあるを見てきた俺はあまり神父というものに“俗世に染まらず清廉潔白”というような幻想は抱いては居なかった。あと漫画とかだと神父キャラって裏で下種だったり激辛麻婆食べたりとか、偏った知識があったのもある。
だから彼と敵対していた頃に……というか、敵対が長引いたのはその偏見があったからと思う。
俺なりに調べても“善い人”だから慕われていて、前の領主への不信感を含めても“悪い領主”とされている俺より遥かに信用も信頼もされている、という感じであった。けどシキに左遷させられた神父であるし、善意百の行動など信じられないものだった、親しき相手を失ったり第二王子の件や兄弟の事で人間不信も少し入っていた当時の俺は疑うに疑い、まぁ、今思えばしなくて良い苦労をしていたと思う。
けど向こうも向こうで俺なりに歩み寄って良い統治を目指すように努力する俺の話を、意見を始めから聞こうとしない(後から聞くと妙な噂が先行してあったというのもあるだろう。あの第二王子はやはりぶっ飛ばしたいと思う)というのもあったので、当時はどっちが一方的に悪いと言うわけではないと思う。
ともかく、互いの立場で色々あり、アプリコットの仲介を経て、話し合いの結果敵対していた頃に溜まっていたお互いの鬱憤を大いに晴らすための喧嘩をして和解が出来た。それ以降は「この男、もしや慕われていた理由は危なっかしいからか?」と俺が危機感を覚える善良であると思った。
敵と認めれば容赦はしないが、人を疑う事を知らない。気がつけば騙されて借金を背負いそうな神父。聞けばシキの領民も「善良な神父様が来て嬉しかった。正直言うと前の領主を追い出すためにその善良さを利用しようとしたが、見ているこっちがハラハラして放っておけない存在になった」と慕った理由を語っていた。気持ちはよく分かった。
それ以降は神父として領民のメンタルケアや仲介にあたってもらい、困ったら互いに相談し、辛い時は愚痴を零し合い、互いが違う領分でシキという地を治めた。彼が居なければ今のように治めるのはもっと遅かったか上手くいっていなかっただろう。
そんなかけがえのない親友は。
「妻であるシアンを生涯を通じ愛し! 多くの子供で教会の部屋を埋め尽くせるような仲の良い家族を作るとクリア神様に誓い――ぐふっぅ!!?」
自身の妻に横腹へと一撃を受けていた。彼女が攻撃するとは珍しいが、流石にされても仕様が無いと思う。
「っ、くぅ……! ……妻であるシアン・シアーズ。誓いますか?」
「ち、誓います!」
神父代理が小さく笑い、後ろからも暖かい笑みや「良いぞー!」という野次がある中、スノーの妻であるシアンは顔を僅かに赤くしつつ誓いの言葉を述べた。
明るく元気。
人の機微に聡く。
子供に慕われ皆に分け隔てなく接する性格で。
皆をあだ名で呼び、それが許される程度には仲のいい関係性を気付く事が出来て。
信心深い清廉なシスターとは彼女の事を言うのだろうと思わせた。
ただ下になにも履いていないのにあのスリットはどうかと思う。こればかりは慣れない。シュバルツさんやトウメイさんの全裸より慣れない。
半ば諦めてるが、シキの子供達が偶然来た冒険者兼シスターに「おねえちゃんは露出少ないんだね!」と、シスターに対する常識が崩れていてどうにかせねばとは思っている。なお、そのシスターはシアンに可愛さを力説され下に短パンをはきスリットを入れて元気に去っていった。
そんなシキの名物シスターとなっている彼女との初対面は、まず俺がロリコン&ショタコン扱いをされたのが出会いだ。
領主として大分軌道に乗ってきた中、まだ屋敷にアプリコットがいた頃にやってきた彼女はグレイといるのも含めてとんでもない因縁をつけられた。
当時彼女は荒れていたのも含め、どうすべきか悩んだのを覚えている。
けれどカナリアを一緒に奪還するために違法人身売買組織を潰しに行って以降は仲良くやれるようになった。なんでも、カナリアと再会できた時に流した涙を見て俺への誤解がなくなったらしい。
その後の彼女は……正直言うとちょっと面白かった。
荒れていたのを反省した彼女。その後はぎこちなくも今のように振舞うようになった。
だが荒れていた時期の対応に対して、「くっ、何故私はあの時あんな事を……!」と、好意を抱き始めた神父様にどうすれば良いか分からなくなって相談してきた時、悪いが笑いそうになってしまった。同時にスリットとか荒れていたとか、シキに来る原因が大司教を殴った事とか色々あるけど、今の彼女は仲良く出来そうだとも思ったのを覚えている。今では大事な異性の親友である。
そんなかけがえのない親友は。
「では続いて新婦シアンちゃんは新郎のように将来設計についてここで宣言を」
「マーちゃん!?」
神父代理兼友人に無茶振りを受けていた。このままだと俺のときにも受けそうだが、後ろの方も良い感じに盛り上がっているのでここは放っておこう。俺の嫁さんが困ったらとめるが。あと、後ろのほうでとある娘と息子が「うちの母がすまない。後で説教をする」という圧があるので、神父代理は覚悟をした方が良いだろう。
「え、ええい。将来の設計は!」
あ、照れても言うんだ。
「夫であるスノー君を生涯を通じて愛し! クロとイオちゃんよりも甘々イチャイチャ仲良し家族を目指してシキを甘ったるくするから覚悟していてよねシキの皆!!」
『何年かかるか分からないけどそうなるように祈ってるよシアンちゃん!』
「どういう意味だコラァ!!」
同時に受けた観客からの言葉に、シアンは照れで顔が赤いまま大声をあげるのであった。




