~式中の会話_雪白と灰と杏~
~式中の会話_雪白と灰と杏~
「お似合いですね神父様っ。普段と同じ黒を基調とした衣装なのに、普段とは違った雰囲気で素晴らしいです!」
「うむ、試着の時や控え室でも見たが、こうして聖堂や外に出ているとまた違った趣がある。着られてる感もなくお似合いだ」
「ありがとう、グレイ、アプリコット。自分でも驚くほどしっくり来るから、クロとスミレの腕が良いんだろうな」
「父上やスミレちゃんは、神父様の身体の恥ずかしい隅々な場所まで理解しているから出来る芸当、という奴ですね!」
「まさにその通りだな! 俺の誰にも見せない自分でも知らないような身体の全てを理解しているというやつで、――ん、どうしたアプリコット?」
「……いや、グレイと神父様は、妙な所で共通点があるのであるな、と思っていただけである」
「?」
「私めと神父様が共通点……つまり似ている、ですか。……ハッ、まさか神父様は――」
「似ているからと言って実は親子なのでは、というのは有り得ぬからな」
「ありえないのですか……」
「アプリコット、よく言おうとした事が分かったな」
「なんとなく想像がつく。そもそも年齢的に合わぬであろう」
「神父様の実家であるナイト家は、そういうこと? とやらは早く若くして親になる傾向にあるとパールホワイト様が仰っていましたので」
「なにを言っているんだパールさんは」
「まぁ確かに俺の義理の母は十歳くらいしか離れていないけど。……義母さんが俺くらいの時にはミルキーホワイトがグレイくらいか。確かに年齢的にはありえるのか。まぁ俺の場合は有り得ないが」
「ナイト家は色々凄いのであるな……」
「アプリコット様、神父様の場合ありえないと言うのは?」
「神父様がクリア教の教えに従い誠実であるという意味である」
「あ、もしかしてそれは神父様達が今夜クリア教の教えに従った行為を行う、とパールホワイト様が仰っていた事に関係が有りますか?」
「あー……うむ、あるぞー」
「アプリコット、てきとうに返事をしないでくれ」
「実際に教えに従うであろうに。不特定多数相手は駄目だが、神に身を捧げている暇があれば子孫を残して後に繋げ、であろう。今夜それを実行する。違うか?」
「ま、まぁそう、だけ、ど」
「分かりやすくうろたえておるな」
「ア、アプリコットこそどうした。急にそんな事を言って動揺を誘うなんて」
「いや、むしろ我はこの程度で分かりやすくも動揺している、十近く年上の男性が今夜大丈夫なのか不安に思っているのであるが……大丈夫であるか?」
「やめてくれ。いつもの高笑いするような調子ではない、本気で心配する目をやめてくれ……! だ、大丈夫だから!」
「アプリコット様、なにが大丈夫なのです?」
「神父様……いや、スノーホワイトさんが、この結婚式や衣装のレベルに相応しい、愛を今夜紡いでみせると誓っておるだけであるよ」
「なるほど! 神父様、結果を楽しみにしていますね!」
「あ、ああ。楽しみにしていろ!」
「大丈夫であるか? 話せるのか? 以前の性教育の時のように説明するのであるか?」
「……結果だけ言おう」
「そうか。無理のない範囲でな」
「? ところでアプリコット様、私め達も神父様達に倣い今夜愛の紡ぎを誓いましょうか?」
「その時が来れば、な。彼らのようなタイミングが良いだけで、今はその時ではない」
「つまり……私め達の結婚式ですか?」
「ある意味では合っている。その時はグレイも成人し、学園生活を通じて成長しているであろう。その時はこの結婚式を越す意気込みでなければならぬからな?」
「はい、頑張ります! そして神父様達だけでなく、父上達がするような事もしましょう!」
「うむ、その意気である! ――ふ、スノーホワイトさんよ、見たか。これが大人の余裕、大人な対応という奴であるぞ」
「ああ。見習いたいが、顔が赤いのも真似した方が良いか?」
「……意趣返しであるか?」
「さて、どうだろうなー?」
「くっ、これが既婚者の余裕という奴であるか……!」
「それはなにか違わないか?」
「俗に言う【守るべきモノがある男児は強し】!」
「なんか違わないか!?」
「アプリコット様、それはつまり……夜は男を野獣にする! ですね!」
「大体合っておる」
「肯定するなアプリコット!」
「否定は?」
「出来ない……けど……!」
「頑張るのであるぞスノーホワイトさん。まぁシアンさんは貴方にベタ惚れだから、多少の失敗をしても愛想は尽かす事はないから気楽に行くのだ」
「その励ましは素直に頷きたくないな!」
「励ましではなく煽りであるからな」
「余計頷きたくない! 良いのかアプリコット。そういう事を言っていると、いずれ自分に返ってくるんだぞ?」
「言わなくても恐らく時が来れば誰かが言ってきそうであるから、言っておいた方がマシではないか、と思っている所である」
「ありそうだな……今の俺みたいに、変に意識して悶々とするくらいなら、いっそ発散させて開き直らせた方が良い、って感じに」
「であろう?」




